鼻腔がん・副鼻腔がん

鼻腔がん・副鼻腔がん
【1】鼻腔がん・副鼻腔がんとは
鼻の孔は鼻腔に通じていて、そこは2つの鼻道に分かれています。呼吸時にはこれらの通路を通って空気が移動します。鼻腔は口腔の天井部分を構成する骨の上方に位置しており、その後方部は下に曲がって咽頭(喉)へとつながっています。鼻の孔から少し中に入った所は鼻前庭(びぜんてい)と呼ばれています。それぞれの鼻道の天井部分には特殊な細胞で構成される小さな領域があり、そこから脳へと信号が送られ、それがにおいの感覚として感じとられます。

副鼻腔とは、鼻の周囲に存在する空気で満たされたいくつかの小さな空洞のことです。副鼻腔の内部は粘液(呼吸による鼻の内部の乾燥を防いでいる液体)を分泌する細胞によって覆われています。
副鼻腔と鼻腔はともに、空気をろ過して暖め、さらに肺に送られる前にその空気に湿気を加えるという働きを担っています。また、副鼻腔の内部と呼吸器系の他の部分における空気の動きが人の発声に関与しています。

鼻腔に生じるがんを鼻腔がん、副鼻腔に発生するがんを副鼻腔がんとよび、がんができる空洞ごとに上顎洞がん(じょうがくどうがん)、飾骨洞がん(しこつどうがん)、前頭洞がん(ぜんとうどうがん)、蝶形骨洞がん(ちょうけいこつどうがん)といいます。 鼻腔がんのうち最も多く発生するのが上顎洞がんになります。
発生リスクを高める要因には、職場における特定の化学物質または粉塵への暴露があります。
このページでは上顎洞がんについて示します。

【2】症状
がんが上顎洞内に限局している状態では自覚症状がないことが多いのですが、副鼻腔に炎症が起きた時と同様の症状(鼻閉、膿性、血性の鼻漏など)を呈することもあります。 しかし普通はがんが増大し、上顎洞の骨壁を破壊して周囲の組織を圧迫してはじめて、その進展方向によって様々な症状をきたします。

1.がんが内側に進展した場合

鼻腔を圧迫し、鼻閉、鼻出血、悪臭のある鼻漏、頭痛、涙が出るなどの症状です。

2.がんが上方に進展した場合

眼球周囲にある骨を破壊すると、眼が突出したり、眼球が偏位し、物が二重に見えたりします。

3.がんが下方に進展した場合

歯、上あご、口腔内に浸潤し、はぐきが腫れたり、歯痛、上あごの腫れなどがみられます。

4.がんが前方に浸潤した場合

顔の皮下組織に浸潤し、顔が腫れたり痛みが出たりします。

5.がんが側方に浸潤した場合

頬の骨に浸潤し、頬が腫れたり痛みが出たりします。

6.がんが後方に浸潤した場合

副鼻腔の後方の骨に浸潤し、頭痛、眼球突出、眼の動きの障害、視力障害などがみられます。

【3】診断
上顎洞内にがんが限局している場合の診断は困難ですが、【2】の様な状態であれば診断は容易です。逆に言えば、症状を自覚して来院する時にはすでにがんが進行している場合が多いようです。

1.鼻腔、顔面、頸部の診察

長い柄のついた小さな鏡を用いて鼻の内部を観察して異常な部分がないか調べるとともに、顔面と頸部についてしこりやリンパ節の腫れがないかを調べる検査法です。

2.頭部、頸部、胸部のX線検査

X線とは放射線の一種で、これを人の体を通してフィルム上に照射すると、そのフィルムには体内領域の画像が映し出されます。

3.鼻腔鏡検査

鼻の内部を観察して、異常な部分がないかを調べる検査法です。
まず鼻腔鏡を鼻の中に挿入します。鼻腔鏡とは、観察用のライトとレンズを備えた細いチューブ状の器具のことです。組織のサンプルを採取するための器具が付いているものもあり、それで採取された組織は、顕微鏡での観察によってがんの徴候がないか調べられます。

4.生検

細胞や組織を採取する手技のことで、採取されたサンプルは病理医によって顕微鏡で観察され、がんの徴候がないか調べられます。

【4】病期(ステージ)
T1 腫瘍が上顎洞粘膜に限局し、骨吸収も骨破壊も認めない
T2 腫瘍は硬口蓋(こうこうがい)および、または中鼻道を含む下部構造の骨吸収あるいは骨破壊を伴う
T3 腫瘍はつぎのいずれかに浸潤する
・頬部の皮膚・上顎洞後壁・眼窩底または眼窩内壁・前篩骨洞
T4 腫瘍はつぎのいずれかに浸潤する
・篩板・後篩骨洞あるいは蝶形骨洞・上咽頭・軟口蓋・翼口蓋窩・側頭窩・頭蓋底
【5】治療
上顎がんの治療を考える上で重要なポイントがあります。
一般的に進行がんには広範囲の外科切除で対処しますが、腫瘍近傍には眼球等の重要臓器があり、むやみに切除を大きくするわけにはいきません。治癒率を下げずに顔面形態や視機能を損なわないような工夫が必要となるのです。そこで上顎がんの治療では手術療法、化学療法、放射線療法のよいところを組み合わせた三者併用療法が広く行なわれています。

腫瘍を含んだ上顎骨を摘出した場合は、欠損部に応じて腹部筋肉皮弁や骨を用いて、整容面を考慮し顔面形態の保存を図ります。
頸部リンパ節に転移が出現した場合は頸部郭清術(周囲組織とともに決められた範囲のリンパ節を一塊として取り除くこと)を施行します。

術後は上顎腫瘍の拡がりに応じて化学療法・放射線治療を追加することがあります。