• 2024.06.20
  • 肺がん

生存率に差が出る!ステージ4肺がんの症状と対策

肺がんは日本の死亡原因のトップに位置する病気であり、その中でもステージ4の肺がんは余命や生存率に大きな差が出ることが知られています。
このコラムでは、ステージ4肺がんの症状や治療法、患者の余命や生存率に焦点を当て、対策や予防策を詳しく説明します。
・ステージ4肺がんの進行状況
・ステージ4肺がんの症状と検査方法
・転移先の臓器と影響
・平均余命と生存率
・化学療法や免疫療法などの治療選択
これらの情報が、患者や家族、一般の方々の肺がんに対する理解を深める上で、重要な知識源となります。

1.ステージ4肺がんとは?

ステージ4肺がんは、肺がんの最も進行した段階であり、転移や隣接臓器への広がりが見られます。治療は主に症状の緩和を目的とし、根治が難しい状態です。
このステージでは、がん細胞がリンパ節を越えて他の臓器へと広がり、転移が発生しています。主な転移先は肝臓、骨、脳、副腎などで、症状は転移先の臓器や病状によって異なります。
ステージ4肺がんに対する治療方法として、化学療法、分子標的療法、免疫療法などがありますが、全体の生存率は低く、治療後の再発も多いです。
治療選択は患者の病状や体力、副作用のリスクと効果を考慮し、医師と相談して決めることが重要です。
ステージ4肺がんの患者さんや家族は、緩和ケアやサポートが必要な場合が多く、病院や地域のサポートサービスを利用することも大切です。

ステージ別の肺がんの進行状況と特徴

肺がんは進行状況によって以下のステージに分類されます。

・ステージ1:早期、がんが肺内のみに存在し、リンパ節転移がない。
・ステージ2:がんが肺内に広がっているが、リンパ節転移が限定的。
・ステージ3:がんが肺やリンパ節に広がり始め、周囲の組織への浸潤がある。
・ステージ4:最も進行した状態。他の臓器への転移がある。

早期のステージでは、手術や放射線治療、化学療法等の治療が適応され、生存率が高いですが、進行が進むにつれて治療の選択肢が限られ、生存率が低下します。
早期発見と診断が重要であり、年齢・喫煙歴等のリスクを持つ人は定期的に検査を受けることが求められます。

 

細胞の種類による肺がんの分類

肺がんは、細胞の種類によって主に2つのタイプに分類されます。

・小細胞性肺がん
肺がんの全体の20%程度を占め、進行が速く、治療の選択肢が限定的です。化学療法が主な治療方法です。
・非小細胞性肺がん
肺がんの全体の80%程度を占め、進行が遅く、治療の選択肢が広いです。手術、放射線治療、化学療法、分子標的療法、免疫療法等が適応されます。

非小細胞性肺がんはさらに、扁平上皮がん、腺がん、大細胞性がんの3つに分類され、治療法や予後が異なります。
細胞の種類による違いを理解し、適切な治療方法を選択することが重要です。

 

ステージ4肺がんの症状と検査方法

ステージ4肺がんは、がんが肺から遠くのリンパ節や他の臓器にまで転移している状態であり、症状も様々です。主な症状には、慢性的な咳、喀痰の変化、息切れ、胸痛、体重減少、声のかすれなどが挙げられます。
また、転移した臓器によって追加の症状が出ることもあります。例えば、脳への転移では、頭痛やめまい、視力低下、バランス障害などが生じることがあります。
ステージ4肺がんの診断には、まず画像検査が行われます。X線、CTスキャン、MRI、PETスキャンなどが使われます。これらの検査で腫瘍の位置、大きさ、転移の有無が確認されます。
次に、細胞診や組織検査が行われます。主に気管支鏡検査や細針吸引法で検体を採取し、病理検査でがん細胞の存在や種類が確認されます。
ステージ4肺がんの治療は、患者の状態によって異なりますが、一般的には化学療法、免疫療法、標的分子療法などが用いられます。進行が早く、手術が困難な場合は放射線療法や緩和ケアも選択肢の一つになります。

 

転移先の臓器とその影響

肺がんは、進行すると他の臓器に転移してさらなる症状や合併症を引き起こします。よく見られる転移先とその影響を以下に示します。

・脳:脳転移により頭痛やめまい、視力低下、バランス障害、意識障害が現れる場合があります。
・骨:骨転移は骨痛や骨折の原因となり、患者の生活に大きな影響を与えます。
・肝臓:肝臓転移の場合、肝機能が低下し、黄疸やアルブミン値の低下、コリンエステラーゼ値の低下などの症状が現れることがあります。
・副腎:副腎への転移は無症状で進行することが多く、特に重要な症状は現れませんが、機能不全を引き起こすことがあります。

転移先の臓器によって治療法や予後が変わりますので、医師との密接な相談が必要です。

2.ステージ4肺がん患者の余命と生存率

ステージ4肺がん患者の余命や生存率は、個人差が大きく、がんの種類や治療法によっても変わります。統計的には、ステージ4肺がん患者の5年生存率は、約10%以下とされています。
ただし、近年の医療技術の進歩や免疫療法、標的分子療法の開発により、一部患者の生存期間が延びることもあります。また、緩和ケアを含む総合的な治療によって、患者のQOL(生活の質)の向上や合併症の軽減が図られます。
ステージ4肺がん患者の予後を左右する要素には、がんの種類や分類、治療応答性、患者の年齢や一般的な健康状態、合併症の有無などがあります。適切な治療法の選択や医療チームとの連携が重要であり、患者や家族にとっての支援体制も大切です。

平均余命と生存率の現状

肺がんは、男性・女性問わず全てのがんの中で最も死亡率が高い病気であり、その治療の成功が患者の生存率に大きく影響します。生存率は、肺がんのステージや病状、治療法によって異なります。早期の段階であるステージ1や2の場合、手術や放射線治療によって治癒が可能であり、平均余命は10年以上となることが一般的です。しかし、進行が早く転移してしまったステージ3や4では、状況が一変し治療の効果が限定的となります。
放射線治療や化学療法を併用することで、一部の患者において生存率の向上が期待できますが、平均余命は2年程度と言われています。このため、早期発見が極めて重要であり、定期的な検査や症状に対する注意が求められます。最近では、免疫療法や標的治療が開発され、一部の患者に対して生存期間の延長が期待できる状況にあります。また、肺がんの原因となる遺伝子や分子標的の研究が進んでおり、将来的には個別化された治療が展開される可能性があります。

 

年代別の余命と生存率の違い

年代別の余命や生存率は、がんのステージや治療法だけでなく、患者の年齢や一般的な健康状態、免疫力にも関係しています。若い患者の場合、体力があり治療に耐えられる可能性が高いため、生存率が向上し、平均余命もより長くなります。一方、高齢者においては、免疫力や体力が低下していることから、治療の効果が限定的になりがちです。
また、高齢者の場合、他の疾患や持病が影響して生存率や平均余命が短くなることもあります。緩和ケアを含む治療方法の選択肢が限定されることが多く、病院や専門家と相談しながら適切な治療法を選択することが重要です。年代別のデータを見ると、早期発見と治療によって生存率が向上する傾向が明確にあり、症状や検査結果に応じて適切な治療法が選択されることが求められます。

 

免疫療法や標的治療で変わる生存率

近年の医療技術の進歩により、免疫療法や標的治療が肺がん治療の選択肢に加わり、それによって生存率が向上することが確認されています。免疫療法は、がん細胞を攻撃する免疫力を高めることで、がんの進行を抑制する効果が期待されます。標的治療は、がん細胞の成長や転移を促す遺伝子や分子に対して効果を発揮し、正常な細胞に対する副作用が少ないことが特徴です。
免疫療法や標的治療は、特定の遺伝子変異を持つ患者に対して効果を発揮することが多く、進行がんや転移がんの患者に対して生存率の改善が見込まれます。ただし、免疫療法や標的治療が必ずしも全ての患者に効果があるわけではなく、患者ごとの遺伝子や腫瘍の状態に応じて適切な治療法を選択する必要があります。免疫療法や標的治療が普及することで、今後さらに多くの患者がこの新たな治療法の恩恵を受け、生存率が向上することが期待されます。

3.ステージ4肺がんの治療法と選択のポイント

ステージ4肺がんは、がん細胞が肺以外の臓器にも広がっており、治療が困難な状態です。しかし、現代医療の進歩により、いくつかの治療法があります。
まず、化学療法ですが、薬物によりがん細胞の増殖を抑制します。特に標的治療薬は、がんの遺伝子に作用して効果が期待されます。
次に、放射線療法です。これは、高エネルギーの放射線をがんに照射して細胞を破壊し、腫瘍の縮小を目指します。
また、免疫療法も注目されています。自分の免疫力を利用してがん細胞を攻撃し、転移や再発を防ぐ効果があるとされています。
治療法を選択する際のポイントは、患者の年齢、体力、症状、がんの種類や進行具合によって異なります。また、治療法による副作用や負担も考慮する必要があります。具体的な治療法の選択は、専門の医師と相談して決めることが重要です。
ステージ4肺がんは治癒が難しいため、緩和ケアも大切です。痛みや呼吸困難などの症状緩和を目指し、患者と家族のQOL(生活の質)向上が目的となります。

化学療法や放射線療法の効果と副作用

化学療法は、がん細胞の成長を抑える効果がありますが、副作用もあります。主な副作用には、消化器症状(吐き気、嘔吐)、骨髄抑制(貧血、感染症)、脱毛、神経障害などがあります。これらの副作用は、治療が終われば徐々に改善されることが多いです。
放射線療法の効果は、がん細胞を破壊し、腫瘍の大きさを小さくすることです。副作用には、放射線皮膚炎(赤み、かゆみ)、食道炎(飲み込む際の痛み)、肺炎などがあります。放射線療法は患者によって副作用の程度が異なり、放射線量や照射部位によっても変わります。
副作用の軽減や対処法については医師と相談し、適切なケアを受けることが重要です。また、治療効果や副作用のリスクと、患者の状態や家族の意向を考慮し、緩和ケアや他の治療法と組み合わせることも検討されます。
ステージ4肺がんの治療は、多くの困難を伴いますが、効果的な治療法と副作用への対処法を綿密に検討し、医師と共に適切な治療選択を行うことが求められます。

 

免疫療法や標的治療の効果と適応条件

免疫療法とは、がん細胞を攻撃する免疫システムを活性化させて、がんを治療する方法です。標的治療は、がん細胞の特定の分子や遺伝子に働きかけ、正常な細胞に影響を与えずにがん細胞を抑制する治療法です。
免疫療法の効果は、患者さんの免疫力やがんの種類によって異なりますが、一部の進行がんや転移がんに対して、生存期間の延長や症状の緩和が期待できます。また、標的治療は効果が早期に現れることが多く、副作用も比較的少ないとされています。
しかし、免疫療法や標的治療はすべての患者さんに適応するわけではありません。免疫療法の適応条件としては、がんの種類や状態、患者さんの免疫力、そして治療歴が考慮されます。標的治療は、がん細胞に特定の遺伝子変異がある場合に適用されることが多いです。
具体的な適応条件と効果は、医師と相談の上で決定されるため、患者さんや家族は治療の選択肢を理解し、医療チームと連携して治療を進めていくことが大切です。

 

緩和ケアと家族や医療スタッフのサポート

緩和ケアとは、がんの進行や重症化に伴う症状や痛みを緩和し、患者さんのQOL(生活の質)を向上させるためのものです。緩和ケアは、治療と同時並行で行われることが多く、患者さんの心身の負担を軽減します。
緩和ケアに取り組む医療スタッフは、専門の知識や技術を持って患者さんの症状に対応し、痛みや不安を軽減するお手伝いをします。また、家族も緩和ケアに積極的に関与し、患者さんの心身のサポートに努めることが重要です。
家族や医療スタッフのサポートは、患者さんが安心して治療に取り組める環境を整えることにもつながります。適切な緩和ケアとサポートが行われることで、患者さんはより良い生活を送ることが可能となります。

4.予防策と早期発見の重要性

がんの予防策としては、健康的な生活習慣の維持や定期的な検診が推奨されます。喫煙や過度のアルコール摂取の制限、適度な運動や野菜を中心としたバランスの良い食生活が有効です。
早期発見が重要である理由は、がんが早期の段階であれば治療の選択肢が多く、治療効果も高まるからです。早期発見のためには、自分自身の身体に注意を払い、何らかの異常を感じた場合はすぐに医療機関で検査を受けることが大切です。
また、定期的な検診や健康診断でがんのリスクを評価し、必要に応じて専門医の診療を受けることが早期発見につながります。予防策と早期発見に取り組むことで、がんによる健康被害を最小限に抑えることが可能です。

原因やリスク要因の理解と対策

肺がんの原因には様々なものがありますが、最も重要な要因は喫煙です。他にも、大気汚染や劣化した環境、遺伝子異常、年齢、性別なども影響があります。理解した上で対策を考慮しましょう。
まず、喫煙を止めることが最も効果的な対策です。禁煙により肺がんリスクが著しく減少します。また、受動喫煙も肺がんのリスク要因ですので、周りの人にも配慮してください。
次に、健康的な生活習慣を実践しましょう。適度な運動やバランスの良い食事、十分な睡眠が重要です。また、ストレスを適切に発散する方法を見つけることも大切です。
さらに、遺伝子検査を受けることで、遺伝的なリスクを把握することができます。遺伝子検査の結果によっては、より早期に予防策を講じることが可能です。
最後に、定期検診を受けて早期発見を目指しましょう。肺がんは早期であれば治療効果が高まり、生存率が向上します。

 

定期検診や症状の早期発見のポイント

肺がんの定期検診や早期発見のポイントについて解説します。定期検診は、肺がんの早期発見に大いに役立ちます。定期検診では、胸部レントゲンやCTスキャンが行われ、異常が見つかればさらに詳しい検査が実施されます。
また、症状に注意を払いましょう。肺がんの初期症状は、せき、痰の出方の変化、息切れ、胸部の痛み等です。これらの症状が続く場合は、医師に相談することが重要です。
さらに、肺がん患者の家族には遺伝性要因が関与することが分かっています。そのため、家族に肺がん患者がいる場合は、早期に定期検診を受けることを検討しましょう。
最後に、労働環境にも注意が必要です。アスベストや放射線などの職場での曝露は肺がんリスクを高めます。保護具を着用し、定期検診を受けましょう。

5.ステージ4肺がんのまとめと今後の展望

ステージ4肺がんは進行が早く、予後が悪いとされますが、近年の医療技術の進歩により、標的治療薬や免疫療法などの新しい治療法が開発されています。患者の症状や腫瘍の状態に合わせた最適な治療選択が可能となり、生存期間の延長やQOL向上が期待できます。
今後の展望としては、より早期の診断技術の開発や、より効果的で副作用の少ない治療法の研究が進められています。また、遺伝子情報を用いた個別化医療も注目されており、将来的にはより効果的な治療が期待されます。
最後に、ステージ4肺がんの患者さんやその家族の方々には、緩和ケアやサポートが提供されることが重要です。医療チームと連携して、患者さんが安心して治療に取り組める環境作りを目指しましょう。
本コラムをぜひ参考に、次のアクションに取り組んでください。

快適医療ネットワーク理事長

監修 
医学博士 上羽 毅

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。