• 2024.04.22
  • 肺がん

肺がんと向き合うための治療選択と未来の展望

肺がんについての理解を深めることは、適切な治療選択や生活習慣の改善に繋がります。
この記事では、肺がんの基本知識から、診断や検査、さまざまな治療法について詳しく解説します。
また、抗がん剤治療の副作用や対策、医療相談についても触れます。
今後の肺がんにおける治療法の展望を確認し、最新の医療研究や新薬開発の動向を知り、将来の治療法選択に役立ててください。

1.肺がんの原因・症状・リスク

肺がんは全身癌の中で罹患数が上位の病気で、日本では年間約12万人が新たに罹患し、約5万人が死亡しています。
肺がんの原因はタバコ、空気汚染、遺伝変異などが挙げられ、これに伴い様々な症状が現れます。
早期発見が治療の成功に大きく影響するため、症状に留意し、定期検査を受けることが重要です。

 

肺がんの主な原因

肺がんの成因として最も有名なのはタバコで、喫煙者は非喫煙者と比較して肺がんの罹患リスクが男性4.4倍、女性2.8倍と高くなります。さらに、受動喫煙も肺がんリスクを上げる要因となっています。
また、大気汚染や労働環境の悪さも肺がんの原因になることがあります。遺伝子変異によっても肺がんが発症することが分かっており、特にEGFRやALKといった遺伝子変異が関与することが明らかになっています。

 

症状と早期発見の重要性

肺がんの症状には、咳、喀血、息切れ、胸痛、体重減少、疲労感などがあります。
しかしながら、早期の肺がんでは症状がほとんど現れないことも多く、自覚症状が無いまま進行することがあります。このため、早期発見が非常に重要となります。
日本では、50歳以上の喫煙歴のある人に対して肺がん検診が勧められており、レントゲンやCT検査を受けることで早期発見につながります。
早期発見によって適切な治療が行われることで、肺がんの予後が大幅に改善されることが期待されます。

 

生活習慣の改善と予防策

がんを予防するためには、生活習慣の改善が重要です。肺がんのリスクを軽減する方法は以下の通りです。

・喫煙の禁煙
 喫煙は肺がんの主要な原因であり、禁煙を行うことで肺がんのリスクを大幅に減らすことができます。
・健康的な食生活
 抗酸化物質や食物繊維が豊富な野菜や果物を多く摂取することで、がんの予防につながります。
・適度な運動
 定期的な運動は免疫機能の向上や肥満の防止に役立ち、がんのリスクを下げます。

また、定期的な健康診断を受け、早期発見に努めることも重要です。これらの予防策を実践することで、肺がんのリスクを軽減することができます。

2.肺がんの診断、検査、ステージ

病期の判定は、肺がんの進行度を評価する重要な指標です。ステージは、主に腫瘍の大きさ、リンパ節への転移、遠隔転移の有無に基づいて分類されます。
遺伝子変異も肺がん治療の選択に影響を与える要素の一つです。例えば、EGFRやALK遺伝子変異が発見されると、標的治療薬が選択肢として考慮されることが多いです。
ステージと遺伝子変異の関連性を理解することは、個々の患者に適切な治療法を選択する上で重要です。一部の遺伝子変異は、特定のステージでより一般的にみられることがありますが、それぞれの患者で異なるため、適切な診断と検査が不可欠です。
日本では、検査方法や医療機関も多種多様で、遺伝子変異とステージの関連性についての研究も続けられています。

 

肺がんにおける治療法

肺がんの治療法は、患者の状態や病期に応じて選択されます。
主な治療法には、外科手術、放射線治療、化学療法があります。

・外科手術
 腫瘍の切除を行います。
 早期肺がんの場合、手術により完全に治癒することが期待されます。
・放射線治療
 高エネルギーの放射線をがん細胞に照射し、細胞の増殖を阻止します。
 手術が困難な場合や、手術後の再発予防として用いられます。
・化学療法
 抗がん剤を用いてがん細胞を攻撃し、増殖を阻止します。
 全身に作用するため、遠隔転移がある場合や、手術が困難な場合に効果的です。

これらの治療法は、単独で用いられることもありますが、併用されることも多く、患者と医師の相談の上で選択されます。また、進行がんや再発がんの場合は、緩和治療が必要となることもあります。

 

手術の適用条件と詳細

外科手術による肺がん治療は、早期の肺がん患者に対して適用されることが多いです。ただし、患者の全身状態や肺機能、合併症の有無などを考慮した上で、手術が適切かどうかが判断されます。
肺がんの手術には、肺切除(全摘出)や肺葉切除(一部摘出)、肺区域切除(さらに限定的な摘出)などがあります。手術方法は、腫瘍の大きさや位置、患者の肺機能や一般状態によって決定されます。
手術後の合併症や副作用には、呼吸機能の低下や感染、出血、血栓などがあります。適切な手術方法と術後管理が求められます。
また、手術後の再発リスクを考慮し、放射線治療や化学療法が併用されることもあります。

 

放射線治療の効果と副作用

放射線治療はがん細胞を破壊し、腫瘍の縮小や増殖の抑制を目指す治療法であり、肺がん患者に対しても広く用いられます。特に手術が困難な場合や再発のリスクを低減するために選択されることが多いです。
放射線治療の効果は個人差がありますが、病状の進行を遅らせたり、症状の緩和が期待できます。しかし、正常な細胞も影響を受けるため、副作用が生じることがあります。
副作用の一例として、
・皮膚の赤みやかゆみ
・呼吸困難や咳
・吐き気や食欲不振
・疲労感や体力の低下
などが挙げられます。
これらの副作用は治療終了後に徐々に軽減されることが多いですが、放射線治療専門の医師や看護師に相談し、適切な対策やアフターケアを受けることが重要です。

 

化学療法の種類と効果

化学療法には、主に抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬の3つの種類があります。それぞれの薬物は、がん細胞の増殖を抑制し、腫瘍の縮小や消滅を目指すものですが、作用機序や対象となる細胞が異なります。
抗がん剤は、がん細胞の増殖を阻害する効果がありますが、正常な細胞も影響を受けるため、副作用が多くみられます。
分子標的薬は、がん細胞の特定の分子や遺伝子に作用し、その増殖を抑制する効果があります。このため、患者の遺伝子検査の結果に基づいて選択されることが多く、副作用が比較的少ないとされています。
免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫システムを回避するのを阻止し、自然免疫によるがん細胞の攻撃を促進する効果があります。この薬物は、免疫システムを活性化させることで、全身のがん細胞に対して効果を発揮することが期待されています。

3.抗がん剤治療の副作用・対策・相談方法

抗がん剤治療は、がん細胞の増殖を阻止する効果がありますが、その反面、様々な副作用が生じることが一般的です。例えば、
・吐き気や嘔吐
・髪の脱落
・白血球数の減少
・口内炎
・食欲不振
などが挙げられます。これらの副作用に対処するためには、適切な栄養摂取や休息、適度な運動、副作用緩和薬の使用など、様々な対策が必要です。また、副作用が重篤化した場合や新たな症状が現れた場合は、主治医や看護師に相談しましょう。
また、治療方針や副作用に関する相談が必要な場合は、がん専門病院やがん診療連携拠点病院、または地域のがん相談支援センターなどで専門家の意見を求めることができます。これらの施設は、がん患者のための情報提供や相談窓口として設けられており、適切な治療方法やサポートが受けられます。

 

一般的な副作用:吐き気、脱毛、血液障害

がん治療において、一般的な副作用として吐き気、脱毛、血液障害が挙げられます。これらの副作用は、患者の生活の質に大きな影響を与えることがあります。特に、化学療法による薬剤投与や放射線治療が原因で多くの患者が経験します。
吐き気は、薬物による胃腸の刺激や中枢神経への作用によって引き起こされます。脱毛は、薬剤や放射線が細胞の増殖を阻止することで、髪の毛の成長が停止し、抜け落ちる現象です。血液障害は、赤血球や白血球の減少により、貧血や感染症のリスクが高まる状態を指します。
これらの副作用は、治療の種類や状況によっては避けられないこともありますが、適切な対処法やサポート薬を使うことで軽減されることもあります。

 

副作用の対処法

副作用の軽減方法には、対処法やサポート薬、併用療法があります。吐き気の場合、制吐薬を使用して症状を軽減できることが多いです。また、食事内容やタイミングの見直しも効果的です。
脱毛に関しては、冷却キャップを用いて頭皮の血流を抑えることで、脱毛の進行を抑える方法があります。もし脱毛が進行しても、ウィッグやヘアメイクで生活の質を向上させる対策が取れます。
血液障害の場合、貧血を改善するための鉄剤やビタミン剤の投与、白血球を増やすための免疫賦活剤が対策として考えられます。また、併用療法として、放射線治療や薬物療法と並行して行われる免疫療法は副作用が比較的少ないとされており、副作用の軽減に繋がることが期待されます。
いずれの対処法も、個々の患者の状態や治療法に適した方法を選択することが重要です。

 

医師とのコミュニケーション

がん治療における医療相談は、適切な治療法の選択や副作用の対処に重要です。病院や医師との良好なコミュニケーションが、治療成績や生活の質の向上に繋がります。
まず、自分の病状や治療法について理解することが大切です。適切な質問を行い、医師からの説明を十分に理解しましょう。また、副作用の悩みや不安を医師に相談することで、適切な対処法やサポートが受けられることがあります。
こうしたコミュニケーションによって、患者と医療従事者が信頼関係を築くことができます。信頼関係の中で治療が進められることは、患者の心身の状態を安定させ、治療成績にも良い影響を与えると考えられます。家族や友人と一緒に病院を訪れることも、情報共有やサポートの観点から有益です。

4.肺がん治療法の選択と今後の展望

肺がんは急速に進行し、治療が難しい癌の一つとされています。治療法は病気の進行度や個々の患者の状態によって異なりますが、手術や放射線治療、化学療法などが一般的です。
しかし、最近の研究では、分子標的治療や免疫チェックポイント阻害療法といった新しい治療法が開発され、肺がん患者の治療選択肢が広がっています。今後はこれらの新しい療法の普及や、さらに効果的な治療法の開発が求められるでしょう。

 

治療法選択の考慮点

肺がん治療法の選択は、主に病期、患者の状態、副作用の3つの要素に基づいて行われます。病期が進んでいる場合は手術の適応がなくなることがあり、化学療法や放射線治療が選ばれます。また、患者の年齢や基礎疾患、肺機能などの状態によっても治療法が変わることがあります。
副作用は、治療法の選択において重要な要素です。手術や放射線治療、化学療法などには副作用が伴いますが、これらの治療法ごとに副作用の程度や種類が異なります。患者や医療チームは副作用のリスクと治療効果を天秤にかけて、最適な治療法を選択する必要があります。

 

新薬や次世代療法の研究状況

現在、肺がん治療の分野では、新しい薬物や次世代の治療法の研究が盛んに行われています。分子標的治療や免疫チェックポイント阻害療法は、従来の治療法よりも効果的で副作用が少ないとされ、近年急速に普及しています。また、個々の患者の遺伝子情報に基づいた個別化医療も注目を集めており、今後の治療法開発の方向性となるでしょう。
このような新しい治療法の研究が進めば、肺がん患者の治療選択肢がさらに広がり、生存率の向上が期待できます。是非、最新の研究動向に注目して、適切な治療法を選択し、治療を受けることを検討してみてください。

快適医療ネットワーク理事長

監修 上羽医院院長
上羽 毅(医学博士)

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に 上羽医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。 京都府京都市 上羽医院 http://www.uehaiin.com/