- 2024.09.10 2026.10.07
- 膵臓がん
膵臓がんの血液検査の数値はどう見る?腫瘍マーカーの基準値と考え方
健康診断で「CA19-9が少し高めです」と言われた方もいれば、膵臓がんの治療中で、採血のたびに数値の上下が気になる方もいるでしょう。どちらの立場でも、検査結果の数字をどう受け止めればよいかは迷うところです。
膵臓はおなかの奥にある臓器で、外から様子をつかみにくい場所にあります。そのため血液検査の数値は、膵臓の状態を知るための大切な手がかりの一つとして使われています。
一方で、数値が高いからといって、すぐに膵臓がんと決まるわけではありません。膵臓がん以外の理由で上がることも多く、画像検査を組み合わせれば、膵臓そのものを詳しく確かめることができます。
この記事では、腫瘍マーカーと膵酵素の基準値、数値が高いときと正常なときの考え方をまとめました。結果を受け取ったあとの検査の流れや、治療中の数値の見方、よくある質問も載せています。
手元の検査結果と見比べながら読み進めていただければ、次に何を医師に確認すればよいかが見えてきます。まずは、その数値が何を示しているのかから確認していきましょう。
目次
1.膵臓がんの血液検査でわかる数値と基準値
膵臓がんに関係する血液検査は、大きく「腫瘍マーカー」と「膵酵素」の2つに分かれます。それぞれ、何を見ている数値なのかを先に整理しておきましょう。
腫瘍マーカー(CA19-9・CEA・DUPAN-2・Span-1)の基準値
膵臓がん(膵がん)で主に測られる腫瘍マーカーは、CA19-9・CEA・DUPAN-2・Span-1の4種類です。
腫瘍マーカーとは、がん細胞が作り出す物質が血液中にどれくらいあるかを調べる検査を指します。がんが大きくなると増える傾向があり、膵臓の異常を疑う手がかりとして使われます。
それぞれの基準値の目安は、次のとおりです。
| 腫瘍マーカー | 基準値の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| CA19-9 | 37 U/mL以下 | もっともよく使われる指標 |
| CEA | 5.0 ng/mL以下 | 大腸がんなど消化器のがんでも測られる |
| DUPAN-2 | 150 U/mL以下 | CA19-9が作られない体質の人で役立つ |
| Span-1 | 30 U/mL以下 | DUPAN-2と同じく補助的に使われる |
なかでもCA19-9は、膵臓がんの診断や治療の経過を確認する場面で中心になる数値です。ただし、上の基準値はあくまで一般的な目安にすぎません。
基準値は医療機関や測定方法によって少しずつ異なります。ご自身の検査結果に書かれている基準範囲と、医師の説明をあわせて確認することが大切です。
最近では、APOA2アイソフォームという新しい腫瘍マーカーを測る医療機関もあります。複数の項目をどう組み合わせるかは、目的や状態に応じて医師が判断します。
数値の「意味」と「目安」を分けて理解しておくと、検査結果を見たときに何を質問すればよいかがはっきりしてきます。
膵酵素(アミラーゼ・リパーゼ・エラスターゼ1)でわかること
膵酵素の数値は、膵臓に炎症や膵管のつまりが起きていないかを知る手がかりです。がんだけに反応する検査ではない点を押さえておきましょう。
膵臓は、食べ物の消化を助ける膵液を作る臓器です。膵液にはアミラーゼやリパーゼ、エラスターゼ1といった消化酵素が含まれ、膵管という細い管を通って十二指腸へ流れ出ます。
膵臓がんで膵管がふさがると、行き場を失った酵素が血液中に漏れ出し、数値が高くなることがあります。急性膵炎や慢性膵炎でも同じように上昇するため、この数値だけで病気を見分けるのは難しいと言えます。
また、膵臓のすぐ近くには胆汁の通り道である胆管が通っています。膵臓の頭の部分にがんができると胆管が圧迫され、ALPやγ-GTP、ビリルビンといった肝臓・胆道系の数値が上がることもあります。
皮膚や白目が黄色くなる黄疸は、こうした胆管のつまりで起こる代表的な症状です。血液検査の結果とあわせて、体の変化も医師に伝えるようにしましょう。
膵酵素と腫瘍マーカーは、見ているものが違う検査です。両方の結果を並べて読むことで、膵臓のどこで何が起きているかを推し量りやすくなります。
ここまで、腫瘍マーカーや膵酵素の数値からわかることを見てきました。では、実際に膵臓がんと診断された方のCA19-9は、どのくらいの数値だったのでしょうか。ある方の検査値の記録を、ここでご紹介しています。
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2.数値が高い・正常のとき、どう考えればいい?
検査結果の数値を見ると、高ければ不安になり、正常なら安心したくなるものです。ここでは、数値だけで判断できない理由を、高い場合と正常な場合に分けてお伝えします。
基準値を超えても膵臓がんとは限らない理由
CA19-9などの腫瘍マーカーは、膵臓がん以外の病気でも高くなります。基準値を超えたこと自体は「詳しく調べたほうがよいサイン」と受け止めるのが適切です。
数値が上がりやすい主な原因には、次のようなものがあります。
- 胆石や胆管炎で、胆汁の流れが滞っている
- 急性膵炎や慢性膵炎など、膵臓に炎症がある
- 糖尿病で、血糖のコントロールが乱れている
- 肝臓の病気がある
- 胆道の疾患や、胃がん・大腸がん・肺がんなど他のがんがある
特に胆管がつまっていると、CA19-9が大きく上がることがあります。この場合、つまりが解消されると数値が下がっていくケースも少なくありません。
膵酵素のアミラーゼは、膵臓だけでなく唾液腺でも作られる酵素です。腎臓の働きが落ちていると、体の外へ出にくくなって高めに出る傾向があります。
数値の上昇にはさまざまな背景があります。一度の結果だけで結論を出さず、画像検査で原因を確かめることが重要です。
数値が正常でも安心できない理由
腫瘍マーカーが基準値内でも、膵臓がんがないとは言い切れません。早期の膵臓がんでは数値が上がらないことも多いためです。
早い段階の膵臓がんをCA19-9で検出できる割合は、半分程度にとどまるとされています。がんが小さいうちは、血液中に出てくる物質の量もわずかだからです。
さらに、日本人の約1割は、体質的にCA19-9をほとんど作らないことが知られています。この体質の方は、膵臓がんがあってもCA19-9が上がりません。
そうした場合に役立つのが、DUPAN-2やSpan-1といった別の腫瘍マーカーです。CA19-9がいつも極端に低い方は、ほかの項目も測っているか医師に確認してみましょう。
数値が正常でも、みぞおちや背中の痛み、黄疸、急な体重減少といった症状が続くときは、受診を先延ばしにしないことが大切です。糖尿病が急に悪化した場合も、膵臓を調べるきっかけになります。
ここに血液検査の限界があります。小さな変化を見逃さないためにも、症状や画像検査とあわせて総合的に判断されることを覚えておいてください。
3.検査結果を受け取ったあとの流れ
数値に気になる点があったとき、次に何が行われるのかを知っておくと、受診の準備を進めやすくなります。ここでは、精密検査の流れと採血前の準備を見ていきましょう。
数値が基準値を超えたときに受ける画像検査
血液検査で異常が見つかった場合は、画像検査で膵臓そのものの状態を確認します。数値ではわからない「どこに・どれくらいの大きさの病変があるか」を調べるためです。
主な検査と、それぞれでわかることは次のとおりです。
| 検査 | 内容 | わかること |
|---|---|---|
| 腹部超音波検査(エコー) | おなかに機器を当てて観察する。体への負担が少ない | 膵管の広がりやしこりの有無 |
| 造影CT検査 | 造影剤を使って体の断面を撮影する | がんの位置・大きさ、周囲の血管や臓器への広がり、転移、ステージ |
| MRI・MRCP | 磁気を使って撮影する | 膵管や胆管の形、IPMNなど小さな病変 |
| 超音波内視鏡検査(EUS) | 胃カメラのような内視鏡を口から入れ、胃や十二指腸の内側から観察する | 数ミリの小さな病変、組織の採取 |
| ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影) | 十二指腸乳頭から造影剤を入れ、膵管を撮影する | 膵管の細かな変化、膵液の細胞の採取 |
一般的には、腹部超音波検査や造影CT、MRIで膵臓全体を確認したあと、必要に応じてEUSへと進みます。EUSは胃のすぐ裏側から詳細な画像が得られるため、小さな病変を見つけるのに有用な検査です。外来で受けられることも多く、時間は30分前後が目安です。
がんかどうかを確定するには、細胞や組織を採取して顕微鏡で調べる病理検査を行う必要があります。EUSを使って針で組織を採る方法(EUS-FNA)や、ERCPで膵液を採る方法がよく用いられます。
なお、IPMNは膵管の中に粘液をためる袋状の病変で、膵臓がんとの関連から経過を見ていくことがある病気です。画像検査で見つかった場合は、定期的に変化を確認していく流れになります。
これらの検査方法のうちどれを受けるかは、数値の高さや症状によって変わります。検査の目的を一つずつ聞いておくと、次の予定が立てやすくなります。
採血前の準備と数値に影響しやすい要因
血液検査の数値は、体調や体の状態によって変わることがあります。正確な結果につなげるため、採血の前後に意識しておきたい点をまとめました。
【採血の前後で押さえておきたいこと】
- 食事は医療機関の指示どおりにする
血糖など一緒に測る項目によっては、朝食を抜くよう指示されることがあります。 - 飲んでいる薬は自己判断でやめない
服薬の内容は医師に伝え、検査前に休むかどうかの判断を任せましょう。 - 腹痛や発熱、黄疸があれば必ず伝える
胆管炎や膵炎が起きていると、CA19-9や膵酵素が一時的に高く出ることがあります。 - 過去の検査結果を持参する
前回との差がわかると、一時的な変化かどうかを判断しやすくなります。
ほかにも、腎臓の働きや糖尿病の状態、測定方法の違いが数値に影響することがあります。別の病院で測った数値をそのまま比べないよう注意しましょう。
準備を整えて検査に臨むことで、数値の変化を正しく読み取る土台ができます。
4.診断後・治療中の数値の見方
膵臓がんと診断されたあとも、血液検査は治療の経過を追うために続けて行われます。ここからは、治療中の数値との付き合い方を見ていきましょう。
治療効果の確認や経過観察での役割
診断後の腫瘍マーカーは、がんがあるかどうかではなく「数値がどう動いているか」を見るために使われます。治療の効果や再発の兆しを確かめる目安の一つです。
手術のあとや抗がん剤治療の期間中は、定期的にCA19-9などを測る患者さんが多くいます。治療がうまく進んでいると数値が下がり、がんが進行すると上がっていく傾向があります。
ただし、数値の変化だけで治療の効果や進行を判断することはできません。胆管に入れたステントのつまりや炎症で、一時的に数値が上がることもあるためです。
そのため、腫瘍マーカーの推移はCTなどの画像検査と組み合わせて評価されます。数値が上がったときに画像検査が追加されるのは、原因を確かめるための大切な流れです。
一回ごとの上下に気を取られすぎず、数か月単位の推移として捉えることが、治療中の数値の読み方の基本になります。
数値の変化を医師と確認するときのポイント
治療中の数値は、医師と一緒に読み解くことで意味がはっきりします。診察の限られた時間を有効に使うための工夫を紹介します。
【診察で数値を確認するときの工夫】
- 数値を日付と一緒に記録しておく
手帳やスマートフォンに書き留めておくと、推移を自分でも把握できます。 - 「前回と比べてどうか」を聞く
一回の数値より、増減の流れについて医師の見立てを尋ねてみましょう。 - 画像検査の予定とあわせて確認する
次のCTがいつか、数値の結果で予定が変わるかを聞いておくと見通しが立ちます。 - 気になる症状もメモして伝える
痛みや食欲不振、体重の変化は、数値を読み解く大切な材料になります。
数値の変化が心配なときは、主治医や看護師、がん相談支援センターに相談することもできます。ご家族と一緒に説明を聞くのも一つの方法です。
記録と質問の準備をしておくことで、数値をもとにした治療方針の話し合いに参加しやすくなります。
5.膵臓がんの血液検査 よくある質問
膵臓がんの血液検査について、よく寄せられる疑問をまとめました。気になる項目から確認してみてください。
Q1. CA19-9が基準値を少し超えただけでも、精密検査は必要ですか?
A. わずかな上昇は、膵臓がん以外の理由で起こることも多くあります。再検査や腹部超音波検査で様子を見る場合もあれば、CTやMRIを勧められる場合もあります。症状の有無やほかの数値もふまえて、医師と相談して決めましょう。
Q2. アミラーゼが高いと言われました。膵臓がんでしょうか?
A. アミラーゼは膵炎や唾液腺の病気、腎臓の働きの低下などでも高くなります。リパーゼやエラスターゼ1など、ほかの膵酵素とあわせて判断されるのが通常です。
Q3. 再検査をしたら数値が下がることはありますか?
A. あります。胆管炎や膵炎が落ち着くと、CA19-9や膵酵素が基準値内に戻ることは珍しくありません。上昇が一時的なものか続いているのかを見ることも、再検査の目的の一つです。
Q4. 治療中に腫瘍マーカーが上がったら、再発や進行ということですか?
A. 可能性の一つではありますが、それだけでは決まりません。ステントのつまりや炎症でも上がるため、画像検査で原因を確かめ、新たな病変が発見されたかどうかもふまえて方針が話し合われます。
6.まとめ
膵臓がんの血液検査では、CA19-9をはじめとする腫瘍マーカーと、アミラーゼなどの膵酵素が主な手がかりになります。基準値を超えても膵臓がんとは限らず、反対に正常でも見逃しがないとは言い切れません。
だからこそ、数値は画像検査や症状とあわせて読み解くものです。異常が見つかったあとはCTやMRI、超音波内視鏡で膵臓を詳しく確かめ、治療中は数値の推移を医師と一緒に追っていきます。
一つの数字に心が大きく揺れるのは自然なことです。その数字が何を示し、次に何を確かめればよいのかを知ったうえで、検査結果を手に主治医との対話を重ねていきましょう。

快適医療ネットワーク理事長
監修
医学博士 上羽 毅
金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広い知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。









