- 2025.08.19
- 膵臓がん
膵臓がんステージ4 生存率の衝撃的現実と対策
膵臓がんが「早期発見が難しい」と言われることをご存知でしょうか。
初期の頃はほとんど症状がなく、気づかないうちに病気が進んでしまうことがあります。そのため、がんがすでに膵臓の周囲の臓器(胃や肝臓、肺など)にまで広がり、遠隔転移が認められるケースも少なくありません。これが、一般的に「ステージ4」と呼ばれる状態です。
膵臓がんは、がん細胞の種類や位置によっても症状の現れ方がさまざまです。腹部や背中の痛み、食欲不振や吐き気、皮膚が黄色くなる黄疸(おうだん)などが現れることがあります。このような症状は、がんが周囲の組織や神経を圧迫することで起こるケースが多いため、まずは症状を和らげる対応が大切になります。
治療に関しても、がんが広がりすぎているために、がんをすべて取り除く「根治」を目的とした手術(外科的切除)が難しい場合もあります。
しかし、たとえ手術ができないと言われたとしても、希望を失う必要はありません。
最近では、治療法が進化し、がんの進行を抑えたり、症状を和らげたりする治療が見つかっています。たとえば、抗がん剤治療もその一つです。複数の抗がん剤を組み合わせたり、点滴で投与したりすることで、がんを縮小させたり、進行を遅らせたりする目的で行われます。これにより、がんとともに生きる時間を少しでも長くすることを目指すことができます。
このコラムでは、膵臓がんのステージ4と診断された方が、少しでも安心して日々を過ごせるよう、体と心をサポートする情報をお届けします。
厳しい現実に直面されている方も少なくはない病気ですが、希望を持って前向きな対応をしていくためのヒントを、このコラムで見つけていただけたら幸いです。
1.膵臓がんステージ4 生存率の現状
膵臓がんは、発見が難しく進行が早いがんの一つであり、ステージ4になると治療が困難になることが知られています。ステージ4の膵臓がんの生存率は非常に低く、患者と家族にとって衝撃的な事実となっています。
実際、ステージ4の患者の5年生存率は数パーセント程度と報告されており、原因としては、病気が転移し、臓器の機能が低下し、症状が悪化することが挙げられます。
しかし、最近の研究では、個々の患者の状態や適切な治療法を選択することで、生存期間が延びる可能性も示唆されています。
膵臓がんステージ4 余命と生存率の相関性
膵臓がんステージ4の余命と生存率は密接に関係しており、進行状況や治療法によって変動します。一般的に、膵臓がんステージ4の患者の余命は短く、半年から1年程度とされています。
しかし、適切な治療法を選択し、患者の状態に応じた緩和ケアを行うことで、症状の改善や生活の質の向上が期待できます。例えば、化学療法や放射線治療、標的治療薬の使用などが検討されています。
個々の患者における生存率の変動要因
膵臓がん患者の生存率は、個々の患者の状態や治療法によって大きく変動します。まず、患者の年齢や一般的な健康状態、既往症などが生存率に影響を与える要因となります。
また、膵臓がんの進行状況や転移先、治療法の選択や適応、副作用の程度や治療効果も生存率に関与しています。さらに、医療機関や医師の専門性、最新の治療法や研究の進歩も生存率を左右する要素となります。
これらの要因を踏まえ、患者と医師が密接に連携し、最適な治療法を選択し続けることが、個々の患者における生存率の向上につながります。
最新研究による生存率向上の可能性
最近の研究では、がん治療において膵臓がん患者の生存率向上が期待される成果が報告されています。理由の一つは、手術技術の向上が挙げられます。例えば、膵頭十二指腸切除術の進化や腹腔鏡を用いた手術が導入されており、これにより患者の回復が早まり、合併症のリスクも低減されています。
また、化学療法や放射線療法の進歩も生存率向上に寄与しています。最新の研究では、新規分子標的薬や免疫療法が膵臓がん治療に効果的であることが示唆されており、これにより転移や再発の抑制が期待されます。
さらに、病理検査の精度向上により、より早期のステージで膵臓がんが発見されることが増えています。早期発見につながる症状の把握や検査の普及が進むことで、より多くの患者が適切な治療を受けられるようになるでしょう。
これらの研究成果を踏まえて、医療関係者は膵臓がん患者の生存率向上に向けた取り組みを続けています。末期の患者に対しても、より良いケアやサポートが提供されることで、生活の質が改善される可能性があります。
2.膵臓がんの診断・治療法
膵臓がんの診断は、病状の進行に応じてCTやMRI、血液検査などを行います。早期に発見されると、手術による治療が可能となり、生存率が大幅に向上します。一方で、ステージが進行している場合は治療法が限られ、生存率が低下する傾向があります。
治療法としては、手術が第一選択であり、腫瘍の切除に成功すれば、患者の生存率が大きく向上します。しかし、進行した病状や患者の年齢などにより手術が困難な場合もあります。その際は、化学療法や放射線療法が代替治療法として選ばれることが多くなります。
また、膵臓がんの病状が進行すると、他の臓器への転移が起こる可能性が高くなります。そのため、早期診断・治療が生存率に大きく影響を与えることが分かります。
症状から膵臓がんの早期発見に繋げる方法
膵臓がんの早期発見に繋げる方法は、まず患者自身が症状を把握し、早目に専門医に相談することです。膵臓がんの典型的な症状には、消化不良や腹痛、黄疸、体重減少などが挙げられます。
また、膵臓がんのリスク因子を理解し、生活習慣の改善に努めることも大切です。喫煙の削減や適度な運動、バランスのとれた食事を心掛けることで、発症リスクを軽減することができます。
さらに、家族歴や遺伝的な要因がある場合は、定期的な検査を受けることが推奨されます。早期発見の鍵は、自分自身の体調やリスクに気を付け、必要に応じて医療機関と連携しながら適切なケアを受けることです。
各ステージ別治療法と生存率の比較
膵臓がんの治療法は、がんのステージによって異なります。ステージが進行するにつれて生存率は低下し、治療の選択肢も限られてきます。
早期発見の場合、手術が最も効果的な治療法です。切除が可能な範囲で膵臓や周辺のリンパ節を除去し、残存がん細胞のリスクを低減します。しかし、膵臓がんは症状が現れにくく、早期発見が難しい病気です。
中期の膵臓がんでは、化学療法や放射線療法が主に用いられます。これらはがん細胞の増殖を抑制し、転移や再発のリスクを低減しますが、それぞれ効果には個人差があります。
進行期の場合、手術は困難となり、化学療法や放射線療法で症状の緩和を目指します。さらに、免疫療法や分子標的薬が研究開発されており、一部の患者に対して効果があります。
生存率は、ステージが進むにつれて低下します。早期発見であれば5年生存率が20%以上ですが、進行期になると5%以下となります。早期発見・診断が重要であり、病状に合った治療法の選択が生存率に大きく影響します。
手術や化学療法の効果と限界
手術は、膵臓がんの早期治療において最も効果的です。しかし、進行期になると手術の適応が限られ、化学療法や放射線療法に頼ることが多くなります。化学療法は、がん細胞の増殖を抑制し、転移や再発のリスクを低減しますが、効果には個人差があり、また副作用も伴うため患者のQOLに影響します。さらに、治療効果が限定的であり、がん細胞が耐性を持つこともあります。
放射線や免疫療法の可能性
放射線療法は、がん細胞に直接エネルギーを加えて細胞を破壊します。局所進行や転移を抑制し、症状緩和を図ることができますが、正常細胞への影響や副作用を抑えるために照射量が制限されます。免疫療法は、患者自身の免疫システムを活性化させ、がん細胞を攻撃する新しい治療法です。一部の膵臓がん患者に対して効果がありますが、まだ十分な研究が行われておらず、治療効果や副作用の把握が必要です。
3.膵臓がん患者と家族が知るべき情報
膵臓がん患者と家族が知るべき情報は、病状の把握、治療法の選択、病院や医師とのコミュニケーション方法、ケアの方法、予後の見通しや生活習慣改善の方法です。これらの情報は、患者と家族が適切な治療やケアを受け、最善の結果を追求する上で欠かせません。適切な情報収集と共有を行うことが、膵臓がん患者と家族にとって重要です。
日本での膵臓がん医療の最新動向
近年、日本では膵臓がんの治療方法が進化し、より患者の生存率向上が期待されています。膵臓がんは、進行が早く早期発見が難しい病気であり、診断が遅れることが多いです。そのため、効果的な治療法の開発が重要とされています。
最先端の治療法の一つに、腫瘍細胞を破壊する方法である免疫療法があります。これは、患者自身の免疫力を利用して癌細胞を攻撃することで、副作用が少なく、効果が期待される治療法です。また、分子標的薬も進化しており、患者の病状やゲノム情報に合わせた個別化医療が可能となっています。
手術方法も進化しており、膵臓がんの切除率は徐々に向上しています。最新の手術技術は、従来の開腹手術から腹腔鏡手術やロボット支援手術に移行し、外科医の負担軽減や患者の回復期間の短縮が図られています。
また、診断方法も進化し、画像診断や血液検査でより早期に発見が可能となっています。今後、膵臓がんに対する研究が進み、さらなる治療法開発が期待されます。
患者と家族の心のケアとサポート
膵臓がんの病気と診断されると、患者本人だけでなく家族も様々な心の負担がかかります。対策として、医療チームと連携しながら以下のような心のケアが推奨されています。
・専門のメンタルヘルスケアチームと連携し、心理的ケアを受ける
・情報提供による不安解消: 病気や治療法に関する正確な情報を得ることで、患者と家族の安心感が向上
・同じ状況の患者や家族と交流し、励まし合う
・家族や友人とのコミュニケーションを積極的に取り、相互理解やサポートを深める
・緩和ケア専門チームと連携し、痛みや副作用の緩和、QOL向上に努める
・食事や運動などの生活習慣改善により、心身の健康を維持する
これらの心のサポートを継続的に行うことで、患者と家族が癌治療に向かって前向きな気持ちで取り組めるようになります。
膵臓がん患者に最適な病院の選び方・相談窓口
膵臓がんの治療を受ける際に、最適な病院を選ぶことが大切です。そのためには、以下のポイントを考慮することが大切です。
・治療経験の豊富さ
膵臓がんの治療に精通した医師が在籍している病院
・最新の設備や治療法
技術や設備が最新で、多様な治療法が提供されている病院
・緩和ケアの充実
緩和ケアチームが整備されており、患者のQOLや心身のケアが行われている病院
・アクセスや費用
通院や入院が容易で、治療費用が適切な病院
・信頼関係の構築
医師やスタッフとの信頼関係が築ける病院
最適な病院を探すためには、家族や友人からの紹介やインターネットでの情報収集も役立ちます。また、がん専門の相談窓口も活用するとよいでしょう。全国には、がん患者や家族向けの相談窓口が設けられており、専門家から治療法や病院選びに関する情報提供、心のケアやサポートが受けられます。
4.膵臓がんの予防方法と対策
膵臓がんの予防や対策は、がんの進行を抑え、治療の効果を高めるためにもとても大切です。すでに膵臓がんを経験されている方も、日々の生活の中でできることを知ることで、希望を持って前向きに取り組めるようになるかもしれません。
ここでは、リスクを減らすための具体的な方法を、3つのポイントに分けてご紹介します。
がんのリスクを知り、生活を見直す
膵臓がんの発生には、いくつかのリスクが関係していることがわかっています。
・喫煙
タバコは、膵臓がんのリスクを上げる大きな要因の一つです。喫煙習慣がある方は、禁煙を検討することで、がんのリスクを下げることができます。禁煙はご自身の体だけでなく、周囲のご家族の健康も守ることになります。
・過度な飲酒
長期間にわたる過度な飲酒は、膵臓に負担をかけ、がんのリスクを高める可能性があります。適度な量を心がけ、休肝日を設けるなど、健康を意識した飲み方を実践してみましょう。
・肥満と糖尿病
肥満は、糖尿病をはじめとするさまざまな病気の原因となります。糖尿病と診断されている方は、膵臓がんのリスクが高いことがわかっていますので、かかりつけ医と相談しながら、血糖値をしっかりと管理することが大切です。
・家族に膵臓がんを経験された方がいる
血縁者に膵臓がんを経験された方が複数いる場合、遺伝的な要因も関係している可能性があります。ご心配な方は、専門の医療機関に相談することで、遺伝子検査や定期的な検診について詳しい情報を得ることができます。
がんに負けない体をつくる
毎日の生活の中に、体を守るための工夫を取り入れてみましょう。
無理のない範囲でできることから始めてみるのが、長続きの秘訣です。
・バランスの良い食事
野菜や果物には、食物繊維や抗酸化物質が豊富に含まれており、体の調子を整える働きがあります。また、オメガ3脂肪酸が多く含まれる魚やナッツ類も、健康に良いとされています。食欲不振の時は、少量でも栄養が摂れるように、食べやすいものを選ぶなど、工夫してみましょう。
・適度な運動
ウォーキングや水泳など、体に無理のない有酸素運動は、体全体の調子を整えるのに役立ちます。また、適度な運動は、ストレスの緩和にもつながります。毎日少しずつでも、気分転換になるような運動を見つけることが大切です。
・ストレスをため込まない工夫
ストレスは、体の免疫力を下げるとも言われています。趣味の時間を作ったり、信頼できる方と話したり、ご自身なりのストレス解消法を見つけておくことが大切です。
検診を活用する
膵臓がんを早期に発見し、治療を始めることは、治療効果を高める上で非常に重要です。特に初期の膵臓がんは、自覚症状がほとんどないケースが多いため、定期的な検診が大きな意味を持ちます。
・健康診断の活用
健康診断で腹部の超音波検査(エコー検査)を受けることで、膵臓の状態を確認することができます。もし何らかの異常が指摘された場合は、精密な検査を受けられるよう、医師に相談することが大切です。
・ご家族の協力
ご自身だけでなく、ご家族にも検診をすすめることは、早期発見の可能性を高めることにつながります。ご家族みんなで健康に関心を持つことで、お互いを見守ることができます。
これらの予防と対策は、膵臓がんだけでなく、日々の健康を保つためにも役立つものです。無理をせず、ご自身のペースでできることから一つずつ始めてみましょう。何かご不安なことがあれば、まずは主治医や医療スタッフに相談してみてください。
5.膵臓がんステージ4 生存率の総まとめ
膵臓がんのステージ4は、体のほかの臓器にもがんが広がっているため、治療が難しいとされる状況ではあります。不安な気持ちやつらい思いをされている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、最近の医療は日々進歩しています。がんを完全に取り除くことが難しいとしても、抗がん剤やそれに伴う副作用対策の薬を使うことで、がんの進行を抑えたり、痛みや吐き気といったつらい症状を和らげて元気な日々を過ごしたりすることができます。これは、ご自身が穏やかな毎日を過ごすためのとても大切な治療です。
医療の進歩により、がんとともに生きるための時間が少しでも長くなるよう、治療の選択肢は増えています。
不安な気持ちや、疑問に思うことがあれば、一人で抱え込まずに、主治医や医療スタッフに相談してみてください。
※この記事は2024年4月15日に作成され、2025年8月19日に内容を更新しました。

快適医療ネットワーク理事長
監修
医学博士 上羽 毅
金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。