• 2024.05.20
  • 肺がん

肺がん末期の検査・治療法 ~患者と家族が知るべきポイント~

肺がんにおける末期の診断を受けた患者とその家族にとって、治療法や検査方法に関する情報は非常に重要です。
この記事では、肺がんの末期に関する基本的な知識を解説し、患者と家族が把握すべきポイントについて紹介します。
まず、肺がんの末期の症状についてと、緩和ケアの重要性について述べます。主な症状や対処法、家族とともに在宅緩和ケアを選択するケースなど、患者の生活の質(QOL)を向上させる取り組みをご紹介します。
次に、がんの進行ステージに応じた診断と治療法を探ります。肺がんステージ4の生存率や余命、免疫療法の可能性と副作用への対応、再発リスクを減らすための治療選択など、治療に関する具体的な情報を提供します。
さらに、肺がんの診断のための検査方法についても触れます。CTや血液検査の役割と注意点、患者に優しい新技術の活用など、診断に関する詳細をお伝えします。
最後に、医療者と患者のコミュニケーションにおけるポイントを解説します。病状や治療法について伝える医師の役割や家族のサポートを受ける患者の心構えなど、末期肺がん患者が抱える不安に対するアプローチについて説明します。

1.肺がん末期の症状と緩和ケアの重要性

末期の肺がん患者が直面する主な症状は、以下の通りです。

・呼吸困難
 肺の機能が低下し、十分な酸素が体に供給されなくなることによる。
・咳・喀痰
 腫瘍や炎症が気道を刺激することによる。
・疼痛
 がんが肺以外の部位に転移して引き起こされることが多い。
・体重減少・食欲不振
 がんや治療の副作用による。
・疲労感
 がんが全身に及び、免疫力が低下することによる。

これらの症状が重なることで、患者の生活の質(QOL)は著しく低下します。

適切な緩和ケアによるQOLの向上

適切な緩和ケアを受けることで、患者のQOLが向上し、家族も心身の負担が軽減されます。
緩和ケアは、医師や看護師、薬剤師、栄養士、精神科医などがチームで患者と家族に対応し、症状の緩和や心のケアを行います。主な緩和ケアの方法は以下の通りです。

・痛みの管理
適切な鎮痛薬の使用や、痛みの原因にアプローチする。
・呼吸困難の緩和
酸素療法や、副作用の少ない鎮咳薬を使用。
・栄養サポート
食事の工夫や、適切な栄養補助を行い、体力の維持・向上を図る。
・精神的ケア
患者や家族とのコミュニケーションによる不安や恐怖感の緩和。

適切な緩和ケアを受けることで、患者は体力や精神力を維持し、家族も十分なサポートができる状態になります。これが、末期肺がん患者にとって、最も重要な医療の一部です。

 

家族も参加する在宅緩和ケアの選択肢

末期患者に対し、在宅緩和ケアは患者の生活の質を向上させる重要な選択肢となります。在宅緩和ケアは、家族も参加し、医療スタッフと連携して行われます。
具体的な選択肢には以下のようなものがあります。

・訪問看護
 専門の看護師が週に数回患者の自宅に訪れ、症状の管理や介助を行います。
・訪問診療
 定期的に医師が患者宅で診察を行い、病状の確認や治療方法の指導を実施します。
・在宅酸素療法
 呼吸困難を緩和するため、患者の自宅で酸素を供給する治療法です。
・住宅改修や福祉用具の利用
 生活に不便を感じる状態に対応するため、住宅の改修や福祉用具の導入を検討します。
・緩和ケアチームとの連携
 在宅状態でも専門家からサポートを受けられるよう、緩和ケアチームと連携してケアを進めます。

家族は、患者の日常生活や病状の変化をよく観察し、医療スタッフと連携しながら在宅緩和ケアに参加します。また、家族自身の心身の負担を軽減するため、相談やサポートを受けることも大切です。

2.がんのステージ別診断と治療法

ステージ4の肺がんは、他の臓器に転移し、治療が困難な状態を指します。
ステージ4の生存率は一般的に低く、予後は患者の状態や治療効果に影響を受けます。
具体的な余命は個人差があり、治療法や転移先の臓器、合併症の有無など多くの要素によって変わります。しかし、近年の医療技術の進歩により、ステージ4でも患者の生活の質を向上させ、生存期間を延ばす治療が可能となっています。
ステージ4の患者には、症状緩和や生活の質の向上を目指す緩和ケアが中心となりますが、最新の分子標的薬や免疫療法などの新しい治療法も選択肢として検討されることがあります。
最適な治療法やケア方法は患者の状態や希望に基づくため、医師と相談しながら決定することが重要です。

免疫療法の可能性と副作用への対応

免疫療法は、肺がん治療の一つとして近年注目を集めています。その理由は、免疫力を高めることで、がん細胞を攻撃し、進行や転移を抑制する可能性があるからです。
具体的には、免疫チェックポイント阻害薬によって、がん細胞に対する免疫応答を強化し、治療効果を得ることが期待されています。
しかし、免疫療法には副作用が伴う場合もあります。例えば、皮膚炎、腸炎、肺炎などの症状が起こることがあります。これらの副作用に対処する方法としては、まずは医師と相談し、症状の状態や進行具合を詳細に確認することが重要です。また、医師の指示に従い、薬の調整や副作用緩和剤の投与や、必要に応じて入院となります。
免疫療法は、患者の身体状況やがんの進行状況によって、治療選択が異なります。最適な治療法を選択するためには、医師と十分に相談し、検査結果や治療経過をもとに治療を選択することが必要です。副作用への対応にも、医師と連携して適切なケアを受けることが大切です。

 

再発リスクを減らすための治療選択

肺がんの再発リスクを減らすためには、適切な治療選択が重要です。一般的な治療方法としては、手術、放射線治療、化学療法、免疫療法があります。これらの治療の選択肢を組み合わせることで、再発リスクを最小限に抑えることができます。
まず、手術は病巣の摘出を行い、がん細胞の拡散を防ぐ治療法です。肺がんの早期段階であり、手術が可能な状態の場合に選択されます。放射線治療は、がん細胞に対して放射線を照射し、細胞を破壊する方法で、手術が困難な場合や患者の年齢・体力によってはこの方法が選択されます。
化学療法は、抗がん剤を用いてがん細胞の増殖を抑制する治療法です。手術や放射線治療と併用されることが多く、全身に転移したがん細胞にも対応できる治療法です。免疫療法は先述の通り、免疫力を高めることでがん細胞を攻撃する方法で、個々の患者によって効果が変わるため、医師と相談して慎重に選択することが重要です。
最適な治療選択には、患者の状態やがんの進行状況に応じて、専門医と十分に相談し、治療計画を立てることが大切です。

3.肺がん診断に欠かせない検査方法

肺がん診断には、いくつかの検査方法があります。主に画像診断、内視鏡検査、細胞診検査が重要な役割を果たしています。画像診断では、レントゲンやCTスキャン、MRI、PET-CTなどが用いられ、肺の状態や腫瘍の大きさ、転移の有無などを確認します。

内視鏡検査は、気管支鏡検査が主に行われ、カメラを用いて肺の内部を観察し、異常な部位を特定します。細胞診検査では、肺針穿刺生検や気管支鏡検査による生検を行い、細胞レベルでの診断を行います。これにより、正確な肺がんの診断や病期の判断が可能になります。

さらに呼吸機能検査や血液検査なども行われ、患者の体力や肝臓・腎臓などの機能などの確認を行い、治療選択に反映させます。これらの検査方法は、肺がんの診断に欠かせないものであり、治療開始前に必要な情報を得るために行われます。検査結果を元に、医師と患者が共に治療計画を立て、適切な治療を受けることが必要です。

CTや血液検査の役割と注意点

CT検査は画像を使い、最新の情報や具体例を利用して病気の状態を確認する方法です。具体的には、腫瘍や転移の有無、腫瘍の大きさや位置、肺機能や臓器の影響を評価します。血液検査は病気の進行状況や効果を把握するために重要で、患者の身体や健康状態に関する情報を提供します。

しかし、注意点もあります。CT検査は放射線のリスクがありますし、血液検査では検査範囲が限定的であり、確実な診断や詳細な内容を得ることが難しい場合があります。患者や家族は医師や看護師と相談し、適切な検査や診療を選択することが大切です。また、検査結果は他の病院や医療者と共有されることが一般的で、医療者は患者のプライバシーを尊重し、適切な対応を心掛ける必要があります。

 

患者に優しい新技術の活用

末期肺がん患者に対し、新技術の活用が期待されています。免疫療法や分子標的薬など、副作用が少なく効果的な治療法が開発されていることで、より多くの患者が望んでいる緩和ケアや在宅ケアが可能になります。

また、医療技術の進化により、リアルタイムで患者と医療者がコミュニケーションが取れるサービスが増えており、不安や症状の解説を電話やオンラインで受けることができます。これにより、患者はどのような状況でもいつでも相談し、必要なケアに対応することができます。

4.医療者と患者のコミュニケーション

医療者と患者のコミュニケーションは、治療やケアの質を向上させる上で大変重要です。患者は自分の症状や状態を医療者に正確に伝え、治療計画の選択や治療方針を理解しましょう。また、悩みや不安、痛みなどの症状がある場合は遠慮せずに相談してください。

医療者は患者の希望や状態を尊重し、適切な診断や治療方法を提案します。必要に応じて家族や他の医師と連携し、患者が安心して治療が受けられる環境を整えることも重要です。このようなコミュニケーションを通じて、患者と医療者が信頼関係を築き、末期肺がん患者の生活の質を向上させることができます。

病状や治療法について伝える医師の役割

医師の役割は、肺がん末期の患者に対して病状や治療法の適切な説明を行うことです。患者は症状や診断、治療方法などについて不安を抱えているため、医師はそれらに対する理解を深める手助けをします。

具体的には、まず患者が抱える症状について詳細な診察を行い、診断結果をもとに可能な治療法を提案します。治療法には手術や放射線療法、化学療法などの選択肢がありますが、患者の病状やリスクを考慮し、最適な方法を選択することが求められます。

また、治療に伴う副作用や効果、病状の進行に及ぼす影響なども丁寧に説明することが重要です。これにより患者は自らの病気や治療に対する理解を深め、不安を軽減できます。さらに、家族や医療スタッフとの連携も密に行い、患者のケアをサポートします。

さらに、医師は病状に応じた在宅ケアや緩和ケアの提案も行います。これにより、患者は自宅で過ごす時間を有意義にし、家族とともにQOLを向上させることができます。

 

家族のサポートを受ける患者の心構え

家族のサポートを受ける際に患者が持つべき心構えとは、まず自分の状態や治療について正確に把握し、家族にも伝えることです。これにより、家族が適切なサポートを提供できるようになります。

また、患者自身が不安や痛みを抱えることが多いため、家族とのコミュニケーションが重要です。話し合いや相談を通じて、家族が患者の気持ちや症状を理解しやすくなります。

家族に過度な負担をかけないよう、自分でできることは積極的に行うことも大切です。家族に頼ることも重要ですが、自分の力でできる範囲で日常生活を送ることで、家族も安心することができます。

家族と治療を共に歩む姿勢を持ち、適切なケアを受けることが大切です。家族や医療スタッフと連携し、病気と向き合っていくことで、最善の治療結果を目指すことができます。

5.まとめ

肺がん末期の知識とケアは、病状や治療法についての正確な情報把握や家族との連携が重要です。医師や医療スタッフと密に連携し、適切な治療法や緩和ケアを選択することで、患者のQOL向上につながります。
この記事で紹介した内容を参考に、肺がん末期である患者や家族が適切な知識とケアを取り入れることが大切です。さらに詳しい情報を知りたい方は、専門家への相談や関連サイトを訪れることをお勧めします。最新の研究や治療法について続けて学ぶことで、より効果的なケアが可能になります。

快適医療ネットワーク理事長

監修 
医学博士 上羽 毅

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。