• 2024.07.16
  • 肺がん

小細胞肺がんの症状・治療法・予防法について解説

小細胞肺がんは、肺がんの中でも特に進行が早く、治療が困難とされる病気です。このコラムでは、小細胞肺がんの症状、治療法、予防法について詳しく解説します。
まず、小細胞肺がんの特徴や初期症状、進行状況について解説し、次に検査方法や診断基準、そして治療選択のポイントについて説明します。
さらに、最先端の治療法や免疫療法、分子標的薬の可能性、再発や転移への対策などの情報を詳細にお伝えします。

1.小細胞肺がんの概要

小細胞肺がんは肺がんの中でも特に悪性度が高く、急速に進行する種類のがんです。
肺がん全体の約15%を占めるこの病気は、さらに細胞の形状や性質によって分類されます。
主な原因は喫煙で、喫煙者が発症するリスクが非喫煙者と比較して非常に高いことが知られています。早期発見が難しく、進行が速いため、診断されるときには既に転移があることが一般的です。
治療法としては、化学療法や放射線治療が主に用いられ、手術はあまり行われません。また、免疫療法など新しい治療法の研究も進められている現在では、治療成績の改善が期待されています。
小細胞肺がん患者の生存率は、病期や治療内容によって異なりますが、全体としては低く、早期診断と適切な治療が重要です。

 

小細胞肺がんの特徴

小細胞肺がんは、肺組織の内側にある小型の線維状細胞ががん化することで発生します。このタイプのがん細胞は、形態学的に小さく、核が大きく、増殖能力が非常に高いことが特徴です。
そのため、腫瘍が急速に成長し、転移や再発が早期から起こることが多いです。また、肺のリンパ節や肺門部に好発し、肺の外にも広がりやすく、全身への転移も一般的です。
肺がんの中で小細胞肺がんは、診断・治療の難しさや予後が悪いことから、「悪性度が高いがん」とされています。しかし、化学療法や放射線治療による治療効果が高い場合があるため、適切な治療が重要です。
最近の研究では、遺伝子変異や標的治療に関する知見が増え、新たな治療法の開発が進むことで、予後改善が期待されています。

 

初期症状と進行

小細胞肺がんの初期症状は非常に多様であり、咳や痰、胸痛、息切れ、体重減少などが挙げられます。しかし、これらの症状は一般的な肺炎や感冒と類似し、初期の肺がんを特定するのは困難です。
小細胞肺がんは急速に進行し、肺から他の臓器への転移が起こりやすいです。転移が発生すると、新たな症状が現れることがあります。例えば、肝臓への転移では黄疸や腹痛が、骨への転移では骨折や骨痛があります。
進行すると全身状態が悪化し、倦怠感や食欲不振、体重減少などが続くことが一般的です。肺がんの進行を遅らせるためには、早期発見と適切な治療が非常に重要です。肺がん検診を受けることで、病気の発見が早まる可能性があります。

2.診断から治療選択までの流れ

肺がんの診断は、まず症状や検査結果を元に進行状態を把握し、適切な治療法を選択することが重要です。診断の流れは、患者が訴える症状や診察を通じた発見をもとに、医師が詳細な検査を指示します。
検査には、画像診断や血液検査、組織検査などが行われ、これらの結果からがんの存在や種類、ステージ分類が明らかになります。ステージ分類は、がんの進行具合や転移状況を把握するために行われるもので、適切な治療法の選択に大きく関わってきます。
治療法は、手術、化学療法、放射線療法、免疫療法などが一般的で、患者の状態やがんの種類、ステージに応じて選択されます。医師と患者が治療方針について十分に話し合い、合意した上で治療が開始されます。

 

検査方法と診断基準

肺がんの検査方法には、まずレントゲンやCTを用いた画像診断が行われます。これにより、肺に異常があるかどうかを確認します。
次に、血液検査や細胞検査、組織検査などが実施され、がん細胞の存在や種類を特定します。
診断基準として、症状や画像診断、検査結果を総合的に判断し、がんの存在が確定されると、ステージ分類が行われます。これにより、治療法が選択されることになります。

 

ステージ分類と治療選択のポイント

肺がんの治療選択におけるポイントは、ステージ分類に基づいた適切な治療法の選択です。
ステージ分類では、癌の大きさやリンパ節への広がり、転移の有無などを評価します。早期ステージの場合、手術や放射線治療が主に行われます。
一方、進行がんの場合は、化学療法や免疫療法が選択されることが多いです。また、個々の患者の状態や合併症、遺伝子検査結果なども考慮され、最適な治療法が選ばれます。

3.最先端の治療法

最先端の肺がん治療法には、分子標的治療や免疫チェックポイント阻害療法があります。分子標的治療は、がん細胞の特定の遺伝子変異に働きかけ、増殖を抑制する薬物を用いた治療です。免疫チェックポイント阻害療法は、がん細胞が免疫システムを回避するのを阻止し、がん細胞を攻撃できるようにする治療法です。
これらの治療は、進行がんや再発がんの場合に有効であり、従来の治療法と併用されることで、さらなる効果が期待されています。

 

放射線治療と薬物療法の進化

近年、がん治療の分野では放射線治療と薬物療法の進化が著しく、患者の治療効果が向上しています。
放射線治療は、がん細胞を破壊することで病状の改善を目指す治療法です。これに対し、薬物療法は、がん細胞の増殖を抑制し、転移や再発のリスクを低減させるための治療法です。
放射線治療では、肺がん、脳腫瘍、大腸がんなど、さまざまな種類のがんに対応できるようになってきました。また、技術の進歩により、照射範囲や線量の精度が向上し、健康な組織へのダメージを最小限に抑えることが可能になりました。そのため、患者の状態や症状に応じて最適な治療法を選択できるようになったのです。
一方、薬物療法も大きく進化しており、従来の化学療法に加え、分子標的薬や免疫療法が登場しました。分子標的薬は、がん細胞の増殖を阻止する遺伝子や分子に特異的に作用し、副作用を抑えつつ効果的にがん細胞を攻撃できる治療法です。免疫療法は、がん細胞と闘う人体自身の免疫力を高めることで治療効果を発揮します。
これらの治療法の進歩により、がん患者の治療成績が向上し、生活の質も改善しています。また、医療技術の発展に伴い、治療法の組み合わせや併用が一般的になり、患者にとって最適な治療方針が選択できるようになりました。

 

免疫療法と分子標的薬の可能性

近年、免疫療法と分子標的薬ががん治療における大きな可能性を秘めているとされ、多くの研究が行われています。免疫療法は、がん細胞の増殖を抑えるだけでなく、再発や転移を防ぐ効果も期待されています。特に、チェックポイント阻害薬は、がん細胞の免疫逃れを防ぐことで、免疫システムによるがん細胞の攻撃を促進する効果があります。
また、分子標的薬は、特定の遺伝子や分子を標的にした薬物療法であり、効果的かつ副作用が少ない治療が可能です。例えば、EGFR(表皮成長因子受容体)などの遺伝子変異に対応した分子標的薬は、非小細胞肺がんの治療に有効であることが分かっています。
これらの治療法は、患者の病状や遺伝子情報に基づいて選択されるため、個別化された医療が実現しています。今後、免疫療法や分子標的薬が更に進化し、多くのがん患者に対して効果的な治療法として幅広く活用されることが期待されています。

4.再発や転移への対策

がん治療において、再発や転移を防ぐためには、まず第一に早期発見が重要です。検査や診断を定期的に行うことにより、がんの進行を早期に把握し、適切な治療を行うことが可能になります。
また、手術や放射線治療などの局所治療に加え、薬物治療が適切に行われることで、転移や再発のリスクを低減することができます。
具体的には、免疫療法や分子標的薬の活用により、早期の段階からがん細胞の増殖を抑制し、全身への転移を防止することが期待されます。さらに、患者の生活習慣の改善や予防策の実施も、再発や転移のリスクを減らす上で重要です。
喫煙や過剰な飲酒、運動不足などの生活習慣は、がんの進行や再発に影響を与えることが知られていますので、健康的な生活を送ることが肝心です。

 

再発予防と早期対処のコツ

再発予防には、生活習慣の改善、定期的な検診、症状の把握が重要です。生活習慣の改善には、喫煙や不摂生を避け、適度な運動やバランスの良い食事を心掛けることが挙げられます。
定期的な検査には、がんの再発リスクを軽減するため、医師から指示された検査を実施し、結果を確認することが不可欠です。症状の把握と早期対処のコツは、自分の身体に対する理解を深めることです。例えば、新たな痛み、呼吸困難、咳が発生した場合、速やかに医療機関を受診し診断を受けることで、再発や転移の早期対処が可能となります。
また、免疫療法や化学療法などの治療後には、副作用による症状管理やリンパ浮腫の予防が重要です。これらの対策を日常生活に取り入れることで、生活の質(QOL)が向上し、再発予防にも繋がります。
適切な予防や対処法を実践するためには、医師や看護師とのコミュニケーションを大切にし、情報収集や相談に努めることが望ましいです。

 

転移先に応じた治療法

転移先に応じた治療法は、転移がんの種類や病状によって異なるため、個々の状況に合わせた治療選択が重要です。 肺がんの転移先としてよく見られる臓器は、肺、脳、肝臓、骨です。
肺への転移に対しては、手術や放射線治療、化学療法、免疫療法などが選択されます。脳への転移治療では、外科手術や放射線治療、抗がん剤や分子標的薬の投与が行われます。
肝臓への転移がある場合、肝動脈塞栓療法や肝臓切除術、放射線治療が選択肢となります。骨への転移治療では、緩和治療が一般的ですが、骨折や神経圧迫による症状がある場合は、外科手術や放射線治療が行われることもあります。
治療には転移先に応じた様々な選択肢が存在するため、医師と相談しながら最適な治療方針を決定することが肝要です。

5.予防と患者へのサポート

がんの予防と患者へのサポートは、患者の生活の質(QOL)向上に寄与します。予防のためには、喫煙の禁止やバランスの良い食事、適度な運動を行うことが重要です。
患者へのサポートは、家族や友人との協力体制や専門家による援助が不可欠です。家族や友人は、患者の状態や治療経過を理解し、精神的支援を提供することが求められます。
専門家によるサポートは、医療機関やがん専門相談窓口を利用し、適切な治療方針や心身のケアを受けることが大切です。予防と患者へのサポートが適切に行われることで、がん患者の生活の質は向上し、予防や早期発見にも繋がります。

 

喫煙や生活習慣の改善

肺がんの予防には、喫煙の禁煙や生活習慣の改善が重要です。喫煙は肺がんの最大のリスク要因であり、禁煙によって肺がんの発生リスクを著しく減らすことができます。
また、適度な運動や食生活の改善、十分な睡眠、ストレスの軽減など、バランスの良い生活習慣が肺がんの予防に繋がります。特に、野菜や果物を多く摂取することで抗酸化作用により細胞がん化の防御が期待できます。
さらに、定期的な健康診断や医療検査により早期発見が可能であり、早期治療の確立と共に予後の改善に繋がります。習慣や生活環境を見直すことで、肺がんの発生リスクを大幅に減らすことができるため、日々の生活習慣に注意を払うことが重要です。

6.まとめ

小細胞肺がんは、全肺がん患者の約15%を占める比較的少数の、非常に悪性度が高いがんです。喫煙が主要な原因のひとつとされ、早期診断が難しく、多くの患者が進行期に発見されます。
主な症状は咳や呼吸困難、体重減少などであり、診断には肺の画像検査や組織検査が行われます。治療は、がんの進行度や患者の状態に応じて、手術や放射線治療、化学療法、免疫療法などが選択されます。
近年の研究により、新たな治療法や分子標的薬の開発が進み、治療効果が期待されるものもあります。しかし、再発や転移のリスクは依然として高いため、患者や医療関係者は引き続き情報収集や研究に取り組む必要があります。

快適医療ネットワーク理事長

監修 上羽医院院長
上羽 毅(医学博士)

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に 上羽医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。 京都府京都市 上羽医院 http://www.uehaiin.com/