• 2024.09.09
  • 肺がん

肺腺がんをとことん解説!~原因・検査・治療まで~

このコラムでは、肺腺がんの原因から治療法までを詳しく解説します。
まずは肺腺がんの概要や発生原因を把握し、腺がんと扁平上皮がんの違いを理解しましょう。また、肺がんには4つの主なタイプがあります。その中での肺腺がんにおける症状や進行を知ることが大切です。
次に、CT検査による早期発見や細胞分類の確定診断方法を解説し、治療法や予防策をお伝えします。遺伝子標的治療の最新情報や患者の生活に役立つ情報も提供します。
ぜひ、このコラムを参考にして、肺腺がんへの理解を深めてください。

1.肺腺がんの概要を知ろう

肺腺がんは、肺がんの中でも最も一般的なタイプであり、肺の腺上皮細胞が悪性化した病気です。無症状または非常に軽い症状を示すことが多く、検査が困難な場合があります。
肺腺がんは、肺の外科手術や放射線治療、標的治療薬など様々な治療方法が用いられています。早期に発見されれば治療の成功率が高まりますが、進行するとリンパ節や他の臓器へ転移が起こることがあります。
肺腺がんの危険因子としては、喫煙、遺伝子の異常、年齢、性別などが挙げられます。喫煙は肺がん全体の約85%の原因とされており、肺腺がんにおいても喫煙が重要な原因となっています。
予防策としては、禁煙や健康な生活習慣の維持が最も効果的です。遺伝子検査やCT検査による早期発見が、肺腺がん患者の生存率向上に寄与しています。

 

肺腺がんの発生と原因について

肺腺がんは、肺の腺上皮細胞の異常な増殖によって発生します。
これらの細胞は、肺の気管支や肺胞に存在し、粘液を分泌する役割があります。細胞の制御が失われると、がん細胞が増殖し、腫瘍を形成します。
肺腺がんの主な原因は、喫煙です。しかし、非喫煙者でも発症することがあり、放射線や化学物質への曝露、遺伝子の異常、肺炎などが原因とされます。
また、年齢や性別もリスク要因の大きなひとつであり、40歳以上の人や女性に多くみられます。
喫煙による肺腺がん発生のメカニズムは、タバコの有害物質が肺組織にダメージを与え、修復過程で遺伝子の異常が起こることで発症します。遺伝子検査を行うことで、発症リスクの評価や治療方針の決定に役立ちます。
早期発見が重要であり、胸部レントゲンやCT検査が用いられます。症状が現れる場合、咳や喀痰、呼吸困難などが挙げられますが、初期の肺腺がんは無症状であることも多いため、定期的な検診が大切です。

 

腺がんと扁平上皮がんの違い

肺がんは主に腺がんと扁平上皮がんの2つのタイプに分類されます。
腺がんは、肺の腺上皮細胞が悪性化した病気で、肺がん全体の約60%を占めます。扁平上皮がんは、気管支の扁平上皮細胞が悪性化した疾患で、肺がん全体の約20%を占めます。
両者の違いは、発生する細胞の種類と治療法にあります。腺がんは腺上皮細胞が、扁平上皮がんは扁平上皮細胞が悪性化することが特徴です。
治療法においては、腺がんは標的治療薬が効果的な場合が多く、扁平上皮がんは化学療法や放射線治療が一般的です。手術も両者共に適用されることがありますが、扁平上皮がんのほうが手術適応が狭く、高齢者や悪性度が高い場合には手術が困難です。
症状や発症のリスク要因も異なります。腺がんは無症状であることが多く、喫煙以外の要因も関与します。一方、扁平上皮がんは症状が比較的早期に現れ、喫煙が主要な原因とされています。
両者を正確に診断することで、適切な治療法を選択し、患者の予後を向上させることができます。診断には病理検査や遺伝子検査が用いられます。また、予防や早期発見のためにも、喫煙の禁止や定期的な健康診断が重要です。

 

肺がんの主なタイプ

肺がんには、肺腺がんをはじめとする4つの主要なタイプがあります。それぞれの種類は、発生する組織や細胞の違いによって分類されています。

1. 腺がん
上皮組織の腺細胞がんです。最も一般的な肺がんで、喫煙が主要な原因ですが、非喫煙者でも発症することがあります。
2. 扁平上皮がん
肺の気管支組織の扁平上皮細胞がんです。喫煙者に多く見られるタイプで、肺腺がんに次いで多いです。
3. 大細胞がん
肺の細胞が大型化し、正常な細胞構造が失われた状態のがんです。それぞれの部位で発生することがあります。
4. 小細胞がん
細胞が小さく、神経や内分泌組織に似た特徴を持つがんです。喫煙が原因で発生しやすく、急速に進行しやすいです。

これらの肺がんは、症状や進行、治療法などに違いがあるため、正確な診断と適切な治療が重要です。

 

最も一般的な肺腺がんの症状と進行

肺腺がんは最も一般的な肺がんであり、その症状は様々です。初期の段階では、症状がほとんど現れない場合もありますが、進行すると次のような症状が現れることがあります。

・息切れや呼吸困難
・持続的な咳や咳の悪化
・喀痰や血痰
・胸痛
・声のしわがれ
・食欲喪失や体重減少
・繰り返す肺炎や気管支炎

肺腺がんは、腺組織に発生し、進行するとリンパ節や他の臓器へ転移する可能性があります。早期発見と適切な治療が重要であり、進行の度合いによって治療法が異なります。手術や放射線療法、化学療法、分子標的療法などが選択肢となります。

 

 

2.肺腺がんの診断と検査方法

肺腺がんの診断は、まず病歴や身体検査によって疑いが持たれる場合、次のような検査方法が用いられます。

1. レントゲン検査
肺に異常があるかを確認する最初の検査方法です。
2. CT検査
肺の詳細な画像を得ることができ、腫瘍の大きさや位置、リンパ節への転移などを調べます。
3. 組織検査
肺腺がんかどうかを確定するため、細胞や組織を採取し、顕微鏡で調べます。気管支鏡検査や穿刺生検などが用いられます。

正確な診断が確立された後、適切な治療法が選択されます。

 

CT検査による肺腺がんの早期発見

肺腺がんが進行すると呼吸困難や肺炎などの症状が現れ、治療が困難になるため、早期発見が重要です。
肺腺がんは、肺の腺上皮組織から発生し、組織内で細胞の異常増殖が起こることで腫瘍が形成されます。CT検査は、X線を活用して体内の臓器や組織の画像を撮影する医療技術です。腫瘍の位置や大きさ、転移の有無などを正確に把握できるため、肺腺癌の早期発見に非常に有効な方法です。
また、CT検査は非侵襲的であるため、患者の負担も少ないという利点があります。
CT検査による肺腺がんの早期発見は、より適切な治療方針の選択や、予後の改善にも寄与します。さらに、リンパ節への転移や他の臓器への転移の可能性も評価できることから、適切な手術方法や放射線治療の選択に役立ちます。
早期発見の鍵となるCT検査は、肺腺がんの診断・治療において欠かせないツールと言えるでしょう。

 

細胞分類による肺腺がんの確定診断

組織検査は、肺腺がんの確定診断を行う上で重要な手段です。肺腺がんが疑われる場合、まずCT検査や胸部X線などで画像診断が行われますが、最終的な診断には組織検査が必要となります。
組織検査では、病変部位から採取した細胞や組織を顕微鏡で観察し、細胞の形態や構造からがんの種類や進行状況を評価します。肺腺がんは、細胞の形態から扁平上皮がんや大腸がんといった他のがんと区別することが可能です。
組織検査は、肺腺がんの診断だけでなく、治療方針の決定にも役立ちます。例えば、遺伝子検査や免疫染色を行うことで、特定の分子標的治療薬が効果的であるかどうかを判断することができます。
肺腺がんの確定診断に欠かせない組織検査は、治療の成功にも大きく寄与するため、適切に実施されることが重要であると言えます。

3.肺腺がんの治療と予防

肺腺がんの治療には、手術、放射線治療、薬物治療などがあります。
手術では、腫瘍の摘出や肺葉切除、肺移植などが行われ、直接がん細胞を除去します。放射線治療では、がん細胞に対して高エネルギーの放射線を照射し、細胞を破壊します。
薬物治療では、抗がん剤や分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害剤などが用いられ、がん細胞の増殖を抑制することで効果が期待されます。適切な治療法は、肺腺がんの進行状況や患者の状態によって決定されます。
肺腺がんの予防においては、まず喫煙のやめ方が最も重要です。喫煙は肺がんの最も大きなリスク因子であり、禁煙により肺がんの発症率が大幅に減少します。また、受動喫煙の防止や、健康的な食生活や運動習慣の促進も肺腺がんの予防に効果的であることが確認されています。

 

肺腺がんの主な治療法

患者にとって最適な治療法を選択するために、まずは正確な診断とステージ分類が必要となります。主な治療法には、手術、放射線、化学療法があります。
肺腺がんの早期段階では、手術が最も効果的な治療法とされます。部分的な肺葉切除や肺葉全摘出など、腫瘍の部位や大きさに応じて適切な手術方法が選択されます。また、リンパ節転移の有無を確認するためにリンパ節も同時に検査します。
放射線療法は、手術が困難な場合や転移を抑制する目的で用いられます。線源から発生させた放射線を腫瘍に照射し、がん細胞の増殖を抑制することで、腫瘍の縮小を狙います。通常、放射線療法は外部から照射する全身治療で行われますが、内部から照射する内視鏡的治療法もあります。
化学療法は、がん細胞の増殖を抑制する薬剤を用いて行われます。腫瘍が手術で切除できない場合や、手術後の再発予防、転移を抑制するために用いられます。化学療法は、腫瘍の進行によっては他の治療法と併用されることもあります。
各治療法は、患者の病状や遺伝子変異によって効果や副作用が異なります。医師と相談し、患者一人ひとりに適した治療法を選択することが重要です。

 

肺腺がんの遺伝子標的治療

肺腺がんに対する遺伝子標的治療は、近年の研究によって大きく進展しています。遺伝子標的治療は、がん細胞の特定の遺伝子変異を狙い撃ちする薬剤を用いることで、効果的にがん細胞を抑制し、副作用も少ない治療法です。
現在、肺腺がんに対する遺伝子標的治療で注目されているのは、EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子陽性の場合です。これらの遺伝子変異がある患者の場合、標的治療薬の効果が高いとされており、化学療法よりも適切な治療選択となります。
また、免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる新たな治療法も開発されています。これは、がん細胞が免疫システムから逃れるのを阻止し、免疫システムががん細胞を攻撃できるようにするものです。免疫チェックポイント阻害薬は、従来の化学療法や標的治療薬に効果がない場合にも効果が期待できます。
遺伝子標的治療の進歩により、肺腺がん治療の選択肢が増え、効果的な治療が可能となっています。

 

肺腺がん患者の生活と治療後の注意点

肺腺がん患者の生活では、適切な治療を受けるだけでなく、日常生活の改善も重要です。
喫煙は肺がんのリスクを高めるため、禁煙を心がけることが大切です。また、バランスの取れた食事や適度な運動により、体力を維持し治療に備えることが求められます。
治療後の注意点としては、定期的な検診を受けることが重要です。再発や転移の早期発見に役立ちます。また、呼吸リハビリテーションや肺機能向上のための運動も効果的です。適切なリハビリテーションを実施することで、日常生活の質が向上し、長期生存率も向上することが報告されています。
治療や生活改善に取り組むことで、より良い生活の回復が期待できます。

4.まとめ

肺腺がんは、早期発見と適切な治療が大切な病気であり、生活習慣の改善や症状に対する注意が必要です。肺腺がんの新しい治療法や研究成果が発表されることが期待されており、適切な情報収集が大切です。
本コラムで紹介した情報を参考にし、次の一歩を踏み出してください。

快適医療ネットワーク理事長

監修 上羽医院院長
上羽 毅(医学博士)

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に 上羽医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。 京都府京都市 上羽医院 http://www.uehaiin.com/