• 2024.10.28
  • 肺がん

知っておきたい肺がんの診断・治療方法まとめ

肺がんは、日本で最も多くの患者が発生するがんのひとつです。診断や治療方法が多岐に渡るため、患者や家族にとっては適切な選択が難しいこともあります。しかし、肺がんに関する情報を理解し、適切な治療法を選択することが、治療効果を最大化し、予後を改善する重要なポイントです。
本コラムでは、肺がんの病期やステージごとの治療法から、外科手術、放射線療法、化学療法、免疫療法などの各種治療手段、さらには診断や再発時の対処法まで、幅広く解説しています。肺がん治療の全体像を理解し、自分や家族の病状に適した治療法を選択する助けになれば幸いです。

1.肺がんの病期とステージごとの治療

肺がんの治療は、病期やステージによって適切な治療法が異なります。
これにより効果的な治療が行われ、患者さんの生活の質も向上します。
まずは病期やステージを正確に診断し、その結果に基づいて治療法を選択します。
ここでは、肺がんの病期とステージごとの治療法について詳しく見ていきましょう。

早期肺がん(ステージ1~2)

早期肺がん(ステージ1~2)は、がん細胞が肺の一部や近くのリンパ節にしか広がっていない状態です。
この段階では、手術や放射線療法が最も効果的な治療法とされています。
手術では肺葉切除術や肺切除術が行われ、がん細胞を完全に取り除くことが目的です。
しかし、手術が困難な場合や患者さんの全身状態が不安定な場合は、放射線療法が選択されることがあります。
放射線療法では、がん細胞に放射線を照射し、細胞を破壊して治療を行います。
また、標的治療薬や免疫療法も併用されることがあります。

 

局所進行肺がん(ステージ3)

局所進行肺がん(ステージ3)は、がん細胞が肺や近くのリンパ節以外にも広がっている状態です。
この段階では、化学療法(抗がん剤)や放射線療法、標的治療薬、免疫療法などの組み合わせが一般的な治療法です。
手術が可能な場合は、化学療法や放射線療法と併用し、効果的にがん細胞を減らすことが目的です。
しかし、手術が困難な場合や患者さんの健康状態が不安定な場合は、非外科的な治療法が選択されます。
また、症状緩和を目的とした治療法も行われることがあります。

 

転移性肺がん(ステージ4)

転移性肺がん(ステージ4)では、がんの進行を抑えることと症状の緩和が治療の目的となります。主な治療法は、化学療法、標的薬療法、免疫療法の3つです。
化学療法は、全身に作用する薬物を用いてがん細胞を攻撃する方法で、効果が現れるまでの期間が短いため、進行が早いケースに適しています。ただし、副作用が強く、全身の状態が悪い患者には適さない場合があります。
標的薬療法は、特定の遺伝子変異を持つがん細胞に働く薬物を用いることで効果を発揮します。遺伝子検査で対象となる遺伝子変異が確認された場合に選択されることが多いです。
免疫療法は、患者自身の免疫力を活用してがん細胞を攻撃する方法で、一部の患者に効果があることが確認されています。

2.肺がんにおける治療

肺がんの治療は、がんの進行具合や患者の全身状態によって選択されます。治療手段の一覧は、外科手術、放射線療法、化学療法、標的薬療法、免疫療法です。
外科手術は、腫瘍を切除する方法で、進行が遅いケースに適しています。
放射線療法は、がん細胞に照射して死滅させる方法で、手術が難しい場合や再発防止などに用いられます。
化学療法は、全身に作用する薬物での治療で、早期の進行を抑えることが目的です。
標的薬療法は、特定の遺伝子変異を持つがん細胞に働く薬物で治療を行います。
免疫療法は、患者自身の免疫力を活用してがん細胞を攻撃する方法です。

外科手術の種類と選択基準

肺がんの外科手術には、肺切除(全摘、生摘)、肺葉切除、気管支切除などがあります。
選択基準は、腫瘍の大きさ、位置、リンパ節転移の有無、患者の全身状態などが考慮されます。手術の適応範囲は、肺がんのステージや組織型によって異なります。
適切な手術方法を選択するために、事前に検査や診断が行われます。

 

放射線療法の適用状況と副作用

放射線療法は、局所進行性病変に適用されることが多く、手術が困難な患者や再発防止のために行われます。副作用としては、急性期には皮膚炎、食道炎が起こることがあり、遅延期には肺炎、肋骨骨折などがあります。副作用のリスクを最小限に抑えるために、治療計画や線量の調整が行われます。

 

化学療法と分子標的薬の選択

肺がん治療の一つとして、化学療法や分子標的薬が存在します。これらの選択は患者の状態やがんの種類、ステージによって異なります。
化学療法はがん細胞を直接攻撃し、全身に転移している可能性があるがん細胞も対象とします。ただし、副作用が出やすいため注意が必要です。分子標的薬は特定の遺伝子変異や分子標的に作用し、副作用が比較的少ないとされています。
選択にあたっては、がんの種類や遺伝子変異の有無、腫瘍の大きさ、リンパ節への転移、全身状態など様々な要素を考慮する必要があります。医師はこれらの情報をもとに、患者に合った治療法を選択します。
また、治療効果や副作用の状況に応じて、治療方法を変更することもあります。患者は医師とよく相談し、適切な選択肢を見極めることが大切です。

 

免疫療法の可能性

近年、免疫療法が注目されており、肺がん治療の一つとして期待されています。
免疫療法は、がん細胞と健康な細胞の違いを利用し、患者自身の免疫機能を活性化させてがん細胞を攻撃します。特に、免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる薬物が期待されています。
これらはがん細胞が免疫細胞から逃げるのを阻止し、免疫システムを活性化させます。
免疫療法は化学療法や分子標的薬と比べ、副作用が比較的少ないとされています。また、一部の患者においては、従来の治療法では期待できなかった効果が得られることが報告されています。
ただし、免疫療法はまだ治療効果が確立されていないため、患者個々の状況によって利用できるかどうかが異なります。医師との相談のもと、治療方針を決定することが重要です。

3.肺がん患者に必要な検査・診断方法

肺がん患者の診断には、様々な検査や診断方法が必要です。まず、症状やリスク因子をもとに疑いがあれば、胸部X線やCT検査で病変の有無を確認します。次に、細胞診検査や組織診検査を行い、肺がんであるかどうかを確定させます。
また、肺がんのステージ分類や治療方針決定にはリンパ節転移や転移性病変の有無を調べます。これにはPET-CTやMRIなどの画像検査が用いられます。
さらに、遺伝子検査を行い、がん細胞の遺伝子変異を調べます。これにより、分子標的薬への反応や免疫療法の適応が明らかになります。
これらの検査・診断方法を通して、患者に最適な治療法を選択することが可能となります。

遺伝子検査と画像検査

肺がんの診断において、遺伝子検査と画像検査は重要な役割を果たします。遺伝子検査では、がん細胞に特定の遺伝子変異があるかどうかを調べ、分子標的薬や免疫療法の適応を判断します。
一般的に用いられる画像検査には、胸部X線、CT、PET-CT、MRIがあります。これらを組み合わせることで、病変の大きさや形、位置、リンパ節への転移の有無、他の臓器への転移の有無など、肺がんの全体像を把握することができます。
遺伝子検査と画像検査を適切に行うことで、患者に最適な治療法や治療の進行状況を把握し、予後の改善に繋げることが期待できます。

 

リンパ節転移の評価と状態判断

リンパ節転移は肺がんの進行を示す重要な指標であり、正確な評価と状態判断が治療方針を決定する上で必要不可欠です。リンパ節転移の有無を調べる検査方法には、CTやPET-CTなどの画像検査が一般的に使用されます。
患者のリンパ節転移の状態により、適切な治療選択が重要です。手術が可能な局所進行の肺がんでは、リンパ節の切除を含む外科手術が第一選択となります。一方、手術が難しい場合や転移範囲が広範囲の場合は、放射線療法や化学療法、標的治療薬を用いた全身治療が行われます。
最終的に、医師と患者がリンパ節転移の状態や全身状況を考慮し、最良の治療方針を選択することが求められます。

4.再発・転移性肺がんへの対処法

再発・転移性肺がんの治療は、個々の患者の状態やがんの進行具合に応じて選択されます。再発・転移性肺がんに対する対処法としては、以下のものがあります。

・再手術: 切除可能な局所再発の場合や一部の転移性肺がんの場合
・放射線療法:再発部位への照射を行い、腫瘍の縮小を図る
・化学療法:全身治療として使用し、再発や転移部位からのがん細胞の拡散を抑える
・標的治療薬:遺伝子変異を持つ肺がんであり、効果が期待できる場合
・免疫療法:体内の免疫細胞を活性化させ、がん細胞を攻撃する

対処法の選択は患者の全身状態やがんの種類、転移部位などを考慮して医師と相談し、適切な治療が選択されます。

再発時の治療選択と緩和ケア

再発肺がんの治療選択は、病状や患者の希望、治療歴などを総合的に判断して決定されます。再発時の治療は、再手術、放射線療法、化学療法、標的治療薬、免疫療法などが選択肢となりますが、患者の状態によって最適な治療が選ばれます。
また、再発時には緩和ケアも重要な役割を果たします。緩和ケアは、がんの進行や副作用による症状緩和やQOL向上を目的とした医療であり、痛みや呼吸困難、食道症状などの対処法が含まれます。再発時には治療と緩和ケアを適切に組み合わせ、患者の生活の質向上に努めます。

 

全身治療と個別臓器への対応

全身治療は、がん細胞の拡散を抑えるために行われる手法で、化学療法や標的治療薬、免疫療法などが用いられます。これらの治療は、複数の臓器に転移した場合でも効果が期待できます。
個別臓器への対応は、再発・転移が特定の臓器に限定されている場合に行われる治療です。例えば、脳や骨への転移に対しては放射線療法や局所切除が適切な対応となります。
全身治療と個別臓器への対応を適切に組み合わせることで、効果的な治療が実現されます。

5.まとめ

肺がん治療の達成目標は、がんの進行を抑え、患者の生存期間の延長と生活の質向上を図ることです。適切な治療選択と緩和ケアの実施により、患者にとって最善の治療成果が期待できます。全身治療と個別臓器への対応を組み合わせることで、効果的な治療が実現されます。
最後に、最近の肺がん治療は急速に進化しており、新たな治療法や療法の組み合わせが継続的に検討されています。今後の治療法の進歩に注目し、医師と十分な相談を行い、治療計画に取り組むことが重要です。
また、専門医療機関や病院のサイトなどを参照し、最新の情報を取得することが望ましいです。

快適医療ネットワーク理事長

監修 
医学博士 上羽 毅

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。