- 2023.12.04
- 胆管・胆嚢がん
胆管がんのステージ・治療・症状・余命などについての解説
胆管がんは、膵臓がんと並んで難治がんの一つとされており、改善が非常に困難な病気であると広く知られています。早期発見が難しく、診断時にはすでに進行していることが多く、手術が適応にならないケースも珍しくありません。また手術後の再発率も高く、有効な抗癌剤も少ないため、治療選択肢が限られることが多いのが現状です。胆管がんの生存率は、病状の進行具合を示すステージによって大きく異なりますが、特にステージが進行するにつれて生存率が一気に低下する傾向が見られます。
ステージⅠ:5年生存率は約50%程度と比較的良好です。
ステージⅡ:5年生存率は約30%程度です。
ステージⅢ:5年生存率は約25%程度でさらに低下します。
ステージⅣ:生存率は一気に低下し、5年生存率は僅か5%程度と非常に厳しい状況です。
特にステージⅢ・Ⅳの胆管がんにおいては、腫瘍の進行に伴い、周囲の臓器への浸潤や遠隔転移が生じるため、治療が一段と難しくなります。このような状況では、病気の進行を遅らせる治療や症状の緩和を目指すことが主となります。余命については、ステージや個人差によって大きく変わるため、一概には言えませんが、上記の生存率からも分かるように、ステージが進行するほど予後不良であることは明らかです。
以上のことから 胆管がんの治療においては、ステージ別の生存率を踏まえ、病院の治療だけでなく、他の方法も積極的に取り入れることが望ましいと言えます。このようなアプローチが、胆管がん患者の生存率向上に繋がることが期待されます。
そこで私たちは胆管がん治療の改善向上に値する治療情報を発信し、胆管がんを克服に導くお手伝いをしています。
では胆管がんについて解説していきます。
【1】胆管がんとは
胆管は肝臓で作られる胆汁を十二指腸まで導く導管です。肝臓の中を走る肝内胆管と、肝臓の外に出てから小腸までの肝外胆管に分けられます。肝臓の中から木の枝が幹に向かって集まるように徐々に合流し、肝臓から出る際に左と右の胆管(左右の肝管)が合流して一本となります。肝外胆管は長さが約8cmの細い管で、肝門部・上部・中部・下部の4つに区分されます。肝外胆管の途中で胆汁を一時的に溜め、濃縮する袋の役割を果たしているのが胆嚢(たんのう)です。これら肝内外胆管と胆嚢、十二指腸乳頭部をあわせて胆道と呼びます。その発生した部位の胆管により、肝内胆管がんと肝外胆管がんの2種類に分けられます。一般に「胆管がん」という場合は、主に肝外胆管に発生したがんを指し、肝内胆管がんは肝臓にできたがんとして、取り扱われます。
【2】胆管がんの症状
1.黄疸
胆管はがんができることによって狭く細くなり、ついには閉塞し胆汁が流れなくなります。閉塞した部分より上流(肝臓側)の胆管は、圧が上がってダムの上流の川幅が広くなるように拡張します。さらに圧力が上昇すると、胆汁が胆管から逆流して血管の中に入るようになり、黄疸が現れます。(閉塞性黄疸)
2.白色便
胆汁が腸内に流れてこなくなるとビリルビンが便に混ざらなくなり、便の色が白っぽいクリーム色になります。日本人は黄色人種のため、黄疸の程度が軽いうちは気がつかず、便の色が白っぽいことで最初に気がつくこともあります。
3.黄疸尿
血液中のビリルビン濃度が高くなると尿中に排泄されるようになり、尿の色が茶色っぽく濃くなります。
4.かゆみ
胆汁の中にはビリルビンのほかに胆汁酸という物質も含まれており、これが血管内に逆流すると皮膚のかゆみの原因となります。
【3】胆管がんの検査
胆管がんの疑いがある場合、以下のような検査を行い、最終的に診断を行います。
1.超音波検査
胆管の拡張を調べるのに適しており、外科的処置が必要な閉塞性黄疸かどうかの判断にとても有用です。がんで胆管が塞がると上流の胆管が太くなるため、その拡張の仕方を見ることで胆管の閉塞部を推測できます。また、ある程度かたまりとしての腫瘍をとらえることができます。外来で手軽に行うことができ、苦痛も全くありません。
2.CT(コンピュータ断層撮影)
腫瘍の存在部位や拡がり、胆管の壁に厚みがないかを調べることができます。がんの場所やどれくらい広がっているのか、リンパ節への転移なども確認します。また、造影剤を用いることで、腫瘍がどの程度周囲の血管に浸潤しているかの判断の一助にもなります。
3.MRI(磁気共鳴画像)
CTと同様に胆管の拡張や病変の存在部位・拡がりを診断できますが、CTよりもがんと正常な組織の違いを区別することに長けています。それぞれの情報を組み合わせて診断の参考とします。
4.PTC(経皮経肝胆管造影)
胆道が閉塞している場合に、太くなった上流の胆管に直接針を刺し、造影剤を注入する方法です。胆管の狭窄(きょうさく)・閉塞の様子が詳しくわかり、腫瘍の存在部位や拡がりの診断に有用です。同時に黄疸の治療として、胆管が塞がれて下流に流れなくなった胆汁を身体の外に導出する処置も行うのが普通です。これをPTCD(経皮経肝胆管ドレナージ術)といいます。取り出した胆汁の中のがん細胞の有無を調べることでがんの確定診断に有用です。
5.ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影法)
細い管を胆管内に挿入し、造影剤を注入して胆管や膵管の形を調べる方法です。PTCとは逆に、詰まっている部分より下流の情報が主に得られます。PTCと併用することで、狭窄・閉塞部位についてより詳しい情報が得られます。
6.血管造影検査
手術の前に肝臓や周辺の臓器などが浸潤されていないか、また走行異常がないかを診断するために行います。脚の付け根の動脈から細いカテーテルを挿入しそれを肝臓や膵臓に分布する動脈まで進め、そこから造影剤を注入します。血管が腫瘍によって浸潤を受けると締め付けられて狭窄したり、詰まってしまったりしますが、その様子を直接描出することができます。血管の走り方や枝分かれの仕方はひとりひとり違います。胆管がんのような、リンパ節や神経組織を血管に沿って切り取る手術の場合には大変有用な情報を提供します。
【4】胆管がんのステージ
胆管がんの進行度は、肝門部領域と遠位胆管でそれぞれI期からIV期までの4段階のステージで示します。
肝門部領域がん
Ⅰ期 がんの広がりが胆管内に留まっており、リンパ節や他の臓器への転移、播種などがない状態
Ⅱ期 がんが胆管壁外に達しているが、肝臓以外には浸潤しておらず、リンパ節転移のない状態
ⅢA期 がんが片方の門脈あるいは肝動脈に浸潤しているが、リンパ節転移のない状態
ⅢB期 がんが片方の門脈分枝あるいは肝動脈に浸潤しており、近傍のリンパ節に転移している状態
ⅣA期 がんが左右の門脈分枝や肝動脈に浸潤したり、片側の肝内胆管二次分枝とその対側の門脈や肝動脈に浸潤している状態
ⅣB期 がんが遠隔転移している状態
遠位胆管がん
ⅠA期 がんの広がりが胆管内に留まっており、リンパ節や他の臓器への転移、播種などがない状態
ⅠB期 がんが胆管壁外に達しているが、他の臓器には浸潤しておらず、リンパ節転移のない状態
ⅡA期 がんが周囲臓器(胆嚢、肝臓、膵臓、十二指腸等)や静脈系の大血管(門脈本幹、上腸間膜静脈、下大静脈)に浸潤しているが、リンパ節転移のない状態
ⅡB期 がんの本体はⅡA期までの状態で、近傍のリンパ節に転移している状態
Ⅲ期 がんが主要な動脈(総肝動脈、腹腔動脈、上腸間膜動脈)に浸潤している状態
Ⅳ期 がんが遠隔転移している状態
【5】胆管がんの治療
1.外科療法
肝外胆管の周囲には門脈や肝動脈のような重要な血管があります。そのため、手術においてはどの程度までがんが広がっているのかという点が重要になります。胆管の手術は、胆管だけでなくその周囲のリンパ節も含めて切除するのが基本になります。
(1)肝門部胆管と上部胆管にできたがん
肝門部は胆管や血管が肝臓に出入りする場所であり、この場所に発生したがんは肝臓方向に進行することが多くなります。そのため、この場所の腫瘍を切除するには、かなり限局している場合を除いて、肝臓の左右どちらか半分、または中央を切除し、できるだけ根治的な切除を目指します。
(2)下部胆管にできたがん
膵臓に近接しているので、胆管の切除に加えて膵臓の一部を一緒にとる必要があります。
(3)中部胆管にできたがん
基本的には膵頭十二指腸切除が行われますが、他にも肝外胆管切除や肝膵十二指腸切除などの色々な術式があります。
胆管がんの手術はいずれの場合でも大掛かりなものとなり、重要な臓器を扱うことになるため術後の合併症の発生も多くなります。そのため、がんの拡がりに応じて安全かつできるだけ根治的な術式が選択されます。
2.放射線療法
手術を施行した場合、肉眼的には取りきれていても顕微鏡で確認するとがん細胞が残っていたり、再発してしまったりということがあります。そのため、補助療法として放射線治療を用いて術後に治療を行うことがあります。また、痛みの緩和を目的として行う場合もあります。
3.化学療法
手術不能、または手術後に再発した場合の胆管がんに対する抗がん剤治療は、標準的にはゲムシタビン+シスプラチン併用療法とされています。ほか、ティーエスワンも用いられることが多く、ゲムシタビン+シスプラチン+ティーエスワン併用療法や、ゲムシタビン+ティーエスワン併用療法も有効と言われています。また、高齢者の場合はゲムシタビンやティーエスワンを単剤で使用するなど、患者の体力・体調と病状に合わせて使い分けられています。
【6】胆管がんのステージ別治療
I~II期 外科療法を行います。
III期 可能ならば外科療法を行います。病巣の拡がりが大きく、外科療法では病巣の除去が不完全な場合は、外科療法と放射線療法を組み合わせることもあります。種々の理由により切除が不可能な場合は、放射線療法や化学療法を単独で、または組み合わせて行います。
IV期 化学療法が中心となりますが、症状改善のために放射線療法が有用なこともあります。
快適医療ネットワーク理事長
監修
医学博士 上羽 毅
金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。