• 2023.12.18
  • 胆管・胆嚢がん

胆嚢がんのステージ・治療・症状・余命などについての解説

胆嚢がんは、膵臓がんに次いで予後不良のがんとされています。ステージ別の生存率を見ると、特に進行したステージの胆嚢がんでは、その厳しい現状がより明確になります。

 

ステージI:がんが胆嚢の内壁にとどまっているため、5年生存率は約80%と比較的良好

ステージII:がんが胆嚢の筋層を浸潤しており、5年生存率は約60%程にやや低下

ステージIII:がんが胆嚢周辺の臓器やリンパ節にまで広がり、5年生存率は一気に約20%程まで低下

ステージIV:がんが全身に広がっており、5年生存率は約2%程と非常に厳しい状況

 

特に、ステージⅢ、Ⅳの生存率が著しく低く、治療での改善が困難であることが伺えます。患者様の余命にも影響を与える可能性が高いと言わざるを得ません。 しかし、標準治療だけではなく、他にも改善を目指す手立てが存在します。

現在では新たな治療法の開発が進められており、今後の進歩によって生存率や余命の改善が期待されています。 また、標準治療に他の方法を併用することも一つの選択肢となります。複数の治療法を組み合わせることで、より効果的な治療が可能となることもあります。よって最適な治療法を選択し、より良い結果を追求することが重要となります。

そこで私たちは胆嚢がん治療の改善向上に値する治療情報を発信し、胆嚢がんを克服に導くお手伝いをしています。

では胆嚢がんについて解説していきます。

【1】胆嚢がんとは

 

肝臓で作られた胆汁が十二指腸まで流れていく通り道の総称を胆道といい、胆嚢管という細いらせん状の管を介して、胆汁を一時的に貯留しておく袋状の部分が胆嚢です。この胆嚢および胆嚢管にできるがんを胆嚢がんといいます。

胆嚢には悪性腫瘍の胆嚢がん以外にも、良性の腫瘍が見られることが多くあります。「胆嚢に腫瘍がある=がんである」ということではありませんので、専門医による確定診断を受けることが重要です。

胆嚢・胆道がんは、発生率が低いために、疫学的な研究結果は限られています。したがって、胆嚢がんを引き起こす原因についてはっきりとした特定には至っていません。しかし、胆石症・胆嚢腺腫・膵胆管合流異常症などが関係していると言われています。

【2】胆嚢がんの症状

胆嚢がんは、早期に症状が出ることはありません。胆嚢がんが進行すると、右の脇腹の痛み・しこり、お腹の上部の痛み、食欲低下、体重減少、倦怠感などの症状が出現することがあります。さらに進行してがんが胆管を塞ぐと、行き場がなくなってしまった胆汁が血液中に流れ出し、黄疸が現れます(閉塞性黄疸)。また、胆嚢がんの進行にともなって胆嚢炎や胆管炎が起きると、発熱や消化管の出血による貧血になることもあります。ただ、これらは胆嚢がんのみに見られる特有の症状ではありません。

【3】胆嚢がんの診断

1.血液検査

胆嚢がんの初期では血液検査で異常は出ません。しかし、黄疸の症状がみられた場合は、胆道の閉塞による胆道系酵素の上昇を調べるため、血液検査が行われます。血清ビリルビンが異常高値を示し、胆道系酵素とよばれるアルカリフォスファターゼ(ALP)、ロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)、ガンマグルタミルトランスペプチーゼ(γ-GTP)が上昇しているのが特徴です。胆道の閉塞に伴い、肝機能(GOT,GPT)も異常値を示すようになります。また、腫瘍マーカーであるがん胎児性抗原(CEA)やCA19-9の数値が上昇することがあります。ただし、これらの検査はあくまで補助的な検査ですので、次の画像検査が行われます。

 

2.画像検査

手軽にできる検査として、超音波検査があります。苦痛が少なく反復して行えるので、胆嚢疾患のスクリーニングとして最適です。この検査により、最近では小さながんや早期のがんが数多く発見できるようになりました。超音波検査で胆嚢がよく見えない時や胆嚢に何らかの異常が疑われれば、CTやMRIが行われます。CTやMRI検査では、胆嚢がんの確認や、がんの周囲への進行状況、他の臓器への転移の有無などが確認されます。

次に、内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)と呼ばれる検査を行います。胆管の十二指腸への出口である十二指腸乳頭へ造影チューブ(細い管)を挿入していき、そこで内視鏡の先端から造影剤を注入して、胆管をX線撮影する検査です。さらに、手術を予定している場合には血管造影が行われ、胆嚢がんの肝動脈や門脈への拡がりの有無を調べます。

【4】胆嚢がんのステージ

I期         がんが胆嚢の中にとどまっている状態

II期       がんが胆嚢壁内にとどまっているが、胆嚢の漿膜(しょうまく)下層、または肝臓として接している場合に細胞へと浸透がある状態

III期      がんが胆嚢壁の外に出ており、リンパ節転移や肝臓や胆管側への浸潤があるが、遠隔転移はない状態

IV期      がんが胆嚢以外の他臓器や主要な血管へ浸潤しているが遠隔転移はない状態。またはリンパ節転移があり、肝臓などへも深く浸潤し、遠隔転移もある状態

【5】胆嚢がんの治療

胆道がんの唯一の根治的治療法は切除手術のみです。したがって、手術を行うのが第一の方法です。早期がんであれば、胆嚢の摘出のみでほぼ根治を得ることができます。しかし、胆嚢を越えて隣接する臓器に浸潤していた場合は再発のリスクも高くなります。手術の方法やどのように切除するかは、がんの進行度や、がんの深さ、リンパ節への転移があるかどうかで決められます。化学療法は、いまだ標準的な治療法は確立されていません。放射線治療も、手術できない場合にがんを制御するためにおこなわれてはいますが、がんを完全に消失させることは期待できません。

 

1.手術(外科治療)

(1)単純胆嚢摘出術

I期の胆嚢がんでは、腹腔鏡を使い胆嚢を摘出するのが標準的です。胆嚢ポリープの診断を受けて摘出し、病理診断でがんが判明した場合、ステージがⅠ期であれば基本的に追加の切除は必要ありません。

 

(2)拡大胆嚢摘出術

II期以上の胆嚢がんの疑いがある場合に行われることが多い術式です。胆嚢とともに、隣接する肝臓の一部や周りのリンパ節を一緒に切除します。がんの進展度によっては総胆管を一緒に切除することもあります。

 

(3)それ以上の拡大切除

病期III、IVの場合には、病変の状態によっては以下の術式が採用されることがあります。

・肝葉切除

胆嚢がんが広範囲の肝臓に浸潤していた場合や、総胆管側に明らかに浸潤している場合は、肝臓の右葉を主に切除する必要があります。周りのリンパ節の切除や胆管の切除を行ったうえで、さらにそれらの臓器を再建することになります。

 

・膵頭十二指腸切除

胆嚢がんは膵臓周囲のリンパ節に転移することも多く、術前に明らかに転移を認める場合や、十二指腸や膵頭部に強い浸潤を認める場合には、膵頭十二指腸切除が行われることがあります。その場合、膵臓の頭部、十二指腸、リンパ節、胆嚢や胆管が大きく切除されます。

 

2.抗がん剤による化学療法

外科的切除が難しい場合や、切除後に再発した場合に化学療法を行います。主な薬剤としては、ゲムシタビン・シスプラチン・ティーエスワンなどがあります。現状、化学療法のみでがんを完全に治すことは困難とされています。しかし、がんの進行自体を押さえ込むことによって、生存期間の延長や症状の緩和が可能になります。また、根治を目的として、手術の後に抗がん剤治療を行うこともあります。

 

3.放射線療法

胆嚢がんに対する放射線療法は、単独での根治は難しく、術後や手術不能時、または症状の緩和を目的に行われることが多いです。治療の効果を底上げするために、抗がん剤治療を併用する場合もあります。

快適医療ネットワーク理事長

監修 
医学博士 上羽 毅

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。