• 2025.12.24
  • 食道がん

食道がんの症状とは?初期の違和感からステージ別の特徴を解説

食道がんは、初期の段階でははっきりとした自覚症状が出にくいことが知られています。しかし、例えば食事の際に喉が詰まるような感覚や、胸の奥にわずかなしみるような痛みを感じることはありますか。生活の中で感じるちょっとした体調の変化に気付くことで、早期の発見につながる可能性が高まります。

食道がんについて正しい知識を持つことは、適切な治療を選択し、生活を前向きに送るための大切な基盤となります。このコラムでは、食道がんが疑われる際に出やすい初期の違和感から、病状の進行度合いを示す各段階ごとの特徴まで、分かりやすく解説します。

ご自身やご家族が今どのような状態にあるのか、そして今後どのような歩みが必要になるのかを、一緒に確認していきましょう。
まずは焦らず、現状を知ることから始めてみてください。
このコラムが、皆様の不安を軽くし、健やかな毎日を取り戻すための一助となれば幸いです。

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1. 食道がんの症状とは

食道がん1

食道がんは、のどから胃へと飲食物を運ぶ一本の管である食道の、内側の表面を覆う粘膜から発生する疾患です。
食道は、内側から表面の上皮、その下の粘膜固有層、そして粘膜筋層、さらに深い部分にある粘膜下層、固有筋層、そして一番外側の外膜という複数の層で構成されています。
日本人に発生する食道がんの約九割以上は、この上皮の部分から発生する「扁平上皮がん」と呼ばれる種類です。

この病気の原因には、生活習慣が深く関係しています。
特に日本人において大きな要因とされているのが、お酒の摂取と喫煙です。
お酒に含まれるアルコールが体内で分解される際、アセトアルデヒドという物質が発生します。
このアセトアルデヒドには強い発がん性物質としての側面があり、特にお酒を飲んで顔が赤くなりやすい体質の人は、この物質を分解する力が弱いため、食道がんが発生するリスクが高くなるといわれています。
また、近年では欧米で多い「腺がん」という種類も増えており、これは逆流性食道炎などが原因で食道の下の部分が胃のような粘膜に置き換わる「バレット食道」という状態から発生します。

食道がんの怖さは、初期の段階では自覚症状が乏しく、自分ではなかなか気づけない点にあります。
食道の壁には血管やリンパ管が網目状に広がっており、がんが粘膜の下にある層にまで深く進んでいくと、それらの流れに乗って周りのリンパ節や、肺、肝臓といった他の臓器へ広がる可能性があります。
そのため、日頃から自身の体調の変化を敏感に察知し、必要に応じて医療機関で検診や検査を受けることが、早期発見と適切な治療、そして外科的な処置による完治への近道となります。

 

食道がんの初期症状は?

食道がんの初期段階において、最も注意すべきサインは「しみる」という感覚です。
熱い飲み物や酸味の強いもの、あるいはアルコール度の高いお酒を飲んだ際に、のどや胸の奥がチリチリとしみるような違和感を覚えることがあります。
これは、がんによって食道の表面の粘膜が荒れ、過敏になっているために起こる一時的な症状です。

また、飲食物を飲み込んだときに「喉がつかえる」感じがすることもあります。
初期の段階では、食べ物が完全に通りにくくなるわけではなく、なんとなく胸のあたりにとどまるような、あるいは食べ物の流れがわずかに滞るような、言葉にしにくい感覚であることが一般的です。
これを一時的な疲れや、加齢による飲み込みの力の衰えと考えて見過ごしてしまう人が少なくありません。

さらに、胸の痛みや背中の痛み、のどの違和感などが現れることもあります。
これらは食道がん特有の症状ではないため、逆流性食道炎や胃潰瘍、胃がんといった他の疾患の可能性も考えられますが、自己判断は禁物です。
特に、市販の薬を飲んでも症状が改善しない場合や、違和感が数週間続く場合は、専門の外来がある病院や近所のクリニックを受診することをお勧めします。

最近では、胃がん検診などの際に内視鏡検査(胃カメラ)を行うことで、症状が出る前の非常に小さな病変やポリープ、あるいは粘膜の色がわずかに赤く変化した部分を見つけることが可能になっています。
そのため、定期的な検査を心がけることが大切です。

 

食道がんの進行による症状

食道がんが進行すると、がんが大きく成長して食道の内側が狭くなるため、自覚症状がよりはっきりと現れるようになります。
最も代表的な症状は、嚥下障害、つまり食べ物のつかえ感の悪化です。最初は肉や固い食べ物が通りにくくなり、次第に柔らかい食べ物や、ひどくなると水などの水分さえも飲み込みにくくなります。

このように十分な栄養や水分を体内に取り込めなくなると、当然ながら体重が大きく減少します。
特に短期間で数キログラム単位の体重減少が見られる場合は、注意が必要です。
また、がんが食道の壁を突き抜けて外側に広がっていくと、周囲にある重要な臓器に影響を及ぼし始めます。

食道のすぐそばには、肺へ空気を送る気管や気管支、血液を全身に送る大動脈、そして心臓といった生命維持に欠かせない臓器が隣接しています。
がんが気管にまで及ぶと、激しい咳が出たり、食道と気管がつながる道ができてしまって誤嚥性の肺炎を起こしたりすることがあります。
さらに、声を調節する神経をがんが巻き込むと、声がかすれる「嗄声」という症状が現れます。

胸や背中の深い部分に持続的な痛みを感じるようになるのも、進行期のサインの一つです。
これはがんが大動脈や背骨に近い組織を圧迫したり、侵食したりすることで起こります。
こうした段階になると、食事の楽しみが奪われるだけでなく、日常生活全般に支障が出てきます。
しかし、このような状態であっても、現在の医療では化学療法や放射線治療、緩和ケアなど、痛みや苦痛を取り除きながら病気と共存する方法が数多く存在します。

 

ステージ別の症状とは

食道がんは、がんがどれくらい深く食道の壁に入り込んでいるか、そしてリンパ節や他の臓器にどれくらい広がっているかによって、ステージ(進行度)が分類されます。
このステージによって、現れる症状の種類や程度も異なります。

・ステージ0からステージIの早期段階
がんはまだ粘膜の上皮やそのすぐ下の層にとどまっています。
この時期は自覚症状がほとんどないか、あっても「食べ物がしみる」程度の軽い違和感であることが多いです。
検診などで偶然見つかるケースが多いのも、この段階の特徴です。

・ステージⅡからステージⅢの中期段階
がんは固有筋層という筋肉の層を越えて、食道の外側にある外膜にまで達したり、近くのリンパ節に転移したりします。
この時期には、食べ物のつかえ感が常態化し、胸の奥に痛みや圧迫感を感じることが増えてきます。
がんが頸部(首のあたり)や腹部のリンパ節まで広がると、首の付け根が腫れるといった変化が見られることもあります。

・ステージⅣの状態
がんが食道の壁を完全に超えて、先ほど述べた気管や大動脈などの隣接する臓器に直接入り込んだり(浸潤)、血液の流れに乗って肺や肝臓、あるいはさらに遠くのリンパ節にまで広がったりしています。
この段階では、嚥下障害による極度の栄養不足や、転移した先の臓器の機能障害による全身の倦怠感、息切れ、腹部の張りといった多様な症状が出現します。

食道がんと似たような症状を呈する疾患には、過敏性腸症候群や腸炎による下痢、あるいは便潜血検査で陽性が出る大腸の病気などもありますが、食道に関しては上部消化管の検査が不可欠です。
ご自身やご家族が、喉や胸に少しでも「おかしいな」と感じる部分があれば、それが一時的なものだと決めつけず、まずは医療機関の窓口に相談する勇気を持ってください。
早期の対応こそが、健やかな日常を守るための最も確実な手段となります。

 

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2. 食道がんの検査と診断

 

食道がん2

食道がんが疑われる場合、あるいは検診で指摘を受けた際に行われる検査は、大きく分けて二つの目的があります。
一つは「本当にがんがあるのかどうか」を確認すること、もう一つは「がんがある場合、どこまで広がっているか(ステージ)」を正確に把握することです。
食道はのどから腹部へと続く細長い臓器であり、周囲には心臓や大動脈、気管といった生命に関わる重要な組織が隣接しています。
そのため、精密な検査によって病変の深さやリンパ節への流れ、他臓器への転移の有無を調べることが、その後の治療方針を決定する上で非常に重要となります。

検査の多くは、一般的に胃がんや胃潰瘍の有無を調べる際に行われるものと共通しており、多くのクリニックや病院で実施されています。
現代の医療技術の進歩により、以前に比べて格段に小さな病変も見つけやすくなっています。
検査を受けることへの不安を感じる人も多いかと思いますが、まずは専門の医師による案内をよく聞き、自身の状態を正しく知るための第一歩として捉えていきましょう。

 

食道がんの検査方法

食道がんの診断において、目的に応じて組み合わされる主な検査方法は以下の通りです。

内視鏡検査は、食道の内部を直接カメラで観察するもので、がんの有無を確認するための最も基本的な検査です。
また、食道の形や飲食物の通り具合を確認するために、バリウムなどの造影剤を飲むX線透視検査が行われることもあります。
これは食道の全体像や、がんによる狭窄の程度を把握するのに役立ちます。

次に、がんの疑いがある場所から組織の一部を採取する生体組織検査(生検)が行われます。
採取された細胞を顕微鏡で詳しく調べることで、がんの種類が日本人に多い扁平上皮がんであるか、あるいは逆流性食道炎と関係の深い腺がんであるかといった確定診断が下されます。

さらに、がんが食道の壁のどの層まで深く入り込んでいるか、周囲のリンパ管や血管、リンパ節に広がっていないか、あるいは肺や肝臓など遠くの臓器に転移していないかを調べるために、CT検査やMRI検査といった画像診断が行われます。
これに加えて、全身のがん細胞の活動を捉えるPET検査が併用されることもあります。
これらの多角的な検査を組み合わせることで、首の頸部から胸部、腹部に至るまでの広範囲な領域を詳細に評価し、最適な外科的な術式や治療計画を立てることが可能になります。

 

内視鏡検査

食道がんの診断において重要視されているのが内視鏡検査です。
いわゆる「胃カメラ」と同じもので、口や鼻から細い管を挿入し、食道の表面を直接モニターで確認します。
食道がんは初期段階では粘膜の表面がわずかに赤くなったり、平坦なポリープのような形をしていたりするため、通常の観察だけでは見落とされることもあります。

そこで現在では、特定の光を当てることで血管の分布を強調するNBI(狭帯域光観察)という技術や、ルゴール液という染色液を散布してがんの部分を白く浮かび上がらせる手法が一般的に用いられています。
食道の表面を覆う上皮にがんがあると、そこはルゴール液で染まらないため、非常に小さな病変であっても発見しやすくなります。
このとき、一時的にのどや胸のあたりがしみるような感覚を覚えることがありますが、検査を安全に進めるための大切な過程です。

内視鏡検査の大きな利点は、その場で組織を採取できる点にあります。
また、超音波装置がついた特殊な内視鏡を用いる「超音波内視鏡検査」を行えば、がんが粘膜下層やその下の筋層までどれくらい深く達しているかをミリ単位で測定できます。
早期の食道がんであれば、内視鏡を用いた切除術だけで完治を目指せる場合もあり、この検査による正確な診断が極めて重要となります。

 

画像診断

内視鏡検査で食道の内側の状態を確認した後は、画像診断によって食道の「外側」や「全身」の状態を調べます。
食道は胸の中央、背骨の前という深い場所に位置しており、すぐ近くには全身に血液を送る大動脈や、呼吸を司る気管・気管支、そして心臓があります。
がんが大きく成長し、食道の外膜を越えてこれらの臓器にまで及んでいないかを確認するために、CT検査は欠かせません。

CT検査はX線を用いて体の断面を撮影するもので、短時間で広範囲を調べることができます。
造影剤という薬を静脈から注射して撮影することで、がんの大きさやリンパ節の腫れ、血管との位置関係をより鮮明に描き出します。
一方、MRI検査は磁気を利用した検査で、特に頸部や腹部の軟部組織の状態を詳しく診るのに適しています。

これらの画像診断によって、がんの進行度(ステージ)が判明します。
例えば、がんが食道内にとどまっているのか、あるいは肺や肝臓にまで広がっているのかといった情報は、手術を行うべきか、あるいは化学療法や放射線治療を優先すべきかを判断する決定的な根拠となります。

 

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3. 食道がんの治療法とは

食道がん3

食道がんの診断が確定した後、次に進むべきは治療法の選択です。
治療方針は、これまでの検査で明らかになったがんの進行度、すなわちステージに基づき、患者さんの全身状態や年齢、ご本人の希望などを総合的に判断して決定されます。
食道は体の中心部に位置し、周囲に心臓や大動脈、気管、背骨といった重要な臓器や組織が密集しているため、治療には高度な専門性が求められます。

主な治療の柱となるのは、外科的な手術、放射線治療、そして抗がん剤を用いる化学療法の三つです。
これらを単独で行うこともあれば、複数の治療を組み合わせて行う集学的治療が選択されることもあります。
例えば、日本人、特に男性に多い扁平上皮がんの場合と、逆流性食道炎などが原因で発生する腺がんの場合では、治療の細かな検討事項が異なる場合もあります。

大切なのは、ご自身が受ける治療の目的が、がんを完全に取り除く根治を目指すものなのか、あるいは症状を押さえて生活の質を維持するためのものなのかを正しく理解することです。
医師から治療の案内を受ける際は、メリットだけでなく副作用や合併症のリスクについても十分に説明を聞き、納得した上で選択することが大きな安心感へと繋がります。

 

ステージ別の治療法

食道がんの治療法を決定する最大の基準はステージです。
ステージは、がんが食道の壁のどの層まで深く達しているか、リンパ節への転移があるか、他の臓器へ広がっているかによって、ステージ0からステージⅣまで分類されます。

ステージ0からステージIの極めて早期の段階では、がんはまだ表面の上皮や、そのすぐ下にある粘膜固有層、粘膜筋層までにとどまっています。
この時期であれば、お腹や胸を大きく切ることなく、内視鏡を用いて食道の内側からがんを削り取る治療が検討されます。胃がんの検診などで偶然発見されたポリープ状の病変なども、この方法で対応できる場合があります。

ステージⅡからステージⅢへと進行すると、がんは食道の壁の深い層である固有筋層を越え、一番外側の外膜にまで達したり、周囲のリンパ管や血管を通じてリンパ節へ広がったりします。
この段階では、手術によって食道と周囲のリンパ節を取り除くことが標準的な治療となります。
ただし、日本での一般的な治療の流れとして、手術の前に化学療法を行って、あらかじめがんを小さくしてから術に臨む方法が広く行われています。これにより、再発を抑える効果が高まるとされています。

ステージⅣの段階では、がんが肺や肝臓、大動脈などの他臓器に転移していたり、首の頸部から腹部まで広範囲のリンパ節に広がっていたりするため、手術で全てを取り除くことが難しくなります。
この場合は、化学療法や放射線治療を中心に、全身の症状をコントロールする治療が優先されます。

 

手術や内視鏡的切除

がんを直接体から取り除く治療法が根治療法です。
その中でも、早期がんに対して行われる内視鏡的切除は、患者さんへの負担が非常に少ない治療です。
口から内視鏡を挿入し、食道の内側の粘膜にできた病変を特殊な器具で剥がし取ります。
この治療であれば、術後の回復も早く、数日から一週間程度の入院で済むことが一般的です。

一方、がんが粘膜下層より深く入り込んでいる場合は、外科的な手術が必要となります。
食道がんの手術は、消化器外科の中でも特に大きな手術の一つに数えられます。胸部にある食道を切除し、同時にがんが広がりやすいリンパ節も広範囲に切除します。
その後、食べ物の通り道を再建するために、胃を細長く作り替えてのどの方へ引き上げたり、場合によっては大腸の一部を移植したりして、新しい食道の代わりを作ります。

この手術では、心臓や肺、大動脈といった生命に直結する臓器のすぐそばを操作するため、高い技術が必要とされます。
術後は、これまでとは食事の摂り方が変わるため、栄養管理やリハビリが欠かせません。
しかし、がんを物理的に除去できる点は大きな強みです。現在では、体に開ける傷を小さくする胸腔鏡や腹腔鏡を用いた手術、さらにはロボット支援下手術も普及しており、以前よりも体への負担を軽減する工夫がなされています。

 

化学療法や放射線治療

手術以外にも、がんを攻撃する強力な手段があります。それが化学療法と放射線治療です。これらは「非侵襲的」、つまりメスを入れずに治療を行う選択肢としても重要です。

化学療法は、血液の流れに乗って全身に薬を届けるため、目に見えないほど小さな転移がある場合や、既に他の臓器に広がっている場合に有効な手段となります。
抗がん剤は、がん細胞の増殖を抑える役割を果たしますが、同時に正常な細胞にも影響を及ぼすため、吐き気や食欲不振、下痢といった副作用が出ることがあります。
最近では、特定の遺伝子を標的にする分子標的薬や、自身の免疫力を利用する免疫チェックポイント阻害薬なども登場しており、治療の選択肢が大きく広がっています。

放射線治療は、高エネルギーの線をがん病変に外側から照射して、がん細胞を死滅させる治療です。
手術が難しい高齢の人や、心臓や肺に持病があって全身麻酔がかけられない人でも受けることが可能です。
また、食道のつかえ感を改善したり、背中や骨の痛みを抑えたりするために行われることもあります。
化学療法と放射線治療を同時に行う「化学放射線療法」は、手術に匹敵する治療効果が期待できる場合もあり、喉の機能を残したいと願う患者さんにとって大切な選択肢となります。

治療の過程で、お酒(アルコール)や熱い飲食物、刺激物を控えることは、食道への負担を減らすために不可欠です。
体内でアセトアルデヒドを分解する力が弱い体質の人は特に、治療中や治療後の再発予防として生活習慣の見直しが求められます。
また、ピロリ菌との関係が深い胃がんや胃潰瘍などの他の疾患のチェック、あるいはインフルエンザなどの予防接種を含めた体調管理も並行して行い、体内環境を整えていくことが、治療を完遂させるための鍵となります。

 

食道がん克服者に学ぶ克服の秘訣

4. 食道がん患者の生活と予防

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食道がんの治療を受けた後、あるいは治療を継続しながら日常生活を送る上で、再発を防ぐための予防策は極めて重要です。
食道は飲食物が体内に最初に入る通り道であるため、治療の影響が食事や栄養状態に直接現れやすいという特徴があります。
手術を終えた後や、放射線治療、化学療法の期間中は、体力が低下しやすく、免疫力の維持が課題となります。

また、食道がんは一度治療が一段落した後でも、残った食道や他の臓器に新たな病変が発生する可能性がある疾患です。
特に日本人において、お酒を飲んで顔が赤くなる体質の人は、アセトアルデヒドという発がん性物質を分解する力が弱く、食道だけでなく頭頸部や胃など、他の領域にもがんが発生するリスクが高いことが知られています。

生活を安心して過ごすためには、ご自身の体の内側で何が起きているのかを理解し、習慣を少しずつ整えていくことが大切です。
無理に完璧を目指すのではなく、できることから一つずつ取り組んでいきましょう。

 

食道がん患者が注意すべきポイント

生活において最も心を配るべきなのは、食事の摂り方です。
食道がんの手術では、食道を大きく切除して胃などを引き上げる再建術を行うため、以前のように一度にたくさんの量を食べることは難しくなります。
また、胃が本来持っていた「食べ物を溜めて、消化液と混ぜる」という機能が変化するため、食後に胸やけがしたり、飲食物が逆流したりする逆流性食道炎のような症状が出やすくなります。

食事の際は、一口を小さくし、よく噛んでゆっくり飲み込むことを心がけてください。
一度の食事量を減らし、一日の食事を五回から六回に分ける「分割食」を取り入れることで、胃や腹部への負担を軽減できます。
また、のどや食道の粘膜は治療後、非常に敏感になっています。熱い飲み物や刺激の強いスパイス、アルコール度数の高いお酒などは、粘膜にしみる原因となり、炎症を悪化させる可能性があるため、人肌程度の温度に冷ますなどの工夫が必要です。

つかえ感や飲み込みにくさを感じる場合は、食材を細かく刻んだり、とろみをつけたりして、スムーズな流れを助ける工夫をしましょう。
栄養不足が続くと体重が減り、心臓や肺への負担も大きくなってしまいます。
もし自力での食事が難しいと感じる場合は、外来の医師や栄養士に相談し、市販の栄養補助飲料などを活用することも検討してください。

また、精神的な平穏を保つことも重要です。
がんという疾患と生きる中で、再発への不安や生活の変化に頭を悩ませることは、誰にでもある自然な反応です。
ご家族や周囲の人に今の気持ちを話したり、同じ経験を持つ人の集まりに参加したりすることで、心のつかえが取れることもあります。
もし不安が深く、夜眠れないなどの症状が続く場合は、クリニックの心療内科やカウンセリングの案内を求めるのも一つの方法です。

 

食道がんのリスクを減らすために

食道がんの再発や新たな発生を防ぐためには、生活習慣の根本的な見直しが不可欠です。
最大の要因とされるのが、お酒とタバコの両方をたしなむ習慣です。
特に日本人男性に多い扁平上皮がんのリスクは、禁煙と節酒によって大きく下げることができます。

アルコールが分解されてできるアセトアルデヒドは、食道の表面にある上皮の細胞を傷つけ、がん化を促進します。
お酒を飲む間隔を空ける、あるいは完全に断つことが理想ですが、難しい場合は専門の外来で相談しながら進めるのも良いでしょう。
また、タバコの煙に含まれる発がん性物質は、肺だけでなく、唾液に溶け込んで食道の内側を通り、直接的に粘膜を刺激します。

食事面では、新鮮な野菜や果物を積極的に摂るようにしましょう。
これらに含まれるビタミンは、細胞が酸化して傷つくのを防ぐ役割を果たします。
逆に、塩分が高すぎる食事や、熱すぎる飲食物を日常的に摂取することは、食道粘膜への継続的なダメージとなります。

さらに、適度な運動を習慣づけることは、体内の血流を良くし、免疫機能を整えるのに役立ちます。
激しい運動である必要はありません。近所を散歩したり、土曜日や日曜日の天気が良い日に少し長めに歩いたりする程度で十分です。
運動は気分のリフレッシュにも繋がり、精神的な緊張を解きほぐす効果も期待できます。

最後に、定期的な検診を欠かさないことが、万が一の際の早期発見に繋がります。
内視鏡検査で食道の表面の状態を確認したり、血液検査やCT検査でリンパ節や他臓器への広がりがないかを定期的に調べたりすることは、安心のための保険のようなものです。
胃がんの原因となるピロリ菌の有無や、胃潰瘍の病変、ポリープのチェックなど、上部消化管全体を広く診てもらうようにしましょう。

5. あとがき

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本コラムでは、食道がんという病気の症状から検査、治療、そして暮らしを支える工夫について詳しくお伝えしてきました。
がんとの生活の中では、先行きの見えない不安や、思い通りにいかない体調の変化に戸惑う瞬間も多いことと思います。しかし、現代の医療は着実に進歩しており、早期発見の精度は高まり、治療の選択肢も一人ひとりの状態や価値観に合わせて選べるようになっています。

大切なのは、正しい情報を知ることで、ご自身の体で起きていることを冷静に受け止める土台を作ることです。
医師や看護師、栄養士といった専門家は、皆様の歩みを支える心強い味方です。分からないことや不安なことがあれば、決して一人で抱え込まず、医療機関の相談窓口などを積極的に活用してください。

食事を味わう喜びや、大切な人と過ごす穏やかな時間は、何物にも代えがたいものです。本コラムの内容が、皆様の抱える不安を少しでも軽くし、生活を前向きに送るための一助となれば幸いです。

※この記事は2024年4月8日に作成され、2025年12月24日に内容を更新しました。

快適医療ネットワーク理事長

監修 
医学博士 上羽 毅

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。