- 2024.09.17
- 食道がん
知っていますか?食道がん ~原因から治療まで~
食道がんは日本人に多く見られるがんの一つであり、その原因や症状、治療法について知っておくことが大切です。
本コラムでは、食道がんの原因やリスク因子、症状の進行、検査方法、治療法まで徹底解説します。
食道がんの主な原因としては、喫煙や飲酒が挙げられますが、それ以外にも、胃食道逆流症や不健康な食生活がリスクを高めることが分かっています。
また、食道がんの初期症状として喉の違和感や咳がありますが、進行すると痛みや嘔吐が現れ、治療法の選択肢が限られます。
食道がんを早期に見つけるためには、内視鏡検査や画像検査、定期検診を受けることが重要です。そして、手術による切除が治療の主力となっており、放射線や化学療法も進行食道がんの対策として用いられます。
かつ、生活習慣の改善を行うことで、食道がんの予防、再発防止に繋がります。
このように、食道がんに関する知識と対策を理解し、適切な行動を取ることが、健康を維持するために重要です。本コラムを参考に、食道がんと向き合っていきましょう。
1.食道がんの原因とリスク因子
食道がんは、食道の内壁を覆っている平滑筋や粘膜上皮細胞が異常増殖し、腫瘍が形成される病気です。主な原因として、喫煙や飲酒が考えられますが、他にも胃食道逆流症などの症状がリスクを高めることがあります。
喫煙者は、非喫煙者に比べて食道がんのリスクが高く、タバコの有害物質が食道の粘膜を傷つけることが原因とされています。また、飲酒によるアセトアルデヒドの生成が、食道上皮細胞のDNAを損傷し、発がん性を高めるとされています。
日本人において、食道がんは特に男性に多く見られる疾患であり、食生活や生活習慣の改善が予防に繋がります。定期的な検診も早期発見に重要な役割を果たします。
喫煙と飲酒
喫煙や飲酒は食道がんの発生リスクを高める危険因子です。
喫煙は、タバコから発生するニコチンやタールなどの有害物質が直接食道内の粘膜に接触し、遺伝子変異を引き起こします。
一方、飲酒は、アルコールが胃や肝臓で分解される過程でアセトアルデヒドが生成されます。アセトアルデヒドは食道上皮細胞のDNAを損傷することで、がん化に繋がるリスクを増加させます。
これらの原因から、喫煙や飲酒を続けることで食道がんのリスクが高まるため、健康を維持するためには禁煙や適度な飲酒が推奨されます。
胃食道逆流症
胃食道逆流症は、胃酸や消化液が逆流し、食道の粘膜を刺激する症状です。この逆流によって食道が炎症を起こした状態が、逆流性食道炎です。
胃食道逆流症が持続することで、食道の粘膜が慢性的に炎症を起こし、バレット食道と呼ばれる状態に変化する可能性があります。
バレット食道は、食道がんへの変化を引き起こすリスクが高まる状態であり、胃食道逆流症により食道がんのリスクが高まると考えられています。胃食道逆流症を抑えるためには、食事や体重管理が重要であり、医師の指導に従って治療を行うことが必要です。
食道がんと関連する食べ物や習慣
食道がんは、悪習慣や食生活の影響が非常に大きい病気です。喫煙や飲酒が食道がんのリスクを高めることは前述したとおりですが、食事にも注意が必要です。過熱調理された食品や塩分、化学物質の多い食品が摂取されることにより、食道がんのリスクが上がることが指摘されています。
具体的に注意すべき食べ物には以下のようなものが挙げられます。
・焼き魚や焼き肉などの焼き過ぎた食品
(ただし、焦げに含まれる発がん性物質はごくわずかとされており、神経質になりすぎる必要はありません)
・塩辛い食品
・加工品やジャンクフード
一方で、食道がんの予防に効果的な食品も多数存在しております。野菜や果物を積極的に摂取し、ビタミンや食物繊維を豊富に摂ることが、食道がんの予防につながります。
また、適度な運動と睡眠をとることで、免疫力を高め、がん予防に働くことが期待できます。
2.食道がんの症状
食道がんは、初期から末期までさまざまな症状が現れます。
初期の食道がんでは、喉の違和感や咳、食事の時の違和感などが現れることがあります。進行すると、食べ物が食道を通りにくくなるため、食事時に痛みが生じます。食物が食道内に詰まるような感じがすることもあります。
さらに末期になると、嚥下困難や体重減少、栄養状態の低下が著しくなります。また、食道がんが周囲の臓器に転移することもあり、胸痛や呼吸困難、声帯への影響による声のかすれなどさまざまな症状が現れます。
食道がん初期症状の兆候
食道がんの初期症状としては、喉の違和感や咳が挙げられます。これらの症状は一般的に風邪などの症状と重なるため、見逃されることが多いです。しかし、これらの症状が長期間続く場合は、食道がんの可能性も考えられます。
早期発見が治療の鍵となる食道がんですが、自覚症状が少ないため、日頃から自己観察や定期的な検診を心がけることが重要です。また、食道がんのリスクが高まる喫煙や飲酒の習慣も改善し、予防に努めることが望ましいです。
食道がん進行時の症状
食道がんが進行すると、患者は痛みや嘔吐を経験することがあります。これらの症状の対処法には、以下のようなものがあります。
・痛み対策:鎮痛薬の服用や、外科手術による圧迫箇所の緩和
・嘔吐対策:抗悪心薬の使用や、食事療法の見直し
また、食道がんの治療法として、手術、放射線治療、化学療法が一般的ですが、患者の状態や進行度によって最適な治療法が選択されます。医師とよく相談し、適切な治療計画を立てましょう。
さらに、食道がんの予防策として、喫煙や過度の飲酒を避け、健康的な食事や定期的な検診を受けることが大切です。
末期食道がんの症状
末期食道がんでは、食道の狭窄や胸部痛、嚥下困難、嘔吐などの症状が見られます。診断では、内視鏡検査やバレット食道の検査、さらには画像検査が用いられます。
治療法の選択は、病気の進行度や患者の一般状態により異なりますが、一般的には手術、放射線治療、化学療法のいずれか、またはそれらの組み合わせが選ばれます。末期の場合、症状緩和や遠隔転移の抑制が重要となりますので、治療方針は十分に医師と相談しましょう。
3.食道がんの検査方法
食道がんを早期に発見するための検査方法には、次のようなものがあります。
・内視鏡検査:食道内の異常や狭窄を調べるために使用されます。
・バリウム造影検査:食道の機能や形状を確認し、狭窄や腫瘍を検出します。
・CTスキャン・MRI:周囲臓器やリンパ節への転移の有無を調べることができます。
食道がんのリスクが高い場合や症状が認められる場合は、定期的な検査が重要です。
また、喫煙や過度の飲酒が食道がんのリスクを高めることが知られていますので、これらの習慣の改善が予防につながります。
さらに、健康な食生活を心掛けることで、食道がんの発生リスクを低下させることが期待できます。
内視鏡検査
食道がんは食道内の異常を見つける効率的な方法として、内視鏡検査が使用されます。
内視鏡検査では、カメラを搭載した細長い管を口から挿入し、食道の内部を観察することが可能です。この方法によって、食道の粘膜に発生した異常な組織や病変を早期に発見でき、正確な診断ができます。
内視鏡検査では、症状がまだ自覚されていない初期の食道がんも見つけることができます。また、発見された病変の形や大きさ、位置から、食道がんの進行度を判断することもできます。
さらに、必要であれば内視鏡検査中に生検を行い、細胞レベルでの診断が可能です。これにより、良性の病変とがんの病変を区別し、適切な治療法を選択することができます。
画像検査
食道がんの診断と治療において、画像検査が重要な役割を果たします。画像検査では、がんの位置や周囲の臓器との関係を確認することができます。
また、転移の有無や広がりをチェックするために、CTスキャンやMRI、PETスキャンなどが行われます。
これらの画像検査により、適切な治療法を選択し、治療の効果を評価することができるため、食道がんの診断や治療に欠かせない検査方法です。
定期検診
食道がんの早期発見には定期検診が重要です。定期検診では、食道がんのリスクが高い人を対象に、内視鏡検査を含む複数の検査方法が実施されます。
定期検診によって、早期の食道がんを見つけることができるため、治療の成功率が高まります。また、食事や生活習慣の改善、禁煙や適度な飲酒で食道がんリスクの低減に繋がります。
早期発見のために定期検診を受けることが、食道がん予防策として有効です。
4.食道がんの治療法と予後
食道がんの治療法は、がんの進行度や患者の状態に応じて選択されます。治療法には手術、放射線療法、化学療法などがあります。
手術では、食道の一部または全てを切除し、周囲のリンパ節も同時に摘出することが多いです。
放射線療法や化学療法は、がん細胞を破壊し、腫瘍の大きさを縮小させることを目的としています。これらの治療法は単独で行われることもありますが、手術と併用されることもあります。
食道がんの予後は、発見時期や治療法によって異なります。早期発見された場合、適切な治療が行われれば、5年生存率が高くなるとされています。しかし、進行がんや転移がある場合は、治療が難しく予後が悪い傾向にあります。
食道がんの予後を改善するためには、早期発見と適切な治療が重要であり、定期検診や生活習慣の改善が大切です。
手術による切除
食道がん治療の主力である手術による切除は、早期発見が可能であれば非常に効果的です。食道がん細胞を根治的に取り除くことにより、患者の生存率を向上させるためです。
手術の方法は、食道と胃の一部を切除し、胃を食道に代わって移動させる方法が一般的です。また、転移リンパ節も同時に取り除くことが重要です。
ただし、手術の適応は患者の病期、年齢、全身状態などによって異なります。そのため、適切な診断と検査を経て、医師と相談しながら最適な治療法を選択する必要があります。
手術後は、嗄声、食道の狭窄や食べ物の逆流のリスクがあります。ただ、一部の症状については内視鏡的食道拡張術などの方法で対処できます。また、術後も定期的な検診を受け、再発や転移を早期に発見し、適切な治療を開始することが大切です。
放射線や化学療法
進行食道がんの対策としては、放射線や化学療法が主に行われます。これらの治療は、がん細胞の増殖を抑制し、腫瘍の縮小・増殖停止、また痛みや狭窄がみられる場合はその緩和を目的としています。
放射線治療では、高エネルギーの放射線をがん細胞に照射し、細胞のDNAを損傷させることで、がん細胞の増殖を抑えます。
一方、化学療法では、抗がん剤を用いてがん細胞の成長を抑制することができます。ただし、副作用に注意が必要であり、患者の全身状態とバランスを考慮した治療が求められます。
また、放射線や化学療法は手術の前後に組み合わせて行われることもあり、この場合は、手術の効果を高めたり、再発リスクを低減することが期待できます。
食道がんの予防と再発防止
食道がんの予防と再発防止には、生活習慣の改善が非常に重要です。
次のようなポイントに注意して、健康的な日常生活を送ることが推奨されます。
・喫煙をやめる
喫煙は食道がんのリスクを高める主要な原因です。禁煙を実践することで、食道がんの発生や再発を抑えることが可能です。
・飲酒量を控える
過度の飲酒も食道がんのリスクを高めます。
特にアルコールを分解する過程で生成されるアセトアルデヒドは、粘膜を損傷させてがん化を促進します。
そのため、適度な飲酒量を心掛けましょう。
・適切な体重管理
肥満は胃酸逆流を引き起こし、食道の炎症を悪化させます。適切な体重管理を行うことで、食道がんのリスクを低減できます。
・健康的な食事
抗酸化物質や食物繊維が豊富な野菜や果物を多く摂取することは、食道がんの予防に効果的です。
また、油っこい食べ物や塩分過多の食事は避けるようにしましょう。
・定期的な検診
食道がんが早期に発見されれば治療の成功率が高まります。
日本では、胃がん検診の一環として食道がんの検査も行われています。定期的な検診を受けることで、早期発見・治療が可能となります。
これらの生活習慣の改善によって、食道がんの予防と再発防止に寄与することが期待できます。
日常生活での注意点を意識し、健康な生活を送りましょう。
5.まとめ
食道がんは、消化管がんの一種であり、早期発見と適切な治療が重要です。まず、症状について理解し、疑わしい症状があれば早急に診断を受けることが大切です。
食道がんの主な症状は、食事の際の違和感、痛み、咳、声のかすれなどです。
食道がんの原因には、喫煙、飲酒、食道の逆流、生活習慣などがあり、リスクを低減するためには、これらの要素を改善することが効果的です。
検査方法としては、内視鏡検査が一般的で、カメラを使って食道内の状態を確認します。
特に、定期的な検診を受けることが、早期発見に繋がります。
治療方法は、病状や進行度に応じて、手術、化学療法、放射線療法が選択されます。早期の段階であれば、手術による切除が可能であり、これが最善の方法であることが多いです。
適切な治療を受けることで、食道がんは克服できる病気ですが、予防が最も重要です。喫煙の禁煙、飲酒の適度な減少、適切な食事や運動で、生活習慣を改善することが大切です。
今回のコラムを参考に、食道がんに対する知識を深め、リスクを低減する生活習慣を実践しましょう。今後の健康維持のためにも、定期的な検診を受けることをお勧めします。
さらに、医師と相談して、個々の状況に応じた治療や対策を立てることが大切です。
快適医療ネットワーク理事長
監修
医学博士 上羽 毅
金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。