• 2025.08.04 2026.09.14
  • 肝臓がん

肝臓がん(肝細胞がん)のステージとは?分類の仕組みから治療法・生存率まで解説

肝細胞がんと診断され、まず「ステージはいくつなのか」「今の状態がどれくらい進んでいるのか」が気になっている方は多いのではないでしょうか。ステージの意味がつかめないまま治療方針の話だけが先に進むと、判断材料が足りず不安ばかりが膨らんでしまいます。肝細胞がんのステージは、腫瘍の個数や大きさ、血管への広がり方の組み合わせで決まり、その結果によって選べる治療法も変わってきます。近年は画像検査の精度が上がり、治療の選択肢も広がったことで、ステージが進んでいても打てる手立ては増えてきました。この記事では、ステージ分類の仕組みから、症状、診断方法、治療法、生存率、再発への向き合い方までを順に整理します。ご自身やご家族の状況を理解する手がかりとしてお役立てください。

1.肝臓がん(肝細胞がん)とは

肝臓の絵と医師

肝臓がんの多くは、肝臓そのものの細胞ががん化する「肝細胞がん」です。まずはこの基本を押さえておきましょう。

肝臓は、栄養を体で使える形に変えたり、不要なものを分解したり、消化を助ける胆汁をつくったりと、いくつもの役割を一手に引き受けている臓器です。その肝臓を構成する細胞(肝細胞)に異常が起こり、無秩序に増え続けるようになったものが肝細胞がんです。多くは慢性的な肝炎や肝硬変によって肝臓に負担がかかり続けた末に発生すると考えられています。肝臓は予備能力の高い臓器で、初期段階では自覚できる変化がほとんど現れません。そのため、健康診断やがん検診、あるいは肝臓の組織を調べる検査がきっかけで見つかるケースも少なくありません。ご自身の状況を担当医から説明していただくことが、この先を進めるための第一歩になります。

こうした肝細胞がんの成り立ちを知っておくと、このあとお伝えする原因やステージ分類の話も、つながりを持って理解しやすくなります。

肝臓にできるがんは、実はひとつの種類だけではありません。まずは大きな分け方を整理しておきましょう。

肝臓にできるがんは、肝臓自体から発生する「原発性肝がん」と、他の臓器のがんが飛び火してできる「転移性肝がん」に大きく分けられます。原発性肝がんの大部分は肝細胞そのものからできる肝細胞がんです。胆汁の通り道である胆管の細胞から発生する「肝内胆管がん」は性質や治療方針が異なる別の種類として扱われ、標準的な医療機関では検査内容も少しずつ変わってきます。転移性肝がんは、胃がんや大腸がんなど別の臓器で生まれたがん細胞が血流に乗って肝臓に定着したものです。同じ「肝臓のがん」でも、どこから発生したかで検査の進め方や治療の考え方が変わってきます。

ご自身のがんがどの種類にあたるのかを担当医に確認しておくと、この先の説明がより自分ごととして理解しやすくなるはずです。

肝臓がんは本当に良くならないのか?
同じ肝臓がんと向き合い、乗り越えた方がいます。実際の記録をご覧ください。

肝臓がん手術不可・余命2ヶ月の症例|11cm腫瘍も、転移も完全消失 肝臓がん余命3ヶ月の症例|肝臓は完全消失、肺転移も大幅縮小 3cmの肝臓癌が完全消失、2年経っても再発せず経過良好。

2.肝臓がんの原因とリスク要因

カルテを持つ医師とビックリマーク

肝細胞がんの背景には、肝炎ウイルスの持続感染が深く関わっていることが知られています。

B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに長期間感染し続けると、肝臓では炎症と修復が繰り返され、少しずつ細胞にダメージが積み重なります。この状態が続くと肝臓が硬くなる肝硬変へ進み、そこから肝細胞がんが発生しやすくなるという流れです。近年は抗ウイルス薬の進歩によってC型肝炎のウイルスを排除できるケースが増えてきました。有効な治療を受けられる医療機関も広がり、肝炎そのものをコントロールできる時代になってきました。もっとも、肝炎が治った後もそれまでのダメージによって発がんリスクが残ることがあるため、経過観察を続けることが大切だとされています。

肝炎ウイルスとの関わりを知っておくことで、自分がなぜ定期的な検査を勧められているのか、その理由がつかみやすくなります。

肝炎ウイルス以外にも、日々の生活習慣が肝細胞がんの発生に関わっていることがわかってきています。

長年にわたる大量の飲酒はアルコール性肝障害を引き起こし、進行するとアルコール性肝硬変につながることがあります。また、肥満や糖尿病を背景に肝臓へ脂肪がたまる脂肪肝が進行し、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を経て肝硬変・肝細胞がんへ進む例も増えてきました。肝炎ウイルスに感染していない方の肝細胞がんが増えている背景には、生活習慣に関わる要因の影響が大きいと考えられています。脂肪分の多い食事や運動不足は肝疾患全体の傾向としても注目されています。原因が一つに定まらないケースも多く、複数の要因が重なり合って発症に至ることも珍しくありません。

このように原因を知っておくことは、今後の治療方針や経過観察の説明を受ける際に、ご自身の状況を整理する助けになります。

3.肝臓がんのステージ分類

ここからは、ステージ分類という少し専門的な話に入っていきます。仕組みを知っておくと、担当医からステージを告げられたときに「今、自分がどのあたりにいるのか」を自分の言葉で理解でき、次の治療の話にも落ち着いて臨みやすくなります。

疑問を持つ人

肝細胞がんのステージは、腫瘍の状態を表す3つの条件の組み合わせによって決まります。

日本で広く使われている分類では、まず「腫瘍が1個だけ」「大きさが2センチ以下」「門脈や肝静脈、胆管への広がり(脈管侵襲)がない」という3条件を確認します。3つ合致すればT1、2つならT2、1つならT3、どれにも合致しなければT4というように段階的に分類されます。これにリンパ節転移の有無、肝臓以外への遠隔転移の有無を組み合わせ、最終的にⅠ期からⅣ期までのステージが決まる仕組みです。数字が大きいほど進行していることを示します。

この分類は、日本肝癌研究会が定める「原発性肝癌取扱い規約」にもとづき、医学の進歩に応じて版を重ねながら更新されています。腫瘍が小さくても、他の条件によってステージが変わりうることを知っておくとよいでしょう。

ステージの分類には、国内向けの分類とは別に、国際的に使われている分類もあります。

国際対がん連合(UICC)が定めるTNM分類も、腫瘍の広がり(T因子)、リンパ節転移の有無(N因子)、遠隔転移の有無(M因子)という考え方の枠組みは共通しています。ただし、T因子の評価基準の細かな線引きなど、国内の分類とは一致しない部分もあり、同じ患者さんでもどちらの基準を使うかによってステージの表記が変わることがあります。国際的な臨床試験のデータや海外の治療成績を調べる際にはUICC分類が使われることが多く、国内の診療の現場では日本の分類が広く用いられる傾向にあります。

担当医からステージの説明を受けるときは、どちらの分類にもとづく数字なのかを一緒に確認しておくと、情報の受け取り違いを防ぎやすくなります。

4.肝臓がんのステージ別症状

がんのステージ

ステージⅠの段階では、はっきりとした自覚症状が出ないことがほとんどです。

肝臓は予備能力が高く、一部の細胞が障害を受けても残りの部分が働きを補うため、がんが小さいうちは体調の変化として現れにくいという特徴があります。強いて挙げるなら、なんとなく疲れやすい、食欲が今ひとつといった、他の体調不良とも見分けがつきにくい軽い変化がある程度です。こうした症状のわかりにくさこそが、肝臓が「気づかれにくい臓器」と言われる理由でもあります。実際には、病院での血液検査や画像検査、あるいは肝炎の経過観察の途中で、通院先の医療施設で偶然見つかるケースが多く見られます。

自覚症状が乏しいステージだからこそ、定期的な検査によって見つかったことに意味があると捉えていただければと思います。

がんが進行するにつれて、体に現れる変化もはっきりしてきます。

ステージが進むと、腫瘍が大きくなったり肝臓内で広がったりすることで、右上腹部の張りや痛み、食欲不振、体重減少といった症状が出やすくなります。肝臓の働きそのものが低下してくると、皮膚や白目が黄色くなる黄疸、お腹に水がたまる腹水、だるさが取れない倦怠感なども見られるようになります。さらに進行して他の臓器への転移が起こると、転移した部位に応じた症状が加わることもあります。ただし、これらの症状の現れ方や強さには個人差が大きく、同じステージでも状態は一人ひとり異なります。

こうした変化を知っておくことで、体調の異変に気づいたときに、思い当たる原因として肝臓の状態を早めに相談する目安にすることができます。

5.肝臓がんの診断方法

検査の話は専門用語が多く身構えてしまいがちですが、それぞれの検査が何を調べているのかを知っておくと、次に何をされるのかの見通しが立ち、落ち着いて臨みやすくなります。

血液検査と聴診器

肝細胞がんの診断では、まず画像による検査で腫瘍の位置や広がりを確認します。

超音波(エコー)検査は体への負担が少ない検査で、肝炎や肝硬変の経過観察の中で医療スタッフによって定期的に行われることが多く、適切なタイミングで受けることが大切です。腫瘍が疑われた場合には、造影剤を使ったCTやMRIでより詳しく調べ、腫瘍の大きさや個数、血管への広がりの有無を確認します。造影剤を使うことで、肝細胞がんに特徴的な血流のパターンが浮かび上がり、他の肝臓の病変との見分けがつきやすくなります。これらの画像診断の結果は、前の章でお伝えしたステージ分類のうち、腫瘍の個数や大きさ、脈管侵襲の有無を判断する材料として使われます。

画像診断でわかることを知っておくと、検査結果の説明を受けたときに、ステージのどの部分にあたる情報なのかが理解しやすくなります。

画像検査とあわせて、血液検査による腫瘍マーカーの測定も診断の重要な手がかりになります。

肝細胞がんでよく使われる腫瘍マーカーには、AFP(アルファフェトプロテイン)やPIVKA-Ⅱといった項目があります。これらの数値が上昇していると肝細胞がんの存在を疑う材料になりますが、肝炎や肝硬変があるだけでも多少上昇することがあるため、数値だけでがんの有無を判断するものではありません。画像検査の結果とあわせて総合的に評価することで、診断の精度を高めています。また、治療を始めたあとは、腫瘍マーカーの数値の変化を定期的に確認することで、治療の効果や再発の兆候をとらえる手がかりとしても活用されます。

数値の意味を大まかにでも知っておくと、医師から検査結果を聞くときに、画像検査の結果と組み合わせて何を確認すればよいかが見えやすくなります。

6.肝臓がんの治療法

治療法の名前がいくつも出てくると、それだけで難しく感じてしまうかもしれません。ですが、大きな枠組みを知っておくだけで、担当医の説明がぐっと理解しやすくなります。

はてなが描かれた積み木

肝細胞がんの治療のうち、根治を目指しやすい方法の代表が外科的治療です。

外科的治療の中心は、がんを含む肝臓の一部を切り取る「肝切除」です。腫瘍の大きさや個数、肝臓に残る機能の状態を踏まえたうえで、切除できる範囲かどうかが判断されます。肝臓の障害が進んでいて切除が難しい場合には、肝臓そのものを入れ替える「肝移植」が選択肢に入ります。家族などから肝臓の一部を提供してもらう生体肝移植という方法も用いられています。手術は体への負担が比較的大きい治療ですが、対象となる条件が合えばがんを完全に取り切れる可能性が高く、治療方針を検討するうえで重要な選択肢のひとつです。

手術という選択肢があること、そしてどんな場合に選ばれるのかを知っておくと、担当医との話し合いで疑問点を整理しやすくなります。

手術以外にも、肝細胞がんにはいくつかの治療法が用意されています。

体への負担を抑えながら腫瘍を狙う局所療法もあります。針を刺して腫瘍を熱で焼くラジオ波焼灼療法(RFA)や、足の血管からカテーテルを通してがんに栄養を送る血管を塞ぐ肝動脈化学塞栓療法(TACE)などが代表的です。がんが肝臓の外にも広がる、あるいは局所療法・手術が難しい場合には、全身に作用する薬物療法が中心になります。血管新生などのはたらきを直接阻害する分子標的薬や、免疫の力でがん細胞を攻撃する治療薬も選択肢に加わりました。薬剤によっては副作用を伴うため、安全性を確認しながら治療チームと進めていきます。痛みの緩和や腫瘍の縮小を目的に放射線治療を組み合わせることもあります。どの治療法を選ぶかは、ステージと肝機能の状態を踏まえて決められます。

こうした選択肢の全体像をつかんでおくと、自分に提案されている治療がどんな位置づけのものか把握しやすくなります。

7.肝臓がんのステージ別生存率

生存率という数字は、目にするだけで身構えてしまう方も多いかもしれません。ですが、その数字が何を意味しているのかを知っておくと、必要以上に不安に振り回されずに受け止めやすくなります。

老若男女

生存率とは、がんと診断されてから一定期間が経過した時点で生存している人の割合を示す指標です。

治療成績を表す代表的な数値として、診断から5年後の時点を基準にした「5年生存率」がよく使われます。生存率には、がん以外の原因による死亡も含めて計算する「実測生存率」と、がん以外の死因の影響をできるだけ取り除いて算出する「相対生存率」など、いくつかの示し方があります。近年は、がんのみが死因となる状況を推定する「純生存率(ネット・サバイバル)」という方法も広く使われるようになってきました。生存率のデータは、過去に診断された方たちの記録をもとに算出されているため、治療法が進歩した今、これから治療を受ける方にそのまま当てはまるとは限りません。年齢や肝機能の状態、合併症の有無によっても見通しは異なり、検査から診断確定までに約1〜2週間ほどかかることも珍しくありません。治療法の進歩により、生存率は全体として改善の傾向にあるとも報告されています。

生存率の意味をこのように理解しておくと、数字を過度に恐れることなく、あくまで目安のひとつとして受け止めやすくなります。

一般的な傾向として、ステージが早い段階であるほど生存率は高く、進行するにつれて低くなる関係があります。

ステージⅠのように腫瘍が小さく肝臓内にとどまる段階では、切除や局所療法で根治を目指しやすく、生存率が最も高くなります。国立がん研究センターの院内がん登録による集計では、肝細胞がんの5年生存率(純生存率)はステージⅠで約63.0%と最も高く、ステージⅡでは約45.2%、ステージⅢでは約16.0%と大きく下がり、遠隔転移のあるステージⅣでは約4.4%にとどまると報告されています。ステージが進むほど選べる治療法が限られやすくなることが、この差につながっています。ただし、これらはあくまで集計時点での全体的な傾向を示す数字です。肝硬変の有無や肝機能の状態、腫瘍の個数、治療への反応によって、同じステージでも実際の経過は大きく変わり得ます。

大切なのは、ステージという一つの数字だけで自分の見通しを決めつけず、担当医と一緒に今の状態を丁寧に確認していくことです。

8.肝臓がんの再発と経過観察

治療が一区切りついたあとも、肝臓がんは再発のリスクと向き合っていく病気だと言われています。ここから先を知っておくと、治療後の見通しが立てやすくなり、気持ちの整理にもつながります。

紙でできた病院

肝細胞がんは、治療によって一度小さくなったり取り切れたりしても、再び現れることがある病気です。

再発が起こりやすい背景として、まず肝炎ウイルスの持続感染や肝硬変の存在が挙げられます。がんが発生した場所以外にも、肝臓全体に発がんの土壌となる変化が広がっていることが多いためです。また、手術や局所療法を行った部分の近くからその後再び現れる場合もあります。肝臓のほかの場所に新たに発生する場合もあり、再発の起こり方にはいくつかのパターンが生じることがあります。飲酒や体重管理といった生活習慣も、再発のしやすさに関わっていると考えられています。こうした背景を理解しておくことは、治療後になぜ経過観察が続くのかを納得して受け止めることにつながります。

再発の起こりやすさを知っておくことで、治療後の生活で何に気をつければよいかを担当医と相談しやすくなります。

治療後の経過観察は、再発をできるだけ早い段階で見つけるための大切な機会です。

【 経過観察の時間を活かすためにできること】

決められた受診の間隔を守る 
 肝細胞がんは無症状のまま進むことがあるため、症状がなくても決められたタイミングで血液検査や画像検査を受けることが、早期発見につながります。

気になる変化はそのつど記録して伝える 
 だるさや食欲の変化など、些細に思えることでも、次の受診まで覚えておくためにメモしておくと伝え忘れを防げます。

こうして半年や1年といった節目ごとに経過観察を続けていくことで、たとえ再発が見つかった場合でも、まだ小さいうちに次の治療を検討できる可能性が高まります。

9.まとめ

ここまで、肝細胞がんの基本的な仕組みから、原因、ステージ分類、症状、診断方法、治療法、生存率、再発と経過観察までを順を追って見てきました。ステージは腫瘍の個数や大きさ、血管への広がりの組み合わせで決まり、その段階に応じて選べる治療法や見通しが変わっていきます。数字だけを見ると重く感じられるかもしれませんが、ひとつずつの意味を理解することで、今の自分の状態を落ち着いて受け止めやすくなるはずです。治療法や検査の技術は少しずつ広がってきており、ステージがどの段階であっても、担当医と話し合いながら自分に合った歩み方を見つけていくことができます。

快適医療ネットワーク理事長

監修 
医学博士 上羽 毅

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。