• 2024.07.16
  • 乳がん

乳がん生存率アップ!早期発見と治療の最新情報

乳がんは女性に多いがんの一つであり、早期発見と治療が生存率向上に大変重要です。
このコラムでは、乳がんの基本情報から生存率とステージの関係、さらに最新の治療方法や研究の進捗まで幅広く解説します。乳がん患者やその家族だけでなく、予防や早期発見を目指す女性や遺伝的リスクを持つ方にも役立つ情報が満載です。
このコラムでは、以下のトピックについて詳しく説明します。
・乳がんの種類と原因
・乳がんの症状と診断方法
・乳がんのリスク要素と予防策
・早期発見による生存率の向上
・最新の手術や放射線治療技術
・薬物療法やホルモン療法の進歩
乳がん生存率向上のための知識と取り組みを通じて、自分自身や大切な人の健康を守りましょう。

1.乳がんについての基本情報

乳がんは、乳腺組織の異常な細胞の増殖によって発生する悪性腫瘍であり、女性がんの中で最も多く発生する疾患です。乳がんは、早期に発見・診断・治療されることで、生存率が向上し、リスクを低減できます。
乳がんの発見は、定期的な検診や自己検診によって行われることが多く、乳房のしこりや皮膚の変化、乳頭の内陥などの症状が現れる場合があります。また、乳がんはステージによって病状や治療方法が異なります。
・ステージ0:乳腺内に癌が存在するが、乳腺外には広がっていない。
・ステージ1:乳がんが2cm以内で、リンパ節転移がない。
・ステージ2:乳がんが2~5cmで、リンパ節転移がある場合もある。
・ステージ3:乳がんが5cm以上で、リンパ節転移が認められる。
・ステージ4:乳がんが他の臓器に転移している。
治療方法としては手術(乳房温存手術や全摘出手術)、放射線治療、化学療法、ホルモン療法などがあります。選択は患者の状況や乳がんのタイプ、ステージによって決定されます。乳がん診療は国立がん研究センターや専門クリニックなど、多くの医療機関で行われています。

 

乳がんの種類と原因

乳がんにはいくつかの種類があり、それぞれ原因や治療方法が異なります。主な乳がんの種類には、浸潤性乳がん、非浸潤性乳がん、乳管内がんがあります。これらは細胞の形状や浸潤範囲によって分類されます。
乳がんの原因は遺伝子やホルモンの影響、年齢、家族歴、環境要因など多岐にわたります。遺伝子検査により、遺伝子変異が検出されることもあり、リスクが高まる場合があります。ただし、すべての乳がん患者が遺伝子変異を持っているわけではなく、遺伝子変異を持っていても必ず乳がんになるわけではありません。乳がんの発症には、生活習慣やストレス、肥満、運動不足などの環境要因も影響していることが研究で明らかになっています。

 

乳がんの症状と診断方法

乳がんの症状は、乳房にしこりができる、皮膚の陥没や乳頭の内陥、乳房の形状や大きさの変化、乳頭からの分泌液などが挙げられます。これらの症状が現れた場合、早急に医師の診察を受けることが重要です。
診断方法としては、まず医師が乳房の触診を行い、異常部位を確認します。さらに、マンモグラフィや超音波検査、MRIなどの画像診断法を用いて、乳がんの存在や範囲を把握します。最終的には、針生検による細胞診検査で確定診断がされることが一般的です。
乳がんの早期発見には、定期的な乳がん検診の受診が効果的であり、40歳以上の女性には特に勧められます。また、自己検診の実施も乳がんの発見に役立ちます。乳がん診断後の治療は、がんの進行状況や患者の状態、希望に基づいて適切な方法が選択されます。治療には手術、放射線治療、化学療法、ホルモン療法などがあり、それぞれのリスクや副作用を検討し、患者と医師が共同で決定します。

 

乳がんのリスク要素と予防策

乳がんは女性のがんの中でも最も多く発見される病気であり、そのリスク要素と予防策について理解することが重要です。リスク要素には、年齢、家族歴、遺伝子変異、ホルモン療法の使用、肥満、アルコール摂取量などです。予防策としては、以下の点が挙げられます。
・定期的な乳がん検診の受診
・適切な体重の維持
・アルコール摂取量の制限
・喫煙の禁止
・適度な運動
・ホルモン補充療法の慎重な使用
これらの予防策を適切に実践することで、乳がんのリスクを低減できる可能性があります。

 

 

 

2.乳がんの生存率とステージの関係

乳がんは、がんの進行具合によって前述したようにステージ分けされます。進行が早い段階で発見されるほど、乳がんの生存率は高くなります。

 

ステージごとの生存率の違い

乳がんのステージごとの生存率は、ステージ0や1では5年間の生存率が90%以上、ステージ2でも80%以上の割合です。しかし、ステージ3では60%程度、ステージ4では20%程度に減少します。ステージが進行することで生存率が低下するため、早期発見が重要となります。

 

早期発見による生存率の向上

早期発見が生存率の向上に繋がることから、定期的な乳がん検診の受診が推奨されています。マンモグラフィ検査や、自己検診を行うことで早期発見が可能になり、治療が効果的に行える可能性が高まります。また、早期発見により乳房温存手術などの治療選択肢が増え、患者の生活の質も向上する場合があります。

3.診療ガイドラインに沿った乳がん治療

乳がん治療では、診療ガイドラインに従い、患者の状況やがんのステージに応じた適切な治療法を選択することが重要です。
まず、早期発見が生存率向上に大きく関係するため、定期的な検診や自己チェックが推奨されます。検査手段には、マンモグラフィや超音波検査があり、乳がんの疑いがある場合はさらに細胞診や生検を行います。
乳がんの治療法は主に手術、放射線治療、薬物療法、ホルモン療法があります。手術は、乳房温存療法や全乳房切除が選択され、リンパ節転移の有無によって、付近のリンパ節も切除されることがあります。治療後の乳房再建も選択肢の一つです。
放射線治療は、手術後の再発リスク低減や腫瘍の縮小を目的として行われます。また、薬物療法は、抗がん剤や分子標的薬を用いてがん細胞の増殖を抑制します。ホルモン療法は、乳がん細胞のホルモン受容体に働きかけ、がんの進行を遅らせる効果があります。
患者の年齢やがんのタイプ、ステージによって治療法が異なり、診療ガイドラインに基づいた個別化された治療が行われるため、信頼できる医療機関での受診が重要です。

 

手術や放射線治療の最新技術と選択基準

乳がん治療の中で、手術や放射線治療は主要な治療法として広く行われています。最新の技術や選択基準により、より効果的で副作用の少ない治療が可能になっています。
手術では、乳房温存療法や全乳房切除が選択されますが、温存療法は、乳房の形を保ちながらがんを切除する方法で、適切な症例では再発リスクも低くなります。また、リンパ節転移の有無によっては、センチネルリンパ節生検や腋窩リンパ節郭清、前哨リンパ節生検が行われます。
最新の放射線治療技術には、立体定位放射線治療や強度変調放射線治療があり、正確に腫瘍部位に照射できるため、周囲の正常組織への影響を最小限に抑え、治療効果が高まります。
これらの手術や放射線治療の選択基準は、がんの大きさやステージ、リンパ節転移の有無、患者の年齢や一般状態、遺伝子検査結果など様々な要因に基づいて決定されます。適切な治療法を選択することで、より良い治療成績と生活の質が向上します。

 

薬物療法やホルモン療法の進歩

乳がん治療において、薬物療法やホルモン療法の進歩により、より効果的で副作用の少ない治療が可能になっています。
薬物療法では、抗がん剤や分子標的薬が使用されます。抗がん剤は、がん細胞の増殖を抑える働きがありますが、最近では分子標的薬が注目されています。分子標的薬は、がん細胞の特定の分子に対して働きかけることで、正常細胞への影響を抑えた治療が行えます。
一方、ホルモン療法は、ホルモン受容体陽性の乳がん細胞に対して効果があります。ホルモン療法には、タモキシフェンやアロマターゼ阻害剤があり、がん細胞のホルモン受容体を阻害することで、がんの成長を抑制します。
薬物療法やホルモン療法の適応は、がんのタイプやステージ、ホルモン受容体の状態などによって決まります。患者と医師の密接な連携により、適切な治療計画が立てられ、より良い治療成績と生活の質が期待できます。

 

 

4.乳がん患者の療養とケアの重要性

乳がんは、早期発見と適切な治療が重要です。しかし、治療だけではなく、療養とケアが大変重要であることを理解することが肝要です。
その理由としては、まず、乳がんの治療は患者の心身に負担がかかる点です。具体的には、手術や化学療法、放射線療法などの治療法を受ける患者は、副作用や痛みに悩まされることがあります。
また、乳がん患者は再発や転移のリスクも抱えているため、経過観察や定期検診が必要です。これにより、患者と医療チームが連携し、適切なケアを提供できることが望ましいです。
さらに、乳がん患者は精神的なケアも必要であり、家族や友人からの支えが大切です。乳がん診断を受けると、不安や恐怖感、抑うつ症状を抱えることがあります。そのため、適切な精神的サポートが必須となります。
最後に、乳がん患者の生活習慣の見直しも重要です。適切な食事や運動、睡眠、ストレス管理などが、病気との闘いに役立ちます。これらの理由から、乳がん患者の療養とケアが非常に重要なものであることがわかります。

 

乳がん患者向けの生活指導と家族のサポート

乳がん患者向けの生活指導では、まず患者自身が病状や治療法を理解し、自己管理ができるようになることが大切です。医療チームから十分な情報提供を受け、質問や相談ができる環境を整えることが重要です。
次に、家族のサポートが非常に重要です。家族が乳がん患者の病状や治療法を理解し、病気との闘いや日常生活のケアでサポートすることが大切です。具体的には、患者の食事管理や運動、睡眠やストレス管理などを手伝ったり、定期検診時に同行するなどの支援が求められます。
また、患者が抱える精神的な問題に対しても、家族が理解し、適切なサポートを提供することが大切です。患者が不安や恐怖感、抑うつ症状に悩まされた場合、家族が励まし、一緒に過ごす時間を大切にすることが重要です。
このように、乳がん患者向けの生活指導と家族のサポートは、患者の病気との闘いや日常生活の質を向上させるために非常に重要な役割を果たしています。

 

乳房再建や外科療法後のケアプラン

乳房再建や外科療法を受けた乳がん患者には、手術後のケアプランが重要です。まず、手術後の痛みや腫れ、感染のリスクがあるため、適切なケアが求められます。手術後の傷口の清潔さを保ち、感染を予防することが大切です。
また、リンパ節切除が必要な場合、リンパ浮腫の発生に注意が必要です。適切なリンパ浮腫のケアで、患部の腫れや痛みを軽減できます。
さらに、乳房再建や外科療法後の患者は、適切なリハビリテーションが必要です。関節可動域の改善や筋力強化が求められます。また、乳房再建後の患者には、美容面でのケアも大切です。プロテーゼやブラジャーの選択や装着方法などのアドバイスが役立ちます。
最後に、手術後の患者は、再発や転移のリスクを抱えています。経過観察や定期検診が重要であり、患者と医療チームが連携して適切なケアを提供することが望ましいです。これらのケアプランは、乳がん患者の手術後の生活の質を向上させ、再発や転移のリスクを低減するために重要なものです。

5.乳がんの生存率向上のための取り組み

乳がんは女性に多く発生するがんで、早期発見と適切な治療が生存率向上に大きく関わります。
近年では、診療データの活用や研究の進展によって、ますます多くの患者さんが乳がんと闘い、生活を取り戻すことができるようになっています。
具体的には、診療データをもとにした、患者ごとのリスクや治療効果の予測が可能になり、個別化された治療が実現しています。
また、遺伝子研究や免疫療法の進展を活用し、抗がん剤やホルモン療法によって、転移や再発のリスクを軽減することができるようになりました。さらに、乳房温存手術や再建手術の技術向上も、患者さんのQOL向上に寄与しています。

 

乳がん研究の最新トピックス

乳がん研究は日進月歩で、新しい治療法や予防策が次々と開発されています。
・分子標的薬の開発
 がん細胞特異的に作用する薬物により、副作用を抑えつつ効果的な治療が期待できる。
・免疫療法
 自己の免疫系を活用し、がん細胞を攻撃する治療法。効果が持続しやすいとされている。
・リスク低減手術
 遺伝的なリスクを持つ人に対して、乳がん発症の予防として乳房の一部や全摘出を行う手術。
これらの研究が、さらなる乳がんの生存率向上につながることが期待されています。

 

国内外の乳がん治療指針の比較

国内外の乳がん治療指針も多様化し、患者個々の状況や治療方針に合わせた治療が実現されています。日本と海外の指針は、基本的な治療方針は共通していますが、遺伝子検査の活用や保険制度の違いにより、細かな治療方法に違いがみられます。
具体的には、
・日本では、マンモグラフィ検診が40歳以上の女性を対象としているが、米国や欧州では年齢制限が異なる場合がある。
・日本では、乳がん診断における遺伝子検査はまだ普及途上だが、米国ではより一般的に実施されている。
・保険制度の違いにより、治療費用や薬剤の取り扱いが国によって異なる。
治療指針の違いについて理解し、自分に最適な治療を選択することが重要です。

6.まとめ

乳がんの生存率向上には、早期発見と適切な治療が欠かせません。最新の研究成果や国内外の治療指針を理解することで、自分に適した選択を行うことができます。
さらに、定期検診や自己検診の習慣化も重要です。乳がんと闘っている方々には、最善の治療とケアが提供されるよう、医療従事者や専門家は引き続き研究や取り組みを進めています。
これからも、乳がん治療の進歩を追いかけ、自身の健康管理に役立てることが大切です。

快適医療ネットワーク理事長

監修 上羽医院院長
上羽 毅(医学博士)

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に 上羽医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。 京都府京都市 上羽医院 http://www.uehaiin.com/