• 2024.10.01
  • 乳がん

乳がんと診断を受けたら?ステージ別生存率と最新ケア

乳がんは女性に多く見られるがんの一つで、早期発見と適切な治療が重要です。
本コラムでは、乳がんの診断と生存率、最新の治療法やケアについて解説していきます。
まず、乳がんの症状や検査方法について触れ、早期発見のための予防策を解説します。また、ステージ別生存率にも目を向け、治療方法の選択肢やその効果について紹介します。
また、手術や放射線療法、化学療法やホルモン療法の特徴と効果、緩和ケアや予防策の最新研究を取り上げます。
乳がんの転移や再発リスクにも焦点を当て、転移部位の特徴や再発予防のためのケアと生活改善方法について説明し、最後に、乳がん患者と家族が知っておくべき情報をまとめます。
このコラムを通じて、乳がんへの理解と対策の参考にしてください。

1.乳がんの診断とステージ別生存率

乳がんは女性に多いがんで、早期発見が生存率に大きく影響します。乳がんの診断は、医療機関で行われる検査や手術、病理検査の結果をもとに確定されます。そして、診断後にステージが判明し、治療方法が選択されます。
乳がんのステージは、腫瘍の大きさやリンパ節への転移、遠隔転移の有無によって分類されます。ステージによって生存率が変わるため、乳がんのステージ別生存率は重要な指標となります。
以下は乳がんにおけるステージ別10年生存率です。
・早期(ステージ0~1):約90~100%
・中期(ステージ2):約80~90%
・進行期(ステージ3):約40~60%
・末期(ステージ4):約30%以下
統計上、早期発見が治療成功率に寄与することが明らかです。そのため、乳がん検診の受診を習慣化し、早期発見を目指すことが望ましいでしょう。

 

乳がんの症状と早期発見の重要性

乳がんの症状は、初期段階では自覚症状が少ないため、早期発見が困難な場合があります。一般的な症状は、乳房のしこりや皮膚の変形、乳房の痛みや乳腺炎のような症状が挙げられます。
乳がんの早期発見は、生存率向上に大きく寄与します。早期発見された乳がんは、手術や放射線治療、化学療法等の治療法が選択でき、予後が良好であることが多いです。
乳がん検診の受診を習慣化し、自己検診を行うことで、早期発見が可能になり、治療成功率が向上します。

 

乳がんの検査方法

乳がんの検査方法は、マンモグラフィー、エコー検査、MRI検査の3種類が主となります。これらの検査により、乳がんの存在や腫瘍の大きさ、位置、形状などの情報が得られます。
マンモグラフィーは、X線を用いて乳房の画像を撮影し確認する検査で、乳がんのスクリーニングとして一般的に行われます。エコー検査は、超音波を用いて乳房の状態を調べる非侵襲的な検査です。MRI検査は、強力な磁気を利用して乳房の詳細な画像を得る検査で、高い精度が期待されます。
これらの検査結果をもとに、乳がんの診断が確定され、治療方針が決定されます。

 

2.乳がん治療の進歩と療法の種類

乳がん治療の進歩は目覚ましく、その結果、様々な療法が開発されています。
主要な治療法は以下の通りです。

・手術(乳房切除、乳房温存)
・放射線療法
・化学療法
・ホルモン療法
・分子標的薬療法

乳がんの種類やステージ、患者の年齢や健康状態によって、適切な療法が選択されます。また、複数の療法を組み合わせることも一般的です。
最近では、より効果的で副作用の少ない治療法が研究・開発されており、乳がん患者の生活の質が向上しています。
さらに、遺伝子検査によって個々の患者に最適化された治療が可能になることが期待されています。

 

手術と放射線療法による乳がん治療

手術は乳がん治療の中心的な方法で、乳房切除や乳房温存などが行われます。
乳房切除の場合は乳房全体が取り除かれ、乳房温存手術ではがん細胞だけを除去し、乳房の形状をできるだけ保ちます。リンパ節も検査され、転移が疑われる場合はリンパ節を切除することもあります。
手術後、再発リスクを減らすために放射線療法が行われることが多いです。放射線療法は、がん細胞を破壊しやすい特定の波長の放射線を照射することで、がん細胞の増殖を抑制します。副作用として、皮膚の炎症や疲労感があるものの、通常は一般的な生活が続けられる程度です。
手術と放射線療法の選択にあたっては、患者の状況や希望を考慮し、医師と十分に相談した上で決定されます。また、これらの治療法を他の療法と併用することで、より効果的な治療が期待できます。

 

化学療法とホルモン療法の効果

化学療法は、がん細胞の増殖を抑制する薬物を用いて治療を行う方法であり、乳がん治療において重要な役割を果たしています。具体的には、腫瘍の縮小や転移リスクの低下、再発予防に効果を発揮します。しかし、副作用も考慮し適切なタイミングで治療を実行することが求められます。
一方、ホルモン療法は主に女性ホルモン(エストロゲン)が関与する乳がんに対して効果的な治療法です。具体的な方法としては、ホルモン受容体陽性の乳がん細胞に対し、ホルモンの働きを阻害する薬物を投与することで効果をもたらします。ほとんどの乳がん患者に対して、手術や放射線治療と併用されることが多いです。
化学療法とホルモン療法の効果は個人差があり、患者の状況やがんの進行状態によって最適な治療法や治療期間が異なります。通常の治療期間は数カ月から数年となることが一般的です。治療効果の評価は主に画像診断や血液検査を通じて行われ、医師と患者が共同で治療計画を立てることが重要です。

 

緩和ケアと予防策の最新研究

緩和ケアは、がん患者の痛みや症状を緩和するための医療であり、患者の生活の質の向上を目指すためのものです。
最新の研究では、緩和ケアにおいても個別化されたアプローチが重要であることが明らかになっています。具体的には、患者一人ひとりの症状や体調に応じて、薬物療法やアロマテラピー、リハビリテーションなど多岐にわたるケアが提供されます。
一方、乳がんの予防策は、がんの発症リスクを低減するための生活習慣や健康管理が求められます。最新の研究では、適度な運動や食生活の改善、アルコール摂取の制限、適切な体重維持が乳がんの発症リスクを低下させることが示されています。また、定期的な乳がん検診も予防策として重要です。

3.乳がんの転移と再発のリスクと対処法

乳がんの転移は、がん細胞が他の臓器や組織に広がる現象であり、再発は、一度治療を受けたがんが再び現れることを指します。転移や再発のリスク因子には、がんのステージや細胞の特徴、治療方法などがあります。
乳がんの転移は、通常、リンパ節や肺、肝臓、骨などに発生します。転移の対処法としては、転移部位に応じて手術や放射線治療、化学療法、ホルモン療法が用いられます。また、病状の進行に応じて緩和ケアも併用されます。
再発のリスクを低減するためには、適切な治療計画の立案や定期的な検査が重要です。また、生活習慣の改善や運動、食生活の管理も再発予防に寄与します。さらに、家族や医療スタッフとのコミュニケーションが対処法として重要であり、患者の心身の健康を維持することが求められます。

 

転移部位の特徴と再発の可能性

乳がんは、転移が起こりやすい部位に特徴があります。腺がんの場合、リンパ節や肺、肝臓、骨などへの転移が一般的です。再発の可能性は、治療方法やステージ、細胞の種類によって異なります。
転移の早期発見は、検査や診療を受けることで可能となります。再発リスクを把握するためには、定期的な検診や症状の確認が重要です。
再発のリスク要因は、ホルモン療法や放射線治療、化学療法などの選択によっても影響を受けますが、遺伝子検査やデータ解析の結果に基づいて、個々の状況に合わせた治療選択が可能です。
また、複数の研究結果に基づき、再発のリスクが低い場合でも、定期的な健康診断や家族との情報共有が必要です。

 

再発予防のためのケアと生活の改善

再発予防のためのケアとして、乳がん患者は、医師と連携し、適切な治療法を選択することが重要です。例えば、ホルモン療法や放射線治療、化学療法など、それぞれの患者に応じた治療法が存在します。
加えて、生活習慣の改善が再発予防に繋がります。適度な運動や健康的な食生活、ストレスの緩和や睡眠の質を向上させることが有効です。
再発予防のケアでは、患者自身と家族が情報を収集し、治療やケアに関する知識を深めることも重要です。乳がん診療ガイドラインや医療機関の提供する情報など、信頼性のある資料を利用しましょう。
さらに、乳がん患者や家族向けのサポートグループや、病院やクリニックで開催される講演会やセミナーに参加することで、最新の治療情報やケア方法を学ぶことができます。

 

 

4.乳がん患者と家族が知っておくべき情報

乳がん患者と家族が知っておくべき情報として、まずは乳がんの種類や可能な治療方法を理解することが大切です。また、診断や治療の過程で、患者の心身の負担や生活への影響に注意を払い、サポートに努めることが求められます。
具体的な情報収集の方法としては、医師や看護師からの説明を受けるだけでなく、信頼性のあるウェブサイトや専門書籍、家族や友人からの情報提供を活用することが効果的です。
また、患者本人や家族が乳がん治療に関する専門用語を理解することも、情報収集や医療スタッフとのコミュニケーションに役立ちます。
最後に、病院やクリニックでの治療だけでなく、予防やケア、生活の改善にも関心を持ち、継続的な情報収集や学びを通じて、乳がんと向き合う姿勢を大切にすることが望まれます。

 

乳がん手術後のリンパ浮腫対策

乳がん手術後、リンパ節を切除することがあるため、リンパ浮腫が生じる可能性があります。
リンパ浮腫対策としては、以下の方法が効果的です。
・早期発見のための定期的な検査
・皮膚ケアとマッサージ
・適切な運動と生活習慣の改善
定期的な検査により、リンパ浮腫の発生や進行を把握し、早期に対応することが重要です。皮膚ケアとマッサージを行い、リンパの流れを改善しましょう。適切な運動と生活習慣の改善により、リンパ浮腫の予防が期待できます。

 

経済的負担と保険サポートの利用

がん治療には経済的負担が伴いますが、保険サポートを利用することで負担を軽減することができます。まずは、保険会社に自身の状況を正確に伝え、適切な保険プランを提案してもらいましょう。
また、以下の点に注意して保険プランを選択すると良いでしょう。
・医療費用の補償範囲
・実際の治療費と保険金のバランス
・入院中の生活費補償
・給付金の支払い方法
治療期間中の収入減による生活費の負担を軽減するため、入院中の生活費補償があるプランを選ぶことも重要です。また、給付金の支払い方法についても確認しておくと良いでしょう。

 

精神面でのケアと家族のサポート

乳がん患者にとって、精神面でのケアも大切です。以下の方法が効果的な精神面でのケアと家族のサポートを提供できます。
・乳がんに関する正確な情報の提供
・プロフェッショナルなカウンセリングの活用
・患者同士の交流や支援団体への参加
・家族と連携したケアの提供
正確な情報を提供し、患者の不安を軽減することが重要です。また、プロフェッショナルなカウンセリングを受けることで、精神面でのケアが可能です。患者同士の交流や支援団体への参加により、自分だけでなく他の患者とも助け合うことができます。家族と連携し、心身共にケアを行いましょう。

5.まとめ

乳がん治療は、患者と医療チームが共に進めることが重要です。乳がん手術後のリンパ浮腫対策や経済的負担の軽減、精神面でのケアと家族のサポートが大切です。
正確な情報の提供と適切なケアができるよう、乳がんに関する知識を深めましょう。

快適医療ネットワーク理事長

監修 
医学博士 上羽 毅

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。