• 2024.11.18
  • 乳がん

乳がんホルモン療法を解説!効果と副作用について

乳がんにおけるホルモン療法は、多くの女性患者にとって有効な治療方法です。
このコラムでは、乳がんとホルモンの関係性や、ホルモン療法が乳がん治療に効果的な理由を説明し、ホルモン受容体陽性の乳がんについて解説します。
さらに、乳がんのホルモン療法の種類と特徴、主にタモキシフェン療法、アロマターゼ阻害薬、LH-RHアゴニスト療法を詳しく解説します。各療法の副作用や対処法についても触れています。
閉経前・閉経後の女性への適用、治療期間についても言及し、乳がんにおけるホルモン療法中の生活と注意点を提案します。
このコラムを読むことで、ホルモン療法についての理解が深まり、より良い治療結果を得るための知識が得られます。

1.乳がんホルモン療法の基本的な理解

乳がんにおけるホルモン療法は、乳がんの治療方法の一つであり、女性ホルモンであるエストロゲンが乳がん細胞の増殖を促進することに着目し、エストロゲンの働きを抑制する薬物を使用する治療です。
一般的に、手術や放射線治療、化学療法の後に行われますが、病状によっては、予防的に投与されることもあります。主な薬剤はタモキシフェンやアロマターゼ阻害剤があり、服用期間は通常5年から10年です。
副作用に関しては、個人差がありますが、骨折リスクの低下や関節痛などが挙げられます。そのため、適切な副作用のマネジメントが必要です。
ホルモン療法は効果のあるがんの種類や状況によって適用されるため、医療チームとの相談が不可欠です。

 

乳がんとホルモンの関係性

乳がんの発生には女性ホルモンであるエストロゲンが大きく関与しています。エストロゲンは乳腺細胞の増殖を刺激し、遺伝子レベルでの突然変異が起こることで、がん細胞が発生するリスクが高まるとされています。
エストロゲンは卵巣や体内の組織で生成され、乳がん細胞の表面にあるホルモン受容体と結合して、細胞の増殖を促進します。ホルモン療法によって、エストロゲンの量や働きを抑制することで、乳がん細胞の増殖を阻止します。

 

ホルモン療法が乳がん治療に効果的な理由

ホルモン療法が乳がん治療に効果的な理由は、エストロゲンの働きを抑制することで、乳がん細胞の増殖を阻止し、再発リスクを低減する点にあります。
具体的には、ホルモン受容体陽性の乳がん患者が対象で、タモキシフェンやアロマターゼ阻害剤などの薬物が使用されます。これらの薬はエストロゲンの生産や働きを抑制し、乳がん細胞の増殖を防ぐ効果があります。
また、ホルモン療法は通常、手術や放射線治療、化学療法の後に行われ、これらの治療と相乗効果を生み出すため、総合的な乳がん治療として有効です。

 

ホルモン受容体陽性の乳がんとは

ホルモン受容体陽性の乳がんとは、乳がん細胞の表面にエストロゲン受容体やプロゲステロン受容体が存在しているタイプの乳がんです。これにより、女性ホルモンが乳がん細胞の増殖を促進させるため、ホルモン療法が効果的な治療法となります。
ホルモン受容体陽性の乳がん患者は、全体の約70%とされ、陽性であればホルモン療法が適用される可能性が高まります。適切な治療法を選択するため、確定診断時にホルモン受容体の検査が行われます。

 

 

2.乳がんホルモン療法の種類と特徴

乳がんホルモン療法には、主にタモキシフェン療法とアロマターゼ阻害薬療法の2種類があります。タモキシフェンは、エストロゲン受容体陽性の乳がん細胞の増殖を抑え、再発リスクを低下させる効果が認められており、乳がん患者の治療に広く用いられています。一方、アロマターゼ阻害薬は、閉経後の女性に対して効果が高い治療法で、エストロゲン生成を抑制することによって、乳がん細胞の増殖を防ぐ働きがあります。
それぞれの療法は、個人の症状や体質、治療経過に応じて選択されるため、医療専門家と十分な相談が必要です。

 

タモキシフェン療法

タモキシフェン療法は、エストロゲン受容体陽性の乳がん細胞に対して有効な治療法で、エストロゲンと結合して乳がん細胞の増殖を抑制する作用があります。特に、手術や化学療法、放射線療法と併用されることが一般的で、術後の再発予防に効果を発揮します。
タモキシフェン療法は副作用が比較的少なく、長期間投与されることが多いですが、患者さんの症状や体質によっては、関節痛や出血リスクが増加することがあります。そのため、治療中の定期検診や副作用に対する注意が必要です。

 

アロマターゼ阻害薬

アロマターゼ阻害薬療法は、閉経後の女性を対象としたホルモン療法で、骨密度低下や関節痛が主な副作用です。この治療法は、エストロゲン生成を抑制することで、乳がん細胞の増殖を防ぐ働きがあります。アロマターゼ阻害薬には、リセマロール、アナストロゾール、エキセマストールなどがあり、それぞれ病状や体質に応じて処方されます。
アロマターゼ阻害薬療法を受ける場合、骨密度低下による骨折リスクの増加に注意が必要です。また、関節痛を伴う場合があるため、適切な運動や生活習慣の改善が推奨されます。治療に関する相談は、担当医や薬剤師と十分に行い、個々の状況にあった治療法を選択することが大切です。

 

LH-RHアゴニスト療法

LH-RHアゴニスト療法は、乳がん治療において、ホルモン受容体陽性の患者に対する有効な治療方法です。この療法のメリットとして、手術や放射線治療といった侵襲的な治療が不要で、副作用も比較的少ないことが挙げられます。また、治療効果の持続時間が長く、乳がんの再発や転移のリスクを低減できることも大きな利点です。
ただし、デメリットとして、一部の患者において効果が現れない場合があります。また、副作用は比較的少ないものの、骨密度低下や関節痛、更年期症状の悪化などが報告されています。症状が強い場合は、医師と相談し、治療法の見直しが必要となることがあります。

3.乳がんホルモン療法の適用と治療期間

乳がんホルモン療法は、ホルモン受容体陽性の乳がん患者に適用される治療法です。手術後の補助療法として行われることが一般的で、治療期間は通常5年程度ですが、病状や患者の体調により、期間が延長されることもあります。主な治療薬には、タモキシフェンやアロマターゼ阻害薬などがあり、医師と相談の上、最適な治療法が選択されます。

 

閉経前のホルモン療法

閉経前の女性へのホルモン療法では、エストロゲンの分泌を抑制し、乳がん細胞の増殖を阻止することが目的です。このため、LH-RHアゴニストやタモキシフェンが主に使用されます。しかし、副作用として月経不順や更年期症状が出ることがあり、治療開始前の十分な説明と、副作用発生時の適切な対応が求められます。

 

閉経後のホルモン療法

閉経後の女性へのホルモン療法では、アロマターゼ阻害薬が主に用いられます。これは、閉経後の女性のエストロゲンは、卵巣以外の組織で生成されるため、エストロゲン生成の原因となるアロマターゼ酵素を抑制することが効果的であるためです。ただし、アロマターゼ阻害薬は骨密度低下のリスクが高まるため、治療開始前に骨密度検査を行い、適切な予防措置を講じることが重要です。

 

乳がんホルモン療法の治療期間

乳がんホルモン療法の治療期間は、一般的に5年から10年とされています。この治療期間が長い理由は、乳がん細胞の増殖を抑制し、再発リスクを低減させるためです。
乳がんは、女性ホルモンであるエストロゲンが細胞の受容体に結合することで増殖するタイプが多く、ホルモン療法はこのエストロゲンの働きを阻害することで効果を発揮します。
乳がんホルモン療法には、タモキシフェンやアロマターゼ阻害薬などの種類があり、患者の年齢や閉経前後、腫瘍のタイプなどによって最適な治療法が選択されます。
治療期間中、患者は定期的に診療を受け、症状や副作用の確認を行います。また、乳がん患者の生活や予防に関するアドバイスも提供されることが一般的です。
乳がんホルモン療法の治療期間は長いですが、再発リスクを低減させるために必要な期間であり、医師と相談しながら適切な治療を続けることが大切です。

 

乳がん患者様の改善症例

 

4.ホルモン療法の副作用とその対処法

ホルモン療法は、乳がんの治療効果が期待できるものの、副作用が発生することがあります。主な副作用としては、関節痛、骨密度の低下、閉経症状、リスクの増加が挙げられます。

・関節痛: 関節痛が生じる場合、適度な運動や温熱療法などで痛みを緩和できることがあります。重度の痛みの場合は医師に相談してください。
・骨密度の低下: ホルモン療法によって骨密度が低下する場合、カルシウムやビタミンDの摂取、適度な運動で対策できることがあります。
・閉経症状: 閉経症状が現れる場合、漢方薬や生活習慣の改善によって症状を改善できることがあります。重度の症状が続く場合は医師に相談してください。
・リスクの増加: 乳がん以外の癌のリスクが増加する場合もあります。定期的な検査を受けて早期発見・治療を心掛けましょう。

副作用が発生した場合、医師と相談し、適切な対策を講じることが重要です。

 

タモキシフェン療法に伴う副作用と対策

タモキシフェン療法は、乳がん治療の一つでエストロゲン受容体陽性の乳がんに対して効果がありますが、副作用が生じることがあります。主な副作用としては、閉経症状、骨密度の低下、血液凝固異常、子宮内膜増殖が挙げられます。

・閉経症状: 熱感覚や不眠などの閉経症状が現れる場合、漢方薬や生活習慣の改善によって症状を改善できることがあります。
・骨密度の低下: タモキシフェンによって骨密度が低下する場合、カルシウムやビタミンDの摂取、適度な運動で対策できることがあります。
・血液凝固異常: 血栓症のリスクが増加する場合、医師と相談し適切な予防策を講じましょう。
・子宮内膜増殖: 子宮内膜増殖のリスクがあるため、定期的な検査を受けることが重要です。

タモキシフェン療法に伴う副作用が発生した場合、適切な対策を講じることが重要です。副作用が気になる場合は、医師に相談しましょう。

 

アロマターゼ阻害薬の副作用への対処法

アロマターゼ阻害薬は乳がん患者の治療に用いられる薬で、エストロゲンの産生を抑制することでがん細胞の増殖を阻止します。
しかし、副作用も存在するため、対処法を知っておくことが重要です。主な副作用は関節痛や骨の低下、更年期障害様の症状などです。
それらの対処法は以下の通りです。

・関節痛:適度な運動や痛み止めの使用、リウマチ科の診療を受ける
・骨の低下:カルシウムやビタミンDの摂取、適度な運動、骨密度検査の定期受診
・更年期障害様の症状:漢方薬の服用やアロマテラピー、心療内科の受診

副作用に悩む患者はまず医師や看護師と相談し、適切な対処法を見つけることが大切です。

 

ホルモン療法中の生活と注意点

ホルモン療法は、手術や放射線治療といった一般的ながん治療とは異なり、日常生活により密着しています。そのため、治療中の生活と注意点を把握しておくことが重要です。具体的なポイントは以下の通りです。

・食事:栄養バランスの良い食事を心がけ、アルコール摂取を控える
・運動:医師の指導のもと、適度な運動を行う
・服薬管理:薬の種類や服用量、タイミングを正確に把握し、忘れず服用する
・副作用対策:症状に応じた対策を行い、症状が悪化した場合は医師に相談する
・定期検診:治療期間中、定期的に病院で検査や診察を受け、治療の進捗を確認する

治療中の注意点を守り、適切な生活を送ることで、ホルモン療法の効果を最大限に引き出すことができます。

5.まとめ

乳がんにおけるホルモン療法は、治療効果を最大限に発揮するために、日常生活や副作用への対処が重要です。患者自身が治療に関する知識を持ち、医師と良好なコミュニケーションを保つことで、適切な治療が行われるでしょう。また、定期検査や副作用対策にも気を配ることが大切です。このコラムで得た情報を参考に、ぜひ自分に合った対策を見つけ、より良い治療結果を目指してください。
次のアクションとして、医師や看護師に相談して治療に効果的な環境設定を進めることをお勧めします。

快適医療ネットワーク理事長

監修 
医学博士 上羽 毅

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。