• 2025.12.04
  • 肝臓がん

肝臓がんは本当に治るのか?治療法と新しい希望

肝臓がんと診断されると、多くの方が「治る可能性はあるのか」「どのような治療法が選択できるのか」といった不安を抱きます。
医療の進歩により、手術や焼灼、TACE、化学療法など、状態や腫瘍の大きさ、肝機能をふまえた様々な方法が利用できるようになりました。
また、患者自身が希望を持てるよう、血液検査や画像診断による早期発見の重要性も高まっています。
このコラムでは肝臓がんの原因やリスク、外科・内科的療法の詳細、予防策に至るまで、最新の知見とともに解説します。
今後への不安が少しでも和らぐきっかけとなるための情報をお届けします。

【最新情報】研究を重ねた結果、がんのタイプを選ばず勢いを抑える「肝臓がん克服に必要な成分」を特定しました。

1.肝臓がんの最新の治療法と可能性

肝臓がんの治療法は近年大きく進歩しています。手術による肝切除は依然として有力な治療方法ですが、病状や肝臓の機能、腫瘍の場所や大きさ、全身状態などにより選択肢が増えてきました。
ラジオ波焼灼療法・マイクロ波焼灼療法などの局所療法は、肝臓の機能が低下していても比較的適応可能であり、より身体への負担を軽減できる方法として注目されています。
肝動脈化学塞栓療法や肝動注化学療法は、動脈にカテーテルを通して抗がん剤や塞栓物質を直接投与する方法で、多くの患者さんに利用されてきました。
薬物療法では、分子標的薬による治療が一般的となり、がん細胞の増殖や血管新生を抑制する効果が期待されています。
また、肝予備能(肝臓がどれだけ余力を持って機能しているのかを示すもの)が非常に悪い場合には、肝移植も適応となる場合があります。
これら多様な治療法が選択肢となることで、個々の患者さんに合った医療を受けられる可能性が広がっています。
今後も研究が続けられ、新しい方法や組み合わせがさらに登場すると考えられます。
個人の状態に合わせた治療が主流となるいま、医師とよく相談しながら最適な方法を選ぶことが大切です。

肝臓がん1

肝臓がんの基本知識

肝臓がんは、肝臓にできる悪性腫瘍です。
肝臓は消化や解毒、栄養の貯蔵など、体に欠かせない多くの機能を担う重要な臓器です。肝臓がんには、肝細胞がんや胆管細胞がんなど、いくつかの分類があります。
日本ではC型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルス、アルコールや脂肪肝など慢性的な肝臓の炎症から発症するケースが多く、中高年の患者さんが多い傾向にあります。
肝臓がんは「沈黙の臓器」といわれる肝臓の性質もあり、初期には自覚症状がほとんど現れません。進行すると、腹部のしこり、腹水、黄疸、体重減少などの症状が出ることがあります。
日本では健診や定期的な血液検査、腹部エコー、CT、MRIなどの画像検査により、早期発見に取り組んでいます。
肝臓がんは診断時に進行している場合もありますが、治療法の進歩により、生存率が改善していることも特徴です。
定期的な検査や生活習慣の見直しが、早期診断と治療の鍵となります。

 

進化する治療法

肝がんの治療法はここ数年で大きく進歩しました。新しい薬やさまざまな外科的方法、カテーテルを用いた療法が開発され、以前と比べて体の負担が少ない選択肢が増えたことで、外来での治療も可能になっています。
その背景には、がん細胞の分子レベルでの研究や、血管を塞栓するTACE(肝動脈化学塞栓療法)、血液を通じて抗がん剤を届ける肝動注化学療法の進歩があります。
肝臓は消化や解毒などの役割を持つ重要な臓器で異常があっても症状が現れにくく、数値による検査と定期的な健診の重要性も高まっています。
AST・ALT・γ-GTPなどの肝機能マーカーや、血小板数の推移に注目することで、異変を早期に捉えることが可能です。
これらの指標や画像診断によって、がんのステージや状態を早期につかみ取り、患者さんの生活や希望に寄り添った治療の選択ができるようになりました。
外科・内科双方での選択肢が広がったことで、治癒や長期生存が十分期待できます。

肝臓がん症例一覧へ

2.肝臓がんの早期発見を目指す

肝臓がんの早期発見には、定期的な検査が重要です。特にC型やA型の肝炎ウイルスをお持ちの方は、3ヶ月に一度の血液検査や超音波検査を受けることが推奨されています。
血液検査では、肝機能検査項目だけでなく血小板や白血球数のチェックも大切です。血小板が著しく減少し10万以下になると、肝臓がんが発生するリスクが高くなると考えられています。
また、腫瘍マーカーの変動も注意が必要で、数値が上昇する場合は、より詳しい精密検査が必要となります。
技術の進歩によって、腹部超音波検査でも1cm未満の小さな腫瘍の発見が可能となりましたが、肝臓の部位によっては見つけにくい場合もあるため、ときにはCT検査やMRIなどを併用することが望ましいです。
異常があればさらに詳しく調べるため、ダイナミックCTや血管撮影、超音波ガイド下針生検などの検査が行われることがあります。
これらの検査結果をもとに、医師が的確な診断と治療計画を立てます。

肝臓がん2

 

早期発見の重要性

肝臓がんは自覚症状がないまま進行することが多い病気です。肝臓は体内で最大級の臓器で、発症初期には自覚症状が現れにくいため、症状がなくても安心せず、定期的な検査を受けることがとても大切です。
特に、肝炎ウイルスの感染や慢性肝疾患など発がんリスク因子をお持ちの方は、継続的な診療と検査を受けながら、自身の肝臓の状態を知ることが必要です。
血液検査や画像診断によって定期的にチェックすることで、わずかな異常を早い段階で捉え、治療の選択肢が広がる可能性が高まります。
肝臓がんは早期であれば治療による効果が大きく、生存率の向上も期待できます。
日々の生活の中で健康診断や定期検査を意識し、小さな変化を逃さない姿勢が、健康な暮らしを守るうえで重要です。

 

早期発見のための検査

肝臓がんのリスクがある方は、特に定期的な受診による検査が求められます。
肝臓は大きな臓器ですが、発がん初期には自覚症状が出ないことが多く、症状が感じられなくても病気が進行している場合があるため注意が必要です。
血液検査では、肝機能や腫瘍マーカーの変化、血小板や白血球の数値などが診断の手がかりとなります。
画像検査では、腹部超音波検査が一般的ですが、腫瘍が小さい場合や位置によっては見逃しやすいため、CTやMRIなど精密な検査を組み合わせて行うこともあります。
定期的な健診や検査により、異常の早期発見・早期治療が可能となります。
こうした検査を怠らず、少しでも異常があれば主治医と相談して適切な対応をとることが大切です。

【最新】肝臓がん患者様の克服症例を公開いたします。

3.肝臓がんの治療法とは

肝臓がんには多様な治療法があります。その主な方法としては、手術(肝切除)、ラジオ波焼灼療法・マイクロ波焼灼療法など体への負担が少ない局所療法、カテーテルを通じて薬剤や塞栓物質を届ける肝動脈化学塞栓療法や肝動注化学療法があります。
また、進行した腫瘍に対しては分子標的薬などを中心とした薬物療法も用いられ、腫瘍の血管新生や細胞増殖を抑える効果が期待できます。
肝臓の機能が著しく低い場合や広範囲に病変がある時には肝移植も検討されます。
どの治療法を選択するかは、がんの分類や状態、全身状況や肝予備能、症例ごとの適応などを総合的に判断した上で決まります。
最適な療法を選ぶためには、信頼できる医師と十分に話し合い、ご自身の体に合った選択を重ねることが大切です。

肝臓がん3

外科手術

肝切除は、がんが肝臓内に限定されている場合や肝予備能が十分にある場合に選択される治療法です。
肝臓は生命維持に欠かせない機能を持つため、胃などの消化管のように全摘することはできません。そのため、腫瘍のある部分を残せるだけ多く切除しつつ、肝臓の働きが維持できるかどうかが手術の可否を左右します。
肝硬変が進行し機能が低下していると、腫瘍の進行度が高くなくても切除よりも別の療法が勧められる場合があります。
さらに、もし肝予備能が極端に悪いものの腫瘍が肝内に留まっている場合は、肝移植が治療の選択肢となります。
手術は腫瘍を物理的に取り除く唯一の方法であり、適応があれば根治を目指すことができます。

 

局所療法

局所療法は、腹部超音波ガイドなどを用いて体の外から腫瘍部分に直接針を刺し、熱によって腫瘍細胞を凝固壊死させる方法です。
ラジオ波焼灼療法やマイクロ波焼灼療法が代表的で、手術に比べて体への負担が大変少なく済むのが特徴です。
この治療は、肝予備能がやや悪い患者さんや高齢者にも適しており、特に腫瘍の大きさが3cm以下、数が3個以内であれば優れた効果が期待できます。
入院期間も短く、外来で行える場合もあるため、患者さんの生活への影響も比較的限定的です。
病院によってはさまざまな局所療法の中から、個々の病態や症例に合わせて最適な方法を選べるよう体制が整っています。

 

薬物療法

薬物療法は、最近では分子標的薬を中心に広く行われています。
肝臓がんは血流が豊富なため、血管新生を抑える治療が重要です。ソラフェニブやレンバチニブ、レゴラフェニブ、ラムシルマブ、カボザンチニブなど多様な薬剤が利用されており、それぞれ特長や効果が異なります。従来の標準治療では十分な効果が得られない場合にも、これらの薬剤が新たな選択肢となっています。
さらに免疫チェックポイント阻害薬と分子標的薬の併用療法など、新しい組み合わせ治療も研究および臨床の場で導入が進んでいます。進行がんや肝切除・局所療法が難しい場合には、全身状態や肝機能を考慮しつつ適切な薬物治療が行われます。これまで治療が難しかった症例にも光が差しつつあるのが大きな変化です。

肝臓がん克服者に学ぶ克服の秘訣

4.肝臓がんの予防とリスク管理

肝臓がんの発症リスクは、主に慢性肝炎や肝硬変といった慢性的な肝障害を抱える方に高くなります。
そのため、慢性肝炎の状態から定期的に血液検査や腹部エコー・CT検査を受けることで早期発見と治療が可能です。
たとえば、慢性肝炎では発症率が年0.2~5%程度ですが、肝硬変となると年4~7%もの高いリスクになります。
定期的な検査が継続されることで、がんの発見が早まり、より効果的な治療が期待できます。
一方で、肝臓がんは再発しやすい病気でもあり、仮に完全切除できた場合も、肝臓内の別の場所から新しいがんが生じることが少なくありません。
そのため、治療後も肝臓専門医のもとで定期的な診療・検査を続けていくことが重要です。
QOLを保った生活を続けるために、日々の生活の中で予防と管理を意識しましょう。

肝臓がん4

肝臓がんのリスク因子

我が国で肝臓がんを発症する方の約70%はC型肝炎ウイルス、約20%はB型肝炎ウイルスの感染が背景にあると報告されています。
B型肝炎の場合は比較的若い年代から発症することがありますが、C型肝炎では長年の慢性感染が進んで肝硬変となり、中高年で肝臓がんに至るケースが多く見られます。
肝硬変に進行した場合、がんへの発展リスクが特に高まるため、定期的な検査や早期介入の重要性が増しています。
また、B型・C型肝炎以外にも、アルコール性肝障害や生活習慣病、脂肪肝などが危険因子となります。
近年、肝臓がんでの死亡者数が増加傾向を示している背景には、かつての輸血や医療行為による感染例の高齢化、肝硬変への進行が挙げられます。
リスク因子を知り、早期から注意を払うことが発症予防に役立ちます。

 

予防策と生活習慣の見直し

肝臓がんの予防には日常生活の見直しが大切です。
まず肝炎ウイルスの感染予防のため、予防接種や感染経路に注意しましょう。B型肝炎のワクチン接種は効果的な方法とされています。
また、アルコールの過剰摂取は肝臓への負担や肝硬変、肝がんのリスクを高めるため、適量を守ることが重要です。
肥満や糖尿病、脂肪肝も危険因子となるため、バランスのよい食事や適度な運動を心掛け、血液検査で肝機能を定期的にチェックする習慣を持ちましょう。
さらに医療機関で定期検診を受け、異常があれば早めに外来受診することが肝臓がんの発症・進行予防に繋がります。
自分自身の生活リズムや体調に目を向けることが、健康な肝臓を保つための第一歩です。

5.おわりに

肝臓がんに立ち向かうためには、早期発見と適切な治療の選択がとても大事です。
ご自身やご家族の健康を守るためにも、定期的な健康診断や血液検査を続けることをお勧めします。
肝臓がんは治療法が進歩しており、信頼できる経験豊かな医師に相談することで、より安心して療養生活を送ることができます。常に最新の医療情報を取り入れ、困った時には専門家の力を借りてください。
あなた自身や周りの大切な方のためにも、これからの健康管理を大切にして行動してください。
もし何か気がかりなことがあれば、早めの受診や情報収集から始めましょう。

快適医療ネットワーク理事長

監修 
医学博士 上羽 毅

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。