• 2025.03.14 2026.08.26
  • 肝臓がん

肝臓がんの抗がん剤治療、知っておきたい基本とやわらぐケア

肝臓がんと診断され、これから治療が始まる、あるいはすでに治療を続けているという方の中には、「抗がん剤」という言葉だけで不安が大きくなってしまう方も少なくないのではないでしょうか。専門的な言葉が並ぶと、何をどう理解すればよいのか戸惑ってしまうこともあると思います。この記事では、肝臓がんの治療がなぜ必要になるのか、どのような治療法や薬があるのか、そして治療にともなう副作用とのつきあい方や、ご家族と一緒に治療法を選んでいくうえでのヒントを、できるだけやさしい言葉でお伝えしていきます。ご本人はもちろん、そばで支えるご家族の方にも、少しでも安心材料になれば幸いです。

1.肝臓がんの抗がん剤治療、基本のところを知っておきましょう

「抗がん剤」と聞くと、それだけで身構えてしまう方は少なくありません。急に専門的な言葉が並びはじめて、戸惑ってしまうこともあるかと思います。まずは、なぜこの治療が選ばれるのか、そのあたりから一緒に整理していきましょう。

注射器とクスリ瓶

肝臓がんには、肝臓の細胞そのものががん化する「肝細胞がん」と、肺がん・大腸がん・乳がん・胃がんなど、他の臓器にできたがん(原発巣)が肝臓に転移してできる「転移性肝がん」があり、原因や治療方針が異なります。

肝臓は、体内でも大きな臓器のひとつで、栄養の代謝や解毒など、たくさんの役割を担っています。肝臓がんの多くは、慢性の肝炎や肝硬変といった、もともとの肝臓の状態が背景にあるといわれています。血液検査や画像検査を行うと、腫瘍の場所や大きさ、ステージ(進行度)を確認することができます。手術で取りきれない場合や、がんが広い範囲・他の臓器への転移に及んでいる場合に、抗がん剤治療が検討されることがあります。がん細胞の増殖をおさえ、進行をゆるやかにすることが、この治療の大きな役割です。手術のように患部を直接切除するのではなく、薬の力で全身からアプローチする、という点が特徴です。

 【治療を受けるにあたって、心にとめておきたいこと】

  • 「治療=最終手段」ではないと知っておく
    抗がん剤治療は、外科的な切除や局所療法と組み合わせて行われることも多く、状態に応じて選ばれる選択肢のひとつです。
  • 担当医の説明を、その場でメモする
    専門用語が多く一度で覚えきれないことがあります。気になった言葉はその場でメモしておくと、あとで質問しやすくなります。
  • わからないことは、次の診察まで持ち越さない
    疑問はメモにためておき、次の診察で「前回の説明で気になったのですが」と切り出すと伝えやすくなります。

病院では、「治療の目的と、期待できる効果について、もう少し詳しく教えていただけますか」と聞いてみると、今の自分の状態に合わせた説明を受けやすくなります。治療方針について迷いが大きいときや、体調に大きな変化を感じたときは、次の診察を待たず、早めに医療機関へ相談することをおすすめします。

肝臓がんの治療というと抗がん剤ばかりを思い浮かべがちですが、実際には以下のような治療法があり、患者様お一人おひとりの状態に応じて組み合わせて用いられます。治療方針は大きく、外科的治療・局所療法・薬物療法の3つに分類されると考えるとわかりやすいかもしれません。

代表的なものが、がんの部分を切り取る「外科的切除」と、肝臓そのものを入れ替える「肝移植」です。肝移植には、ご家族などから肝臓の一部を提供してもらう「生体肝移植」という方法もあります。手術が体への侵襲が大きい場合や、可能性として体力面での負担が心配な場合には、より負担の少ない局所療法が選ばれることもあります。たとえば、針を刺してラジオ波で腫瘍を焼灼する「ラジオ波焼灼療法(RFA)」や、あらかじめ血管造影という検査で血管の状態を確認したうえで、足のつけ根の動脈からカテーテルを通し、がんに栄養を送る血管を塞いで抗がん剤を届ける「肝動脈塞栓療法(TACE)」などです。局所療法は、局所麻酔を使用して行われることが多く、従来の外科手術に比べて体への負担が少ないといわれています。

薬による治療にも幅があります。全身に薬をめぐらせる「全身薬物療法(化学療法)」と、がんに関わる特定のはたらきを狙う「分子標的薬」が代表的なもので、ソラフェニブやレンバチニブといった薬剤名を耳にすることもあるかもしれません。分子標的薬は、がん細胞が育つための血管の働きを阻害するなど、ピンポイントで作用するように設計されています。近年は、免疫のはたらきを利用した治療薬も選択肢に加わってきました。医療は日々進歩しており、より有効な新しい治療薬の開発も進められています。気になる方は、投与の方法や、臨床試験(治験)についても、医師に尋ねてみるとよいでしょう。なお、治療中は体力が落ちやすいため、感染の予防にも気を配ることが大切です。

どの治療法・薬が選ばれるかは、肝機能の状態(Child-Pugh分類などで評価されます)やがんの広がり方によって変わってきます。同じ「肝臓がん」であっても、人によって病状も異なり、治療の内容が異なるのは、こうした背景があるからです。一般的には、複数の診療科が連携しながら、その時々の状況に合わせて治療方針を検討していきます。肝がんの診療ガイドラインでも、こうした段階的な検討のすすめ方が推奨されています。

 【薬について、知っておくと安心なこと】

  • 薬や治療法の名前を、家族と共有しておく
    お薬手帳やメモに名前を残しておくと、ご家族が付き添えないときの受診でも安心です。
  • 「なぜこの治療法・薬なのか」を一度聞いてみる
    種類が違えば、期待できる効果も注意すべき点も変わってきます。理由を知ると、治療への納得感につながります。
  • 体調の変化は、遠慮せず伝える
    些細に思える変化でも、薬の使用量の調整に関わる大切な情報になることがあります。

「今使用している治療法は、他の方法に変更することもできますか」という質問は、治療の選択肢を確認するうえで役立ちます。治療の変更を含め、迷ったときはひとりで抱え込まず、担当医や看護師に相談してみてください。

肝臓がんは本当に良くならないのか?
同じ肝臓がんと向き合い、乗り越えた方がいます。実際の記録をご覧ください。

肝臓がん手術不可・余命2ヶ月の症例|11cm腫瘍も、転移も完全消失 肝臓がん余命3ヶ月の症例|肝臓は完全消失、肺転移も大幅縮小 3cmの肝臓癌が完全消失、2年経っても再発せず経過良好。

2.治療中に起こりやすい変化と、日々のやわらぐケア

治療が始まると、「こんなはずじゃなかった」と感じる体の変化に戸惑うことがあるかもしれません。だるさが抜けない、食欲がわかない、そんな日が続くと、気持ちまで沈んでしまいますよね。

悩んでいる人

抗がん剤治療にともなう副作用としては、倦怠感、食欲の低下、吐き気、手足のしびれなどが知られています。局所療法を行った場合には、治療した部位の痛みや発熱、まれに出血などの合併症がしばらく続くこともあります。もともと肝臓の機能が弱っている方では、治療によって肝不全に近い状態になるリスクにも注意が必要とされています。すべての方に同じように出るわけではなく、症状の強さや現れ方には個人差があります。あらかじめ「起こりうること」として知っておくだけでも、いざというときの心構えが変わってきます。

 【副作用と上手につきあうヒント】

  • 症状日記を、簡単でいいのでつけてみる
    「今日はだるさが強かった」程度のメモでも、診察のときに体調の変化を伝えやすくなります。
  • 無理に「普段通り」を目指さない
    だるさや食欲不振があるときは、家事や予定を減らして、体を休めることを優先しましょう。
  • 口の中の変化にも目を向ける
    味覚の変化や口内炎が起こることもあります。柔らかく薄味のものを選ぶと、食べやすくなることがあります。栄養バランスを気にしすぎず、食べられるものから少しずつ取り入れましょう。

「この症状は、治療の副作用として想定される範囲でしょうか」と聞くことで、様子を見てよいものか、対処が必要なものかの見極めがしやすくなります。高熱や強い痛みなど、いつもと違う強さの症状があるときは、我慢せずすぐに医療機関へご連絡ください。

副作用とのつきあい方がわかってくると、日々の過ごし方も少しずつ楽になっていきます。ここでは、ご本人はもちろん、そばで支えるご家族にも知っておいていただきたい工夫をお伝えします。

だるさが強い日は、家事を減らして横になる時間を増やすだけでも、体への負担がやわらぎます。食欲がないときは、一度にたくさん食べようとせず、少量を何回かに分けてとる方法が向いていることもあります。手足のしびれがあるときは、熱いものに触れる際にやけどをしないよう、いつも以上に注意が必要です。

 【つらい日を少しでも楽にする工夫】

  • 「食べられる時に、食べられるものを」でよしとする
    無理に3食きちんと食べようとせず、そのときの体調や栄養状態に合わせることが大切です。
  • ご家族は、そばにいるだけでも十分な支えになる
    何かしてあげなければ、と気負わなくても、話を聞く時間そのものが安心につながります。
  • 一人で抱え込まず、周囲の力を借りる
    家事の分担や通院の付き添いなど、できる範囲で周囲に頼ることも大切な選択です。

「日常生活で、特に気をつけたほうがよいことはありますか」と聞いておくと、ご家庭での過ごし方の目安が具体的になります。症状が急に強くなったときや、水分や食事がほとんどとれない状態が続くときは、早めに病院へ相談してください。

3.治療法をどう選んでいくか、ご家族とともに

治療の選択肢が複数あると聞くと、「どれが自分にとって正しいのか」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。実は、治療方針は一つの基準だけで決まるものではありません。

医者が患者に説明している

がんの広がり方や肝臓そのものの働き、これまでの治療の経過など、いくつもの要素を組み合わせて、今の状態に合った方法が検討されます。診断の際には、針を刺して組織の一部を採取する「穿刺」という検査で、詳細を調べることもあります。骨や肺など、離れた場所への転移が見つかった場合は、それに応じた治療が加わることもあります。手術・局所療法・薬による治療のどれか一つではなく、複数を組み合わせて併用する場合もありますし、治療後に再発が見つかり、あらためて方針を検討し直すこともあります。経過が良好であれば、外来に通いながら治療を続けていくことも珍しくありません。同じ診断名でも治療の進め方が人によって異なるのは、この積み重ねがあるからです。

 【治療方針を考えるときのヒント】

  • 「今の自分の状態」を基準に考える
    他の方の体験談と比較しすぎず、自分自身の状態に基づいた説明を受けることを大切にしましょう。
  • セカンドオピニオンも選択肢のひとつと捉える
    別の医師の意見を聞くことは、決して失礼にはあたりません。納得して治療を選ぶための手段です。
  • 治療の見通しを、ざっくりとでも把握しておく
    次に何を確認すればよいかがわかると、心の準備がしやすくなります。

「今の治療方針になった理由を、あらためて教えていただけますか」と聞くことで、治療の全体像が見えやすくなります。方針そのものに強い不安や疑問が残るときは、次回の診察を待たず、早めに相談の機会を持つことをおすすめします。

治療を選ぶ過程では、医学的な情報だけでなく、ご本人がどう過ごしたいかという気持ちも、とても大切な判断材料になります。

治療の副作用をできるだけ抑えたいのか、少しでも進行を遅らせることを優先したいのか。その答えは、人によって違って当然です。医療チームは、そうした希望を聞いたうえで、一緒に治療の方向性を考えてくれる存在です。遠慮せず、今感じていることを率直に伝えてみてください。

 【後悔しないための心がけ】

  • 希望や不安を、紙に書き出してみる
    頭の中だけで考えると整理しづらいことも、書き出すことで伝えやすくなります。
  • ご家族の意見と、ご本人の希望を分けて考える
    それぞれの立場で感じ方が違うのは自然なことです。まずはご本人の気持ちを軸に話し合いましょう。
  • 治療の選択肢は、以前より広がってきていると知っておく
    身体への負担が比較的少ない治療法も増えてきており、治療の選び方にも幅が出てきています。

「体への負担が少ない治療法についても、選択肢として教えていただけますか」と聞いてみることで、今の状態に合った幅広い情報を得やすくなります。治療の方向性に迷いが続くときは、我慢せず、医療チームに率直に相談してみてください。

4.まとめ

治療が始まってから今日まで、たくさんの初めてに向き合い、よくここまで頑張ってこられました。ご本人はもちろん、そばで支え続けているご家族の存在も、決して当たり前のものではありません。治療を続けていく中では、通院や治療にかかる費用のことが気になる場面も出てくるかもしれません。そうした経済面の不安に寄り添う公的な支援制度もありますので、気になる際はぜひ相談窓口をのぞいてみてください。当法人のサイトでも、日々のケアに役立つ情報をご紹介しております。がんと向き合う日々のなかに、少しでもホッとできる時間が増えますように。気になる他のお悩みも、ぜひ一緒にのぞいてみてくださいね。

快適医療ネットワーク理事長

監修 
医学博士 上羽 毅

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。