• 2025.06.02 2026.09.25
  • 膵臓がん

膵臓がんの初期症状とは?見つかるきっかけのサインと検査・治療の流れ

「膵臓がんは初期症状が出にくい」と聞き、ご自身やご家族に起きていた変化を振り返っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「あの背中の痛みや体重の減少がサインだったのでは」と、考え込んでしまうこともあるかもしれません。膵臓は胃の裏側、体の奥深くにある臓器です。そのため、がんが小さいうちは自覚できる変化がほとんどありません。一方で、黄疸や糖尿病の急な悪化をきっかけに見つかり、手術につながる方もいます。画像検査や薬物療法も進歩を続けており、治療の選択肢は少しずつ広がってきました。

この記事では、膵臓がんの基本的な情報と初期に現れやすい症状の特徴、リスク要因、診断までの検査、主な治療法を順に解説していきます。医師から説明を受けるときや、聞きたいことを整理するときの参考にしていただければと思います。

1.膵臓がんの概要と重要性

症状の話に入る前に、膵臓の役割と膵臓がんの特徴を押さえておきましょう。膵臓の位置や働きは、この後に紹介する症状が起こる仕組みと深く関わっています。

疑問を持つ人

膵臓がんの多くは、膵液の通り道である膵管から発生する「腺がん」というタイプです。膵臓は胃の後ろにある細長い臓器で、十二指腸側から順に膵頭部・膵体部・膵尾部と呼ばれます。

膵臓には、大きく分けて2つの働きがあります。ひとつは、食べ物の消化を助ける膵液をつくり、十二指腸へ分泌する働きです。もうひとつは、血糖値を調節するインスリンなどのホルモンを、血液中に送り出す働きになります。

すい臓がんは周囲へ広がろうとする性質が強く、小さいうちからリンパ節や肝臓など別の臓器へ転移しやすい点が特徴です。膵臓は消化と血糖の調節の両方を担っているため、がんができると、その両面に関わる症状が現れることがあります。

国立がん研究センターの統計によると、膵臓がんと新たに診断される方は年間約4万7千人です。がんによる死亡数では、肺がん、大腸がんに次いで3番目に多いがんです。

また生涯のうちに膵臓がんと診断される確率は、男性で約37人に1人、女性で約36人に1人とされています。胃がんや乳がんと比べると罹患数は多くありません。それでも死亡数が上位にあるのは、発見された段階ですでに進行していることが多いためです。

がん全体の5年相対生存率が6割台であるのに対し、膵臓がんは1割台前半にとどまります。ただしこれは、すべてのステージを合わせた数値です。がんが膵臓の中にとどまった状態で見つかり、手術を受けられた方の場合は、この数字よりも生存率が高い傾向があります。

なお、生存率は過去に診断された方のデータから算出されているため、近年の治療の進歩は十分に反映されていない可能性があります。

膵臓がんは本当に良くならないのか?
同じ膵臓がんと向き合い、乗り越えた方がいます。実際の記録をご覧ください。

CA19-9が9000台の膵臓がん末期症例|余命を超え、マーカーが正常値まで低下 膵臓がん手術不可・余命3ヶ月の症例|転移は消失・手術で完全切除 膵臓がん完全に消失した人の症例|4.2cmの癌が消失し、2年後も再発なし

2.膵臓がんの初期症状とは

ここからは、膵臓がんの初期にどのような変化が起こりうるのかを見ていきます。あわせて、ほかの病気と見分けにくい理由についても取り上げます。

体調が優れない女性

膵臓がんには特有の初期症状がなく、がんが小さい段階では無症状のことがほとんどです。

膵臓は、胃や十二指腸、大腸、肝臓などの臓器に囲まれた体の奥にあります。腫瘍が小さいうちは周りを圧迫しにくく、自覚症状が出にくいです。ただしがんが大きくなると、腹痛や食欲不振、体重減少、黄疸、腰や背中の痛みなどが現れやすくなります。急に糖尿病を発症したり、悪化したりすることもあります。

症状の出方は、がんのできた場所でも変わります。膵頭部のがんは胆管に近いため、比較的早い時期に黄疸が出ることがあります。これに対し、膵体部や膵尾部のがんは、ある程度大きくなるまで症状が出にくいのが実情です。

早い段階で気づくことが難しいのは、膵臓という臓器の位置や構造によるところが大きいと考えられます。

膵臓がんの症状は、胃炎や胆石など一般的な消化器の病気とよく似ているため、見過ごされやすいのが現状です。

みぞおちの重苦しさや消化不良、なんとなく続くだるさは、多くの方が日常的に経験する不調です。胃の不調と考えて市販薬で様子を見るうちに、時間がたってしまうことも珍しくありません。加えて、膵臓がんには胃がんや大腸がんのような、国の指針に基づく検診が定められていません。症状がない段階で見つかる機会が限られていることも、発見の遅れにつながっています。

こうした症状は膵臓がん以外の病気でも起こるため、原因を確かめるには画像検査などが必要になります。そのため不調が長引く場合は、かかりつけの医療機関に問い合わせて受診し、必要に応じて専門の病院を紹介してもらうことが一般的です。

3.膵臓がんの初期症状5選

続いて、膵臓がんが見つかるきっかけになりやすい5つの症状を取り上げます。それぞれの症状について、起こる仕組みとあわせて説明します。

お腹が痛い女性

黄疸は皮膚や白目が黄色くなる症状で、特に膵頭部のがんで見られやすいサインです。

肝臓でつくられた胆汁は、膵頭部の中を通る胆管から十二指腸へ流れ出ます。ここにがんができると胆管が圧迫され、胆汁の流れがせき止められてしまいます。その結果、胆汁の色素が血液中で増加し、体が黄色く見えるようになります。

【黄疸に気づくための観察ポイント】

  • 明るい場所で白目の色を見る
    皮膚よりも白目のほうが色の変化がわかりやすく、自然光の下なら判断しやすくなります。
  • 尿の色もあわせて確認する
    黄疸があると、尿が紅茶のような濃い色になることがあります。
  • かゆみの有無を記録しておく
    全身のかゆみを伴うこともあり、医師に伝えると診断の参考になります。

黄疸は胆石や肝炎などでも起こるため、原因の見極めには検査が欠かせません。治療中に白目や皮膚の色が変わったときは、胆汁の流れが悪くなっている可能性があるため、早めに担当医へ伝えてください。

食べる量は変わらないのに体重が減る、あるいは食欲そのものが落ちるといった変化は、膵臓がんでよく見られる症状です。

がんが膵管をふさぐと、消化酵素を含む膵液が十二指腸へ十分に届かなくなります。すると脂肪などの消化吸収がうまくいかず、食べても栄養が体に取り込まれにくくなります。脂っぽい便や下痢が続くのも、こうした消化機能の低下によるものです。さらに、がんそのものが体の代謝に影響し、全身の筋肉や脂肪が落ちていくこともあります。胃の近くでがんが大きくなると、胃もたれから食事量が減る場合もあります。

体重は、数字で変化を確かめられるサインです。日ごろから記録しておき、診察のときに医師へ伝えましょう。

みぞおちから背中にかけての鈍い痛みは、膵臓がんの代表的な症状のひとつです。

膵臓の周りには、痛みを伝える神経が網の目のように集まっています。がんが大きくなって神経や周囲の組織に広がると、上腹部や背中、腰に重く鈍い痛みが出やすくなります。一方で、背中の痛みは単なる腰痛と思われがちで、内臓の病気と結びつけるのが難しい症状でもあります。

なお、背中の痛みが現れている時点で、がんがある程度進行していることも少なくありません。痛みは我慢するものではなく、痛み止めの薬や神経ブロックといった方法で和らげることができます。

痛む場所や強さの変化を医師に具体的に伝えると、ご自身に合った痛み止めの種類や量を選ぶ手がかりになります。

生活習慣に大きな変化がないのに、糖尿病を急に発症したり悪化したりすることは、膵臓がんのサインになる場合があります。

膵臓には、インスリンを分泌して血糖値を下げる機能があります。がんによってこの働きが低下すると、血糖値が高い状態が続きやすくなります。特に気にかけたいのは、肥満や家族歴など思い当たる理由がないのに、中高年になって急に糖尿病と診断された場合です。食事や薬の状況は変わらないのに、治療中の糖尿病が悪化したときも同様です。

こうした場合は、膵臓の画像検査についても主治医に相談してみるとよいでしょう。血糖値の変化は、膵臓の働きに異常が起きていることを知らせるサインのひとつです。

便が白っぽい灰色になったり、尿が濃い茶色になったりする変化は、胆汁の流れが滞っていることを示すサインです。

便の茶色は、胆汁に含まれる色素によるものです。膵頭部のがんで胆管がふさがると、この色素が腸に届かず、便の色が薄くなります。反対に、行き場を失った色素は尿へ排出されるため、尿の色は濃くなっていきます。

【色の変化に気づいたときに残しておきたい記録】

  • 気づいた日と色をメモする
    「いつから」「どんな色か」を具体的に残しておくと、医師が状態を判断する材料になります。
  • 皮膚や白目の色もあわせて確認する
    黄疸が同時に起きていないかを見ることで、胆管の状態を知る手がかりになります。

毎日目にする排泄物の変化は、体の内側で起きていることを知らせてくれる身近な情報源です。

4.膵臓がんのリスク要因

次に、膵臓がんの発症に関わるリスク要因を整理します。遺伝による要因と、生活習慣や持病による要因に分けて見ていきます。

体調で悩みを抱える人形

親や兄弟姉妹、子どもに膵臓がんになった人が複数いる場合、膵臓がんの発生リスクが高くなることがわかっています。血縁のある家族の中で、膵臓がんの患者が2人以上いる場合を「家族性膵がん」と呼びます。こうした家系の方は発症しやすいとされていますが、必ず膵臓がんになるわけではありません。

遺伝子との関わりでは、BRCA1・BRCA2という遺伝子の変異が知られています。乳がんとの関連で注目されてきた遺伝子ですが、膵臓がんの患者さんのうち約5%にも見つかるとされています。この検査結果は、治療に使う薬の選択にも関わってきます。遺伝について心配がある場合は、遺伝カウンセリングを受けることも可能です。

遺伝的な背景を知ることは、ご本人の治療選択に役立つだけでなく、ご家族の今後を考える材料にもなります。

喫煙は膵臓がんの代表的なリスク因子で、ほかにも飲酒や肥満、糖尿病、慢性膵炎などが発生のリスクを高めることがわかっています。たばこの有害物質は血液を通じて膵臓の細胞にも影響を与え、お酒の飲みすぎは慢性膵炎を通じて膵臓に負担をかけます。

また、膵管の中に袋状の病変ができる膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)にも注意が必要です。それ自体ががんに変化したり、膵臓の別の部分にがんが発生したりすることがあるため、画像検査で経過を見ていきます。治療を受ける段階の方にとっても、喫煙は手術後の合併症を増やすことが知られており、治療前の禁煙が勧められています。

ただし、これらの要因がなくても膵臓がんになることはあります。リスク要因は発症の可能性を高めるものであり、それだけで発症が決まるわけではありません。

5.膵臓がんの検査方法

ここからは、膵臓がんが疑われたときに行われる検査を見ていきます。検査は、がんかどうかを調べる段階と、がんの広がりを確かめる段階に分けて進められます。

血液検査と注射器

血液検査は膵臓の異常を探る入り口となる検査ですが、それだけで膵臓がんと確定することはできません。血液検査では、アミラーゼなど膵臓でつくられる酵素の値や、黄疸の有無、肝機能、血糖値などを確認します。

腫瘍マーカーは、主にがん細胞がつくる物質を血液から測定する検査です。膵臓がんでは、CA19-9やCEA、DUPAN-2などが使われます。ただし、がんがあっても値が上がらないことや、別の疾患で値が高くなることもあります。そのため、腫瘍マーカーは画像検査の結果と組み合わせて判断されます。診断後は、治療の効果を確認する目安としても利用されます。

血液検査の結果で分からないことがある場合は、数値がどのような意味を持つのかを担当医に確認するのが良いでしょう。

膵臓がんの診断では、複数の画像検査を組み合わせて、がんの有無や広がり、転移の状況を調べます。主な検査は以下のとおりです。

検査名主な目的・特徴
腹部超音波検査体の表面から超音波を当てて観察します。胃や腸のガスで見えにくい部分もあります
造影CT検査腫瘍の大きさや血管への広がり、転移の有無を確認します
MRI検査・MRCP磁気を使って撮影し、膵管や胆管の状態を詳しく映し出します
超音波内視鏡検査(EUS)胃や十二指腸の中から膵臓を観察し、細胞を採取することもあります
ERCP内視鏡から膵管・胆管に造影剤を入れて撮影し、黄疸の処置にも使われます

最終的には、採取した細胞や組織を顕微鏡で調べる病理検査によって診断が確定します。これらの結果をもとにステージが決まり、治療方針が話し合われます。

検査が多く感じられるかもしれませんが、どれも最適な治療を選ぶための大切な工程です。

6.膵臓がんの治療法

診断がついた後は、いよいよ治療の選択に進みます。膵臓がんでは「手術ができるかどうか」が出発点になるため、その考え方から整理していきましょう。

治療法の絵とハート

がんを手術で取りきれると判断された場合は、根治を目指して手術が第一の選択肢になります。治療方針は、がんの広がりや血管との位置関係から「切除可能」「切除可能境界」「切除不能」に分けて検討されます。

膵頭部のがんでは、十二指腸や胆管の一部、周囲のリンパ節とともに切除する膵頭十二指腸切除術が行われます。膵体部・膵尾部のがんでは、脾臓とともに切除する膵体尾部切除術が一般的です。がんが膵臓全体に及ぶ場合は、膵全摘術が選ばれます。手術後は糖尿病や消化吸収の低下が起こる場合があり、インスリンや消化酵素薬で補っていきます。

「切除可能境界」の場合は、先に抗がん剤などで治療を行い、あらためて手術を検討することもあります。術後の食事や血糖の管理については、退院前に担当医や看護師、栄養士から説明を受けることができます。

薬物療法は、手術前後の再発予防から進行の抑制まで、幅広い場面で中心的な役割を担います。

手術で切除できる場合でも、手術の前後に抗がん剤治療を行うことで、再発しにくくなる可能性が示されています。手術ができない場合や再発時には、複数の抗がん剤を組み合わせ、進行を抑えて症状を和らげることを目指します。

がん細胞の遺伝子を調べた結果によっては、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を使用できる場合もあります。ただし、対象は一部の患者さんに限られます。

放射線療法は、がんが大きな血管を巻き込んで手術ができない場合などに、抗がん剤と組み合わせて行われます。痛みを和らげる目的で使われることもあります。

吐き気などの副作用も、抑える薬の研究が進み、以前より対処しやすくなっています。どの治療を選ぶかは、がんの状態や体調、副作用の見通しをふまえ、担当医と話し合って決めていきます。

7.膵臓がんに関するよくある質問

はてなとひらめきの積み木

A.膵臓がんに特有の初期症状はなく、多くは無症状のまま進行します。

膵頭部では黄疸や便・尿の色の変化が比較的早期に現れやすい傾向があります。一方、膵体部・膵尾部では、背中の痛みや体重減少が出るまで気づきにくいのが特徴です。

ただし症状の現れ方には個人差があり、同じ部位のがんでも経過は一人ひとり異なります。

A.黄疸が出たからといって、必ずしも手遅れというわけではありません。

膵頭部のがんは胆管のすぐそばにできるため、まだ小さいうちに黄疸が現れることがあります。この場合は黄疸が発見のきっかけとなり、手術につながるケースもあります。黄疸が強い場合は、内視鏡で胆管にステントという細い管を入れ、胆汁の流れを回復させてから、手術や薬物療法へ進むのが一般的です。

黄疸が出た段階でも、手術ができるかどうかは画像検査などの結果をもとに判断されます。

A.手術でがんを取りきれた場合には、完治を目指せる可能性があります。

特に、がんが膵臓の中にとどまった段階で見つかり、手術と薬物療法を組み合わせて治療できた場合は、長期の生存が期待できます。一方で、膵臓がんは手術後に再発することも多いため、少なくとも5年間は定期的に通院し、経過を確認していきます。手術ができない場合でも、薬物療法でがんの進行を抑えながら、生活の質を保って過ごすことを目指せます。

治療の選択肢は一つではありません。ご自身の希望も伝えながら、担当医と一緒に治療の目標を考えていきましょう。

8.まとめ

膵臓がんは体の奥にある臓器にできるため、初期には症状が出にくい病気です。黄疸や背中の痛み、体重減少、糖尿病の急な悪化などをきっかけに見つかることが多く、現れ方はがんの場所によって異なります。診断は血液検査と画像検査を組み合わせて確定され、治療は手術ができるかどうかを出発点に進められます。

病気のことを知るほど、不安や戸惑いがかえって大きくなる方もいらっしゃると思います。一人で抱え込まず、わからないことは医療チームに尋ねながら、納得できる道を一緒に探していきましょう。

快適医療ネットワーク理事長

監修 
医学博士 上羽 毅

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。