• 2024.07.08 2026.09.25
  • 食道がん

食道がんの余命とは?ステージ別の生存率と受けられる治療

食道がんと診断されると、「あとどのくらい生きられるのか」という余命のことが、まず頭に浮かぶかもしれません。食べ物がつかえる、体重が減ったといった変化が続いていると、この先どうなるのか、心配でたまらない方もいらっしゃると思います。

余命は、医師から具体的な数字で告げられることは少なく、多くの場合は「生存率」という統計をもとに説明されます。食道がんの生存率は、診断された時点のステージによって大きく変わるのが特徴です。

またステージによって変わるのは、生存率だけではありません。選べる治療も段階ごとに異なり、ごく早い段階なら内視鏡でがんを取り除けることもあります。進行した段階でも、手術・放射線治療・薬を組み合わせる治療が広がってきました。

この記事では、ステージ別の5年生存率を最初にお伝えしたうえで、生存率と余命の違い、主な治療法、再発や転移、経過に関わる要因を順に解説します。数字の意味を正しく知っておくと、担当医に聞きたいことを整理しやすくなります。

1.食道がんのステージ分類と生存率

食道がんでは、どの段階で見つかったかによって生存率に大きな差が出ます。そこでまずはステージの決まり方を確認し、そのうえでステージ別の数字を見ていきましょう。

積み木に描かれたがんのステージ

食道がんのステージは、がんの深さ、リンパ節への転移、離れた臓器への転移の3つを組み合わせて決まります。

食道の壁は、内側から粘膜、粘膜下層、筋肉の層、外膜の順に重なっています。がんは内側の粘膜の上皮から発生し、進むにつれて外側の層へと浸潤していきます。日本の分類では、早期の0期からⅣ期までの段階があり、Ⅳ期はさらにⅣA期とⅣB期に分かれます。がんが粘膜にとどまる状態が0期です。周囲の臓器にまで広がったり、肝臓や肺などへの遠隔転移が見られたりするとⅣ期となります。

ステージを判断するため、内視鏡検査で組織を採って調べ、CT検査やPET検査なども行われます。超音波内視鏡検査で、がんの深さを詳細に調べることもあります。なお、扁平上皮がんと腺がんでは、分類の方法が一部異なります。

ご自身のステージは、診断結果の説明の中で確認できます。次の生存率の表は、ご自身のステージと照らし合わせて見てみてください。

食道がんの5年生存率は、Ⅰ期で約8割、Ⅳ期では1割に満たず、ステージによって大きな差があります。

5年生存率は、診断されてから5年が経った時点で、生きている方がどれくらいいるかを割合で表したものです。国立がん研究センターによると、がん以外の死因の影響を除いた5年生存率は次のとおりです。

  • Ⅰ期  78.4%
  • Ⅱ期  48.9%
  • Ⅲ期  27.4%
  • Ⅳ期  8.7%
  • 全体  47.8%

Ⅰ期の数値が高いのは、手術や化学放射線療法で根治を目指せる方が多いことが関係しています。これに対し、Ⅱ期からは数値が段階的に低下し、Ⅳ期では低い値にとどまっています。

ただし、これらは過去に診断された多くの症例を平均した値で、近年の治療の進歩は十分に反映されていません。Ⅳ期の8.7%という数字も、ステージⅣと診断された方一人ひとりのその後の経過を決めるものではありません。

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2.食道がんの概要とその影響

ここからは、食道がんという病気そのものの特徴を整理します。病気の成り立ちを知っておくと、この先の治療や症状の説明が理解しやすくなります。

謎を解決するために情報を探す人

食道がんは、のどと胃をつなぐ食道の、内側を覆う粘膜から発生するがんです。

食道は胸の中央を通る管状の臓器で、気管や心臓、大動脈、肺に囲まれています。首の部分を頸部食道、胸の部分を胸部食道と呼び、がんの約半数は食道の中央付近にできます。また、女性より男性に多いがんとして知られています。口から入った食べ物を胃へ送る役割を担う器官ですが、食道そのものに消化の働きはありません。

日本の食道がんは、扁平上皮がんというタイプが9割近くを占め、腺がんは1割に満たない程度です。扁平上皮がんは喫煙や飲酒との関わりが強いタイプで、熱い飲み物や食べ物の影響も報告されています。

また食道がんの方の約5人に1人には、同じ時期や前後の時期に、胃がんや頭頸部のがん、大腸がん、肺がんなど、別のがんが見つかることがあります。これは転移ではなく、それぞれの臓器で別々に発生したがんです。そのため治療後の検査では、食道だけでなく、のどや胃も含めた観察が続けられます。

食道がんは初期には自覚症状がないことがほとんどで、進行するにつれて飲み込みに関わる症状が現れるようになります。

比較的早い時期に気づかれやすいのは、飲食時に胸の奥がチクチク痛む、熱いものがしみるといった違和感です。こうした症状は、一時的に消えることもあります。

がんが大きくなると食道の内側が狭くなり、食べ物がつかえる感じが続くようになります。やがて軟らかい物しか通らなくなり、食事の量が減って体重の減少につながります。

さらに周囲へ広がると、胸や背中の痛み、咳、声のかすれなどが出ることもあります。声のかすれは、声帯を動かす神経にがんが及ぶことが原因で起こります。

飲み込みにくさは栄養状態に直結するため、食事のつかえや体重の変化は、治療中も担当医に具体的に伝えておくことが望ましいです。

3.食道がんの余命に関するデータ

次は、「余命」という言葉をどう受け止めればよいかを見ていきます。生存率との違いが分かると、医師の説明が何を示しているのかをつかみやすくなります。

不安を抱える人形

食道がんの平均余命は、公的な統計として数字で示されているわけではありません。

余命について語られるとき、その根拠となるのは多くの場合、生存率のデータです。生存率は「一定の期間が経過した時点で生存している方の割合」を表します。一人ひとりに残された時間を示すものではありません。

ただ、診断から時間を追って生存率の推移を見ると、おおよその目安はつかめます。統計では、Ⅳ期の方の1年生存率は約4割、2年生存率は約2割です。一方、Ⅰ期では1年生存率が9割以上です。

医師から余命について説明を受けるときは、その数字がどのような患者を対象にした、どの期間のデータなのかを確かめてみてください。ご自身にどの程度当てはまるのかが見えてきます。

どのくらいの期間を過ごせるかは、がんの進行度に加えて、全身の状態と受けられる治療の内容によって大きく変わります。

同じステージでも、心臓や肺、肝臓などの臓器の働きが保たれているかどうかで、治療の選択は異なります。体力が十分なら手術を中心とした治療が検討され、手術が難しい場合は化学放射線療法などが選ばれます。

日常生活をどの程度自分でこなせるかも、薬の治療を行うかどうかの判断材料です。食道が狭くなって食事がとれず、栄養状態が低下しているときは、まず栄養を整えることが優先される場合もあります。

つまり余命は、ステージだけで決まるものではありません。体の状態と治療の組み合わせをあわせて考えることが必要です。

4.食道がんの治療法とその効果

ここからは、食道がんの主な治療法を取り上げます。それぞれの役割を知っておくと、担当医から示された治療計画の意味を理解しやすくなります。

治療法が描かれた積み木

手術は、Ⅰ期からⅢ期の食道がんで根治を目指す中心的な治療で、体の状態が許せば第一の選択肢となります。

胸部食道がんの手術では、胸の食道全体と胃の一部を切除し、首から腹部にかけてのリンパ節も取り除きます。切除した後は、胃を引き上げて首の食道とつなぎ、新しい食べ物の通り道を作ります。最近は胸腔鏡や腹腔鏡を用いて、傷を小さくする方法も広がっています。

Ⅱ期・Ⅲ期では、先に抗がん剤治療を行ってから手術する方法が標準とされています。また、がんが粘膜にとどまる0期では、多くの場合、内視鏡でがんを切除して食道を残すことができます。

手術は体への負担が大きく、縫合不全や肺炎、声のかすれといった合併症が起こることもあります。手術後はしばらく入院して回復を待ち、退院後は食べ方の工夫が大切になります。

【手術後の食事で取り入れたい工夫】

  • 1回の量を減らし、回数を増やす
    食べ物が急に腸へ流れ込むことで起こる、動悸やめまいを防ぐ助けになります。
  • ゆっくりよくかんで食べる
    つなぎ目が狭くなっていても通りやすく、むせの予防にもつながります。
  • 寝る前の2〜4時間は食事を控える
    横になったときに、消化液が逆流するのを起こしにくくします。

術後は食事量が減って体重が落ちやすいため、栄養士や看護師と相談しながら、少しずつ元の食事に近づけていきます。

化学療法と放射線治療を同時に行う化学放射線療法は、手術と並んで根治を目指す治療の柱です。

放射線治療は、がんのある部位に高いエネルギーのX線を当てて小さくする治療で、週5日、6週間ほどかけて照射するのが一般的です。抗がん剤と組み合わせると、放射線単独よりも高い効果が得られます。

この方法は食道を残せるため、手術に比べて治療後の食生活への影響が少ないのが特徴です。Ⅰ期では手術と同程度の効果が報告されており、手術が難しい方や、手術を希望しない方の選択肢にもなります。周囲の臓器に広がったⅣA期でも、化学放射線療法が標準的な治療とされています。一方、離れた臓器に転移があるⅣB期では、現在、抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせた薬の治療が中心です。

治療中は、照射した部分の食道の炎症による痛みやつかえ、白血球の減少などの副作用が出ることがあります。これらの多くは治療終了後2〜4週間ほどで落ち着きますが、痛みで食事がとれないときは早めに担当医へ伝えてください。

5.食道がんの再発と転移のリスク

治療を終えた後に気になるのが、再発や転移のことです。どのような形で起こるのかを知っておくと、定期的な検査を続ける意味が見えてきます。

説明する医師

食道がんの手術後に再発する場合、その多くは2年以内に起こるとされています。

再発率そのものは、治療前のステージや受けた治療によって異なるため、一律の数字で示すのは難しいのが実情です。一般的に、リンパ節転移があった方や、がんが深い層まで及んでいた方ほど、再発の可能性が高くなる傾向があります。

再発には、元の場所の近くに起こる局所再発と、リンパ節や離れた臓器への再発があります。そのため根治を目指した治療の後も、定期的に通院してCT検査や内視鏡検査を受けます。検査の頻度は年に1〜4回程度が目安です。2年を過ぎてから再発する例もあるため、経過観察は長い期間にわたって続きます。

【経過観察の期間中に心がけたいこと】

  • 首の腫れや声のかすれに気を配る
    首の付け根のリンパ節に再発すると、こうした変化が出ることがあります。
  • 気になる症状は次の受診を待たずに伝える
    痛みや息苦しさ、血の混じった痰があるときは、早めに受診しましょう。

再発を早い段階で見つけられれば、そのときの体の状態に合った治療を検討しやすくなります。

食道がんの転移は、がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗って、リンパ節やほかの臓器へ移ることで起こります。

食道の壁の中には、リンパ管や血管が張りめぐらされています。腫瘍が深く浸潤するとこれらの管に入り込み、首から腹部にかけてのリンパ節や、肺、肝臓、骨などへ広がります。また、がんが食道の壁を越えると、隣り合う気管や大動脈へ直接広がることもあります。

転移の状況は、その後の経過を大きく左右する要素です。ただし、転移が限られた範囲のリンパ節や、一つの臓器の少数にとどまる場合は、治癒を目指した手術や化学放射線療法が検討されることがあります。

骨への転移による痛みには放射線を当てて和らげる治療もあり、転移の場所に応じて症状への対応も行われます。

6.食道がんの予後因子と生存率への影響

最後に、生存率の数字に差が生まれる理由を整理します。どの要素が関わるのかを知っておくと、担当医の説明をご自身の状況に当てはめて考えやすくなります。

ルーペとはてな

予後因子とは治療後の経過に影響する要素のことで、食道がんではステージが最も重要な因子です。ステージの中でも、がんの深さ、転移したリンパ節の数、遠隔転移の有無が、それぞれ経過に関わります。

がんの組織の種類も要素の一つです。扁平上皮がんと腺がんでは性質が異なり、進行度の分類方法も違います。年齢や持病の有無も見逃せません。高齢の方や、心臓・肺などに持病がある方は、治療の選択肢が限られることがあります。

さらに喫煙や飲酒の習慣は、手術の安全性や、ほかのがんの発生に関連します。そのため治療後の生活でも、禁煙と禁酒が勧められています。これらの因子のうち、生活習慣は治療が始まってからでも見直せる数少ない要素です。

生存率には、ステージに合った標準治療を、必要な組み合わせで受けられるかどうかも大きく関わります。

食道がんでは、手術、放射線治療、薬の治療の中から複数を組み合わせる「集学的治療」が多く行われています。Ⅱ期・Ⅲ期で手術前に抗がん剤治療を加える方法も、手術のみの場合と比べて成績の向上につながることが示され、標準治療となりました。

また、手術の前に化学放射線療法を行うこともあります。切除後の検査の結果、がんが残っていることが認められた場合には、術後に免疫チェックポイント阻害薬を使用する方法が勧められています。医療の現場では、専門の病院を中心に、外科、内科、放射線科などの医師が連携して治療方針を検討します。

提示された治療計画がどの組み合わせにもとづくものかを確認しておくと、治療全体の流れがつかみやすくなります。

7.食道がんに関するよくある質問

疑問が解決した人

Q.手術と化学放射線療法は、どちらを選べばよいですか?

A.ステージと体の状態によって、勧められる治療は異なります。

Ⅱ期・Ⅲ期で手術が可能な体の状態であれば、手術が第一の選択肢です。手術が難しい場合や希望しない場合には、根治を目指した化学放射線療法を選ぶこともできます。化学放射線療法の後にがんが残った場合は、救済治療として手術が検討されることもあります。

2つの治療の利点や、治療後の生活への影響の違いを、担当医と相談しながら決めていきましょう。

Q.治療中に食事がとれなくなったら、どうなりますか?

A.食べにくくなった原因に合わせて、対応が変わります。

放射線治療や抗がん剤の副作用で、飲み込むときの痛みや吐き気が出ることがあります。その場合は、痛み止めや吐き気止めを使いながら、やわらかく刺激の少ない食事に切り替えます。がんが大きくなって食道が狭くなった場合には、食道ステントという筒状の器具で通り道を広げる方法があります。どちらの場合も、口から十分に食べられないときは、点滴や胃ろうなどで栄養を補うことも可能です。

食事がとりにくくなったときは、我慢せずに医師や看護師に伝えることが大切です。

8.まとめ

食道がんの5年生存率は、Ⅰ期の約8割からⅣ期の1割未満まで、ステージによって大きく異なります。ただ、これは過去に診断された方々の平均で、その後に進んだ治療の効果までは反映されていません。

実際に、治療の選択肢は着実に増えてきました。食道を残せる化学放射線療法に加え、進行した段階でも免疫チェックポイント阻害薬が使えるようになっています。さらに、再発や転移が見つかっても範囲が限られていれば治癒を目指せることがあり、食事がとりにくくなったときの対処法も用意されています。

このように、余命はステージだけで決まるものではなく、体の状態や受ける治療によって一人ひとり違ってきます。だからこそ、数字だけで先を決めつけず、ご自身に合った治療を担当医と一緒に探していきましょう。

快適医療ネットワーク理事長

監修 
医学博士 上羽 毅

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。