- 2025.06.06 2026.09.28
- 肝臓がん
末期肝臓がん・余命1ヶ月のケアと治療法
余命1ヶ月と告げられると、多くの方が「もう打つ手がないのではないか」と感じてしまいます。しかし、たとえ標準治療の選択肢が限られていても、症状を和らげたり、体調に向き合ったりする方法は一つではありません。
実際に、同じように厳しい状況を伝えられながらも、様々な選択肢を検討し、ご自身なりの向き合い方を見つけてこられた患者様やご家族がいらっしゃいます。
「何か出来ることはないか」
そう感じている方にこそ、知っていただきたい情報があります。
本コラムでは、この時期に実際に行われているケアや治療の選択肢を解説するとともに、同じ状況にあった方々が実際にどのような選択をされたのか、その記録もあわせてご紹介します。
1.末期肝臓がん患者の生活とケア
今、こんな不安を抱えていませんか?
- 痛みや食欲低下がつらそう
- このまま自宅で過ごせるか不安
- 食事をどう工夫すればいいかわからない
- 何か他にできることはないか探している
こうした不安や疑問は、多くの方が同じように抱えています。ここでは、今できることを一つずつ整理してご紹介します。
肝臓がん末期患者は、症状の進行や治療方法によって日常生活が大きく変わります。緩和ケアを中心に、患者様の生活の質(QOL)を保つことが重要になります。
肝臓は、がんが進行するにつれて本来の機能を保てなくなっていく臓器です。血液検査や画像検査などの検査を通じて診断された後も、新たな治療を始めることが困難な場合がありますが、その中でも症状を和らげられる可能性は残されています。担当医と相談を続けながら、今の状態で何ができるかを一つずつ確認していくことが大切です。
Q. 末期の肝臓がんでは、どんな症状が出ますか?
A. 主に以下のような症状がみられます。
- 腹部痛や腫れ、腹水の蓄積
- 食欲の低下、体重減少、筋力の低下
- 黄疸や尿・便の色調変化
- 吐き気や嘔吐
- 血液凝固異常による出血傾向
- 肝性脳症による意識障害やせん妄
症状によっては、吐き気止めや痛み止めなどの薬剤で緩和が可能です。せん妄や強い不安感が出た場合は、早めに医療スタッフへ相談することが大切です。
Q. 心身のつらさには、どう向き合えばいいですか?
A. 以下のような方法があります。
- 痛み・症状の緩和:医師・看護師と相談し、薬物療法などを活用
- 心理的サポート:カウンセリングや心理療法の利用
- 家族や友人との時間:精神的な支えになる環境づくり
- 適度な運動・リハビリ:筋力や体力の維持(専門家と相談の上)
Q. 食事はどうすればいいですか?
A. 消化の良いタンパク質を、少量ずつこまめに摂るのが基本です。
- 高脂質・過剰な油分は控えめに、大豆製品・白身魚・鶏肉などを優先
- 塩分は摂りすぎない
- 野菜は加熱してかさを減らし、ビタミン・ミネラルを摂りやすく
【具体例】
・味噌汁+野菜・豆腐(エネルギー+タンパク質)
・白身魚の煮物・蒸し料理、スープ・ポタージュ(水分+栄養)
・果物のゼリー・コンポート(甘味+ビタミン)
Q. 自宅で過ごせますか?
A. はい、体調や症状の程度によっては、自宅で過ごすことも可能です。
訪問診療や訪問看護と連携することで、住み慣れた環境で日常生活を送りながら、必要な医療的サポートを受けられます。体調の変化に応じて、入院と組み合わせながら選択される方もいらっしゃいます。
Q. なぜ末期になってから見つかることが多いのですか?
A. 肝臓がんは肝がんとも呼ばれ、初期には自覚症状が乏しいまま進行することが多いとされています。
多くの場合、肝炎ウイルスへの感染や肝硬変を背景として、肝臓の細胞ががん化する肝細胞がんという形で発生すると言われています。末期の段階で診断される背景には、こうした特徴も関係していると考えられます。
ここまで、症状への対処や日々の生活の工夫、末期と診断される背景について触れてきましたが、工夫やサポート次第で、日々の負担を和らげる方法は数多くあります。ここでご紹介したケアや工夫は、あくまで選択肢の一部です。実際には、こうした一般的なケアに加えて、様々な選択肢を検討されている患者様やご家族も多くいらっしゃいます。
「まだ出来ることがあるかもしれない」
そう感じられた方は、次にご紹介する実際の記録もぜひ参考にしてください。
▶ 迷いながらも、一歩を踏み出した方々の記録
肝臓がんは本当に良くならないのか?
同じ肝臓がんと向き合い、乗り越えた方がいます。実際の記録をご覧ください。
2.余命1ヶ月からの治療・ケアの選択肢
肝臓がんは、進行度に応じてステージ1〜4に分類されます。ステージが進むにつれて、他の臓器への転移が広がり、治療の選択肢や予後も変わってきます。
ステージ4は、がんが全身に広がった状態で、症状の緩和や家族との時間を優先したケアが中心となります。末期の肝臓がん患者様の生存期間は、個人差はあるものの、概ね数ヶ月から1年程度とされ、5年生存率で見てもステージが進むほど厳しい数字になる傾向があります。
肝臓がんの進行度は、癌の性質や患者様の全身状態によって異なり、同じステージであっても経過は一人ひとり違います。ステージ2やステージ3の段階で発見されるケースもありますが、進行するとリンパ節や肺など離れた臓器へ転移することもあります。約1ヶ月という期間の中でも、できることは一つではありません。
このステージを踏まえた上で、現在検討できる治療・ケアの選択肢をご紹介します。
積極的な治療を続ける場合の選択肢
体調や病状によっては、この段階でも以下のような治療が検討されることがあります。
- 手術:腫瘍の状態や全身状態によっては、切除が可能な場合もあります
- 化学療法:抗がん剤による治療。副作用と効果のバランスを見ながら継続を判断します
- 肝動脈化学塞栓療法(TACE):腫瘍に栄養を送る血管を塞ぎ、抗がん剤を直接送り込む治療法
- ラジオ波焼灼療法(RFA):腫瘍に針を刺し、熱で焼灼する治療法
- 放射線治療:腫瘍を小さくする、または痛みなどの症状を和らげる目的で行われます
治療の選択肢は、腫瘍の大きさや位置、肝機能、全身状態によって大きく異なります。TACEやRFAは、外科手術に比べて体への侵襲が少ない治療法とされ、腫瘍へ栄養を送る血管の血流を利用して抗がん剤を有効に届けます。抗がん剤治療や外科的な処置の後には、副作用として食欲不振や倦怠感が現れることもあります。
治療方針を決める際には、定期的な血液検査や画像検査を通じて肝機能や腫瘍の状態を確認しながら、担当医と相談してどの治療が適応となるか、続けるべきかを判断していくことになります。退院後に症状が再発する可能性もあるため、新たな転移が画像検査で発見された場合も含め、経過観察を続けることが大切です。
治療の継続が難しい場合:症状を和らげるケア
体力の低下により、積極的な治療の継続が難しくなった場合は、症状緩和を中心とした「ベストサポーティブケア(BSC)」に切り替えることもあります。BSCは、がんそのものへの治療は行わず、痛みや不快な症状を和らげることに専念する方針です。
- 痛みが強い場合:医療用麻薬(オピオイド)による疼痛管理、緩和的放射線治療
- 腹水がたまっている場合:針を刺して腹水を抜く「腹水穿刺」
- 黄疸が強い場合:胆管にステント(管)を挿入する処置
- むくみが目立つ場合:利尿薬の使用や体位の工夫による対応
入院か、在宅療養か
入院(緩和ケア病棟・ホスピス含む)は、24時間医療スタッフが常駐しており、急な症状変化にもすぐに対応できるという安心感があります。一方、在宅療養は訪問診療・訪問看護で対応しながら、住み慣れた自宅で家族と過ごせるという良さがあります。ただし在宅の場合、緊急時の連絡先を事前に確保しておく必要があり、介護や見守りの負担が家族に生じる場合もあります。治療を続けながらの在宅療養、入院しながらの治療継続など、組み合わせ方は状況によって様々です。「何か出来ることはないか」と感じた際は、まず担当医に率直に相談し、今の状態で選べる選択肢を確認することが第一歩になります。
3.ご家族・医療チームとの関わり方
患者様ご本人との向き合い方
余命を意識した時間の中では、これまで通りに接することが難しく感じられることもあります。特別な会話をしなければと気負う必要はなく、これまでと変わらない日常の会話や、そばに寄り添う時間そのものが、ご本人にとって大きな支えになります。
- 無理に励ましたり、明るく振る舞う必要はない
- 沈黙の時間も、一緒に過ごす時間として大切にする
- 「何かしてほしいことはある?」と、ご本人の希望を聞く姿勢を持つ
ご本人の体調や皮膚の状態、食欲の変化に気づいた際は、些細なことでも医療スタッフに伝えることが、適切なケアにつながります。黄疸が進むと、皮膚のかゆみが出ることもあり、消化器症状として下痢が起こる場合もあります。肝臓の働きが低下すると、体内の水分バランスにも影響が及びやすくなります。症状の程度は日ごとに変わることもあるため、体調に変化が出る場合は早めに相談することが望ましいです。お腹の張りや痛みを感じたときは、腹水の可能性も考えられます。その後の経過は人によって異なるため、不安なことがあるなら、まず担当医に相談してみてください。
ご家族自身の心のケア
看病をされるご家族は、患者様以上に心身の負担を抱えやすいと言われています。「弱音を吐いてはいけない」と一人で抱え込んでしまう方も少なくありません。
- 気持ちを話せる相手(他の家族、友人、医療スタッフ)を持つ
- がん相談支援センターなど、第三者に相談できる窓口を利用する
- 十分な休息を取ることも、看病を続けるために必要なケアの一つ
医療チームとの連携のしかた
医師や看護師との関わり方に不安を感じるご家族も多くいらっしゃいます。伝えたいことをうまく言葉にできない場合は、事前にメモを準備しておくと、限られた診察時間の中でも要点を伝えやすくなります。
伝えておきたいことの例
- 現在気になっている症状とその変化
- ご本人・ご家族の希望(自宅で過ごしたい、痛みだけは取ってほしい、など)
- 今後の急変時にどう対応してほしいか
緩和ケアチームや医療ソーシャルワーカーは、治療方針だけでなく、生活面・心理面の相談にも対応しています。「こんなことを聞いてもいいのだろうか」とためらわず、気になることは率直に相談してみることをおすすめします。
相談できる窓口
- がん相談支援センター
全国のがん診療連携拠点病院に設置されており、通院先でなくても無料で相談可能 - 医療ソーシャルワーカー
入院先の病院に配置されていることが多く、介護保険や医療費、在宅療養の手続きなどについて相談できる - 緩和ケアチーム
痛みや症状のコントロールに加え、精神的なサポートも行う専門チーム
これらの窓口では、経済的な相談だけでなく、心のケアについても総合的にサポートしてくれます。相談窓口の種類は多く、電話や外来の受付を通じて利用できる場所もあります。支援を受けることに抵抗を感じる方もいらっしゃいますが、決して特別なことではありません。
4.治療・療養にかかる費用と経済的な支援
がん治療は、入院や通院、薬剤費などにより経済的な負担が大きくなりやすい分野です。負担を軽減するための公的な制度がいくつかありますので、ご存じない場合はぜひ確認してみてください。
医療費の負担を軽減する制度
- 高額療養費制度
1ヶ月の医療費が一定の上限額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、窓口での支払い自体を上限額までに抑えられます - 医療費控除
1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合、確定申告により税金の還付が受けられる制度です - 傷病手当金
会社員の方が病気療養のために働けなくなった場合、健康保険から一定期間給付を受けられる制度です
医療費の払い戻しには一定の期間がかかる場合があるため、余裕を持って早めに申請することをおすすめします。申請の際には、制度の説明や必要書類について窓口で確認しておくと、手続きの結果を待つ間も安心です。医療ソーシャルワーカーは、病院内の組織としてご家族の相談を幅広く受け止める役割を担っており、経済的な支援に関連する情報もまとめて確認できます。この記事で提供している情報は、あくまで一般的な内容です。詳しい内容は、お住まいの市区町村や病院の窓口でご確認ください。
在宅療養・介護に関する支援
- 介護保険サービス
65歳以上の方(末期がんの場合は40歳以上でも対象になる場合があります)は、訪問介護や福祉用具のレンタルなど、介護保険サービスを利用できる場合があります - 障害年金
病状によっては、障害年金の受給対象となることもあります
これらの制度は自動的に適用されるものではなく、多くの場合ご自身で申請が必要です。手続きが複雑に感じられる場合は、以下の窓口に相談することをおすすめします。
- 医療ソーシャルワーカー(3章でもご紹介した通り、経済的な相談にも対応してくます)
- 市区町村の窓口(介護保険や医療費助成の申請窓口)
- がん相談支援センター
「治療を続けたいけれど、費用が心配で決めきれない」という場合も、まずは医療ソーシャルワーカーに率直に相談してみることで、利用できる制度が見つかることがあります。入院・在宅療養・緩和ケアという3つの選択肢を組み合わせながら過ごす方もおり、通院の回数が増えることもありますが、体調に合わせて無理のない範囲で調整していきます。
よくある質問
Q. 余命1ヶ月と言われても、実際にはそれより長く生きられることはありますか?
A. 余命は過去の症例データに基づく統計的な目安であり、個人差があります。体調や治療への反応によって、予測より長く過ごされる方もいらっしゃいます。担当医と密に情報共有しながら、その時々の状態に合わせて過ごし方を考えていくことが大切です。
Q. 痛みが強くなってきた場合、どのように対応すればいいですか?
A. 医療用麻薬(オピオイド)などを用いた緩和ケアにより、多くの場合痛みをコントロールできます。副作用によるリスクについても、事前に医師へ確認しておくと安心です。我慢せず、早めに医師・看護師に伝えることが重要です。
Q. 本人に余命を伝えるべきか悩んでいます。どうすればいいですか?
A. 告知の判断は、ご本人の性格や希望、ご家族の考え方によって異なります。緩和ケアチームやソーシャルワーカーに相談しながら、ご家族だけで抱え込まずに決めていくことをおすすめします。
Q. ホスピスと自宅療養、どちらを選ぶべきですか?
A. どちらが良いというものではなく、ご本人の希望、ご家族の介護体制、症状の程度によって適した選択が異なります。訪問診療や訪問看護を利用しながらの自宅療養も可能です。
Q. 標準治療以外に、何か出来ることはありますか?
A. 症状緩和や体調管理に加え、様々な選択肢を検討されているご家族もいらっしゃいます。実際にどのような選択をされたか、記事の下部に記載の症例もあわせてご参照ください。
Q. 治療費が心配です。何か使える制度はありますか?
A. 高額療養費制度や医療費控除など、医療費の負担を軽減できる公的な制度があります。詳しくは4章でご紹介していますので、あわせてご確認ください。
5.まとめ
末期の肝臓がんと向き合う中では、症状のケアや治療の選択、ご家族の支え合い、経済的な負担まで、考えるべきことが多くあります。費用の負担が高い治療法を選ぶかどうかも、ご家族でよく話し合って決めることが望ましいでしょう。一つひとつを一人で抱え込まず、医療スタッフや相談窓口を頼りながら、ご本人・ご家族にとって納得のいく形を見つけていくことが大切です。
ここでご紹介した情報が、少しでも今の不安が和らぐきっかけ、そして今できることを考えるための一助になれば幸いです。実際に、同じように厳しい状況を伝えられながらも、様々な選択肢を検討し、ご自身なりの道を見つけてこられた方々がいます。そうした歩みも、これからの過ごし方を考える一つのヒントになるかもしれません。

快適医療ネットワーク理事長
監修
医学博士 上羽 毅
金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広い知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。








