• 2024.11.06 2026.10.08
  • 肺がん

肺がんステージ4とは?生存率・余命と治療の選択肢をわかりやすく解説

「ステージ4」と告げられ、手術はもうできないのか、あとどれくらい時間があるのかと、強い不安や恐怖に押しつぶされそうになった方も多いのではないでしょうか。

肺がんは、血液やリンパの流れに乗ってほかの臓器へ転移しやすい性質を持つがんです。診断の時点でステージ4と分かる患者さんも多い一方で、ここ十数年で治療は大きく変わりました。遺伝子を調べて薬を選ぶ治療や、免疫の力を使う治療が加わり、ステージ4でも病気と長く付き合いながら暮らす方が増えています。

この記事では、ステージ4の基本と生存率の読み方から、治療の選択肢、治療を決める検査、治療中の暮らしまでを順に紹介します。ご自身やご家族に合った道を、医療チームと一緒に見つけるための手がかりにしてください。

1.肺がんステージ4とは?生存率と余命の目安もあわせて解説

結論から言うと、ステージ4は「がんが肺から離れた場所に広がった段階」です。ただ、その中身は人によってかなり異なります。

ステージを現した旗

ステージ4とは、がんが肺の外へ広がった「遠隔転移」がある状態です。 進行の程度はTNM分類という国際的な基準で決まり、遠隔転移が認められると、腫瘍の大きさやリンパ節への広がりに関係なくステージ4となります。

主な転移先は、肺以外では脳・骨・肝臓・副腎、そして最初にがんができた原発巣とは反対側の肺です。ステージ4は、広がり方によってさらに2つに分かれます。

区分状態
ⅣA期胸膜・胸水・反対側の肺への広がり、または胸の外の1か所だけへの転移
ⅣB期胸の外の複数か所への転移

転移が数か所にとどまる「オリゴ転移」と呼ばれる状態もあり、治療の考え方が変わることもあります。

加えて、がんのタイプも大切な要素です。肺がんは大きく非小細胞肺がんと小細胞肺がんに分かれ、遺伝子変異の有無でも使える薬が異なります。ステージ4という言葉だけで、先行きが決まるわけではありません。

肺がんステージ4の5年生存率は約8.0%と報告されています。1割に満たない数字に、厳しさを感じるかもしれません。

ただ、この数字は5年以上前に診断された、多くの患者さんの平均です。最新の薬の効果は、統計にはまだ十分に反映されていません。

実際、EGFRやALKといった遺伝子変異が見つかった方では、分子標的薬によって数年単位で病気をコントロールできる例も少なくありません。がんのタイプや年齢、体力、合併症の有無、治療への反応など、予後に関わる要因もさまざまです。

「余命」という言葉も同じです。医師が示す期間は、多くの人の真ん中にあたる値にすぎません。一人ひとりの未来を言い当てる数字ではないことを、心に留めておいてください。

  • 同じステージ4でも、転移の範囲やがんのタイプで状態には幅があります
  • 生存率は多くの方の平均で、一人ひとりの未来を決める数字ではありません
  • 分子標的薬などの登場で、治療の選択肢は広がっています

▶ステージ4と診断された一人ひとりの“その後”

肺がんは本当に良くならないのか?
同じ肺がんと向き合い、乗り越えた方がいます。実際の記録をご覧ください。

胸水ありの肺がん末期の症例|余命2ヶ月から肺・リンパともに消失 進行の早い小細胞肺がんのステージⅣ、すべての腫瘍が完全消失。 左肺に10cmのがん、99%消失。画像でも確認できず。

2.肺がんステージ4でも治療の選択肢はある?

答えは「はい」です。ステージ4の治療は、薬で全身のがんを抑えることが中心で、必要に応じて局所の治療を組み合わせていきます。仕組みを知っておくと、主治医の説明もぐっと理解しやすくなります。

積み木に描かれた医療の絵

治療の柱は、血液に乗って体全体に届く薬物療法です。 がん細胞が全身に散らばっている可能性があるため、まず薬でがんを抑え、必要に応じて放射線や手術を組み合わせます。主な治療法は次のとおりです。

治療法どんな治療?主に使われる場面
分子標的薬がんの増殖に関わる特定の遺伝子の異常を狙い撃ちするEGFR・ALK・ROS1などの遺伝子変異や融合遺伝子が陽性の場合。飲み薬が中心
免疫チェックポイント阻害薬免疫のブレーキを外し、自分の免疫力でがんを攻撃する単独、または抗がん剤と併用
抗がん剤(化学療法)がん細胞の増殖を抑える従来からの治療今も標準治療の柱。小細胞肺がんでは免疫チェックポイント阻害薬との組み合わせが基本
放射線治療特定の部位に照射する脳や骨の転移による頭痛・痛みを和らげる目的など
手術病巣を取り除く標準治療ではないが、転移が少ない場合などに、薬物療法と組み合わせて検討されることがある

なかでも少し分かりにくいのが、免疫療法のひとつである免疫チェックポイント阻害薬です。実は、がん細胞は免疫にブレーキをかけて攻撃から逃れています。そのブレーキを外すことで、本来の免疫の力を取り戻すという仕組みです。

それぞれの治療法には異なるメリットと副作用があり、どの治療方法を受けるかは、次の章で紹介する検査の結果や全身の状態、ご本人の希望に応じて決まります。 全体像をつかんでおくと、提案された治療の意味が見えてくるはずです。

大きな変化は、一人ひとりのがんの性質に合わせて治療を選ぶ「個別化医療」の時代になったことです。

以前は、ステージ4の多くの患者さんが同じような抗がん剤治療を受けていました。現在は、遺伝子の異常ごとに対応する分子標的薬が次々と登場し、その種類は増え続けています。これまで標的が見つからなかったタイプにも新たな薬の研究が進み、注目を集めています。

また、最初の薬が効きにくくなっても、次の治療へ切り替えられる場面が増えました。 新しい薬の臨床試験、いわゆる治験に参加するという選択肢もあります。

こうした進展により治療成績は大きく改善し、ステージ4でも生活を維持しながら治療を続ける方が増えています。選択肢が一つではないと知るだけでも、気持ちに少し余裕が生まれるのではないでしょうか。

緩和ケアは「最期の医療」ではなく、診断されたときから治療と並行して受けられるケアです。 対象となるのは、たとえば次のようなつらさです。

  • 病気による症状
    咳や息切れ、骨の痛みなど
  • 治療の副作用
    抗がん剤による吐き気や倦怠感など
  • 心のつらさ
    病気に関連する不安や気持ちの落ち込み

こうしたつらさを軽減し、生活の質を保ちながら治療を続けやすくすることが、緩和ケアの重要な役割です。病院によっては緩和ケアチームがあり、医師や看護師、薬剤師などのスタッフが連携してサポートを提供します。

痛みは我慢せず、早めに担当医へ伝えることが大切です。 つらさを抑えられれば、治療にも前向きに向き合いやすくなります。

3.どの治療になるかは検査で決まる

ステージ4の治療を選ぶうえで、検査は道しるべのような存在です。何を調べているのかが分かると、結果を待つ時間の不安も少し整理できます。

血液検査と注射器

治療薬を選ぶ決め手になるのが、がんの組織を調べる病理検査と遺伝子検査です。

まず気管支鏡などでがんの一部を採取し、顕微鏡で細胞の種類を確認します。肺がんは腺がん・扁平上皮がん・大細胞がん・小細胞がんなどに分類され、中でも代表的なのが最も多いタイプの腺がんです。小細胞肺がんか非小細胞肺がんかによって、治療方針の決定が大きく変わります。

非小細胞肺がんでは、さらに遺伝子検査を行います。EGFR、ALK、ROS1などのドライバー遺伝子に変異があれば、対応する分子標的薬が有効です。最近は、複数の遺伝子を一度に調べる詳しい検査も使用されています。組織が十分に採れないときは、血液を使って遺伝子を調べる方法が用いられることもあります。

あわせて調べるのが、がん細胞の表面にあるPD-L1というたんぱく質の量です。PD-L1が多いほど、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待しやすいと言われています。

結果が出るまでに数週間かかることもあります。呼吸器内科の医師は、その結果に基づいて適切な薬を選びます。待つ時間は、自分に合った治療を見つけるための大切な期間です。

画像検査は、がんが体のどこまで広がっているかを確かめるために行います。

CT検査では、肺の腫瘍の大きさやリンパ節への広がりを詳しく見ることができます。PET-CTは、がん細胞が糖を多く取り込む性質を利用して、全身の転移を一度に探す検査です。脳への転移はPETでは見つけにくいため、MRIで別に確認します。

画像検査は診断時だけでなく、治療中も定期的に行われます。薬が効いているかどうかを判断する、大切な材料になるのです。検査の目的を知っておくと、結果の説明も受け止めやすくなるでしょう。

4.治療中の暮らしはどうなる?

ステージ4でも、通院で治療を受けながら普段に近い生活を送る方は多くいらっしゃいます。起こりやすい変化と対処法を知っておけば、先回りして備えられます。

新芽

症状は、肺そのものの影響と、転移した部位による影響の2つに分けて考えると整理しやすくなります。

肺の症状として多いのは、長引く咳や血痰、息切れ、胸の痛みです。胸膜に広がって胸水がたまると、肺が圧迫されて呼吸困難が強くなることもあります。その場合は、胸に細い管を入れて水を抜く処置などで対応し、短期間の入院が必要になることもあります。

転移先別に見ると、脳なら頭痛や吐き気、手足のしびれ、けいれんが現れることがあります。骨なら痛みや骨折しやすさ、一方で肝臓や副腎への転移は比較的症状が出にくいのが特徴です。

全身のだるさや食欲の低下、体重の減少もよくみられます。がんが正常な組織の働きを妨げたり、炎症が発生したりすることが原因です。こうした変化は治療で和らげられることが多いため、強い症状や病状の変化を感じた時点で医療機関に相談してください。早めの対策が、生活の質を守ることにつながります。

治療中の生活で負担になりやすいのは、体力の低下と息切れ、そして副作用です。少しの工夫で、日常生活はぐっと過ごしやすくなります。

【治療中の毎日を少しラクにする工夫】

  • 動作はゆっくり、休憩をはさむ
    階段や着替えは一度に済まさず、途中で一息つくと呼吸が乱れにくくなります。
  • 手洗いで感染を予防する
    治療中は免疫力が下がりやすい時期があります。帰宅後の手洗いやうがいを習慣にしましょう。
  • 食べられるものを少量ずつ
    食欲が落ちたときは、1日の食事回数を増やして少しずつ栄養をとるのがおすすめです。
  • 軽い運動で体力を保つ
    医師に確認したうえで散歩などを続けると、筋力や呼吸機能の維持につながります。

無理をせず、できる範囲で工夫を重ねることが、治療を長く続ける力になります。

ステージ4の診断後、不安や落ち込みを感じるのは自然なことです。心のケアも、治療の一部として受けられます。

【気持ちが沈んだときに頼れる場所】

  • 担当医や看護師に気持ちを話す
    眠れない、何も手につかないといった状態も遠慮なく伝えてください。専門のスタッフにつないでもらえます。
  • がん相談支援センターを利用する
    全国のがん診療連携拠点病院などに設置され、その病院に通っていなくても無料で相談できます。電話での相談も可能です。
  • 患者会で同じ立場の人とつながる
    同じ治療を経験した人の話は、医療者とは違う支えになることがあります。

話す相手がいるだけで、抱えていた不安が少し軽くなることもあります。

5.肺がんステージ4のよくある質問

診察室ではなかなか聞きにくい疑問を、4つ取り上げます。

ひらめきとグッドサイン

A.原則として、ステージ4では手術は行いません。 がんが全身に広がっている可能性が高く、肺の病巣だけを取っても効果を得にくいためです。ただし、転移が少ない場合などに、薬物療法と組み合わせて外科的な治療が検討されることもあります。

A.薬が効いていて、副作用にも耐えられる限り続けるのが一般的です。 効果が弱まったり副作用が強くなったりした場合は、薬の変更や休薬を考慮します。継続の有無は、医師と相談しながら決めていきます。

A.続けている方は少なくありません。 飲み薬や数週間ごとの通院で受けられる治療も多いためです。ただ、仕事に与える影響は治療によって異なるので、退職を急がず、職場や病院の相談窓口と話し合ってから判断しましょう。

A.高額な薬もありますが、健康保険と高額療養費制度で負担を抑えられます。 1か月の自己負担額は、年齢や所得に応じた上限までになります。具体的な費用は、病院の相談窓口やがん相談支援センターで確認すると安心です。

6.肺がんステージ4と向き合うために大切なこと

治療を一人で続けていくのは、簡単なことではありません。抱え込まずに家族や周りの方の力を借りること、そして納得して治療を選ぶこと。その2つが、長い治療の支えになります。

寄り添う夫婦

支えてもらうには、「何をしてほしいか」を具体的に伝えるのが近道です。

  • 診察に一緒に来てもらう
    説明を二人で聞くと聞き漏らしが減り、あとで話し合いやすくなります。
  • 手伝ってほしいことを具体的に頼む
    通院の送迎や買い物など、内容がはっきりしているほど相手も動きやすくなります。
  • ご家族自身も相談先を持つ
    支える側の負担も大きいもの。がん相談支援センターは、家族からの相談にも応じています。

お互いが無理をしすぎない関係が、長い治療を支える土台になります。

治療を納得して選ぶには、信頼できる情報と、医師との十分な対話が欠かせません。

  • 質問をメモして診察に臨む
    遺伝子検査の結果や治療の目的、副作用など、聞きたいことを事前に整理しておきます。
  • 公的な情報源で調べる
    インターネットには根拠の乏しい情報もあるため、公的機関や学会の情報を基本にすると安心です。
  • セカンドオピニオンを活用する
    別の医師の意見を聞くことは患者さんの権利です。治療開始前に検討すると、選択肢を比べやすくなります。

自分の希望や大切にしたい暮らしも含めて考えることで、選んだ道に自信を持てるようになります。

7.まとめ

「ステージ4」という言葉は、とても重く響きます。ですが、その言葉だけで、これからの日々のすべてが決まるわけではありません。

治療を続けながら仕事に通う方、家族との時間を大切に過ごす方、楽しみな予定に向けて体調を整える方。ステージ4と診断されたあとも、それぞれの暮らしを続けている方は少なくありません。医療の進歩は、そうした「その後」の選択肢を着実に広げてきました。

検査で自分のがんのタイプを知ること、痛みやつらさを我慢せずに伝えること。そうした一つひとつの積み重ねが、治療を続ける日々を支える確かな力になります。

不安な気持ちが消えない日もあると思います。そんなときは、無理に前を向こうとしなくても大丈夫です。気持ちを誰かに話し、医療チームと一歩ずつ進んでいくことで、見える景色は少しずつ変わっていきます。

あなたらしい毎日を守るための一歩を、どうか焦らず、大切な人と一緒に踏み出してください。

快適医療ネットワーク理事長

監修 
医学博士 上羽 毅

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広い知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。