• 2024.09.17 2026.09.11
  • 食道がん

食道がんの原因とは?飲酒・喫煙からリスク要因、検査・治療の流れまで解説

食道がんと診断されたばかりの方や、これから検査を受ける予定の方の中には、「なぜ自分が」という戸惑いを感じている方も少なくないかもしれません。食道がんは、生活習慣や体質などいくつかの要因が積み重なって発症すると考えられているがんです。近年は原因の解明が進み、内視鏡検査をはじめとする診断技術や治療法も着実に進歩しています。この記事では、食道がんの主な原因やリスク要因、初期症状の特徴、検査・治療の流れまでを整理してお伝えします。ひとつずつ知識を積み重ねていくことで、今後の見通しが少しずつ見えてくるはずです。

1.食道がんの概要

ルーペとはてな

食道がんは、食べ物や飲み物の通り道である食道の粘膜から発生するがんです。まずは食道がんがどのような病気なのか、基本的な位置づけを押さえておきましょう。

がんは、正常な細胞の一部が変化して増え続けるようになった悪性腫瘍の総称で、食道がんもそのひとつです。食道は、咽頭に続いて喉から胃までをつなぐ管状の臓器で、前方には気管や気管支をはじめとする呼吸器が、後方には心臓や大動脈が隣接しています。食道がんは、この食道の内側を覆う粘膜の細胞ががん化することで始まり、進行すると粘膜下層や筋層、さらに周囲の臓器へと広がっていく性質があります。がん細胞はリンパ管を通ってリンパ節へ、あるいは血流に乗って離れた臓器へと運ばれることもあり、粘膜からある程度深いところまで達すると転移のリスクも高まることが知られています。食道がんは早期の段階では自覚症状が乏しく、検査で偶然見つかることも少なくありません。だからこそ、原因やリスク要因を知っておくことが、早めの対応につながります。

食道がんがどのような場所で、どのように育っていく病気なのかがわかると、この後にご紹介する原因やリスク要因も、より自分ごととして理解しやすくなるはずです。

食道がんには大きく分けて2つのタイプがあり、原因や発生しやすい部位にも違いがあります。扁平上皮がんと腺がん、それぞれの違いを押さえておきましょう。

日本で多くみられるのは、食道の内側を覆う扁平上皮という組織から発生する「扁平上皮がん」で、食道の中央から上部にかけて発生しやすいタイプです。一方、欧米で多く、日本でも増加傾向にあるとされるのが「腺がん」で、こちらは食道の下部、特に胃に近い部分に発生しやすく、慢性的な胃酸の逆流によって粘膜の性質が変化する「バレット食道」という状態と関連が深いとされています。扁平上皮がんは喫煙や飲酒との関連が強く指摘される一方、腺がんは逆流性食道炎や肥満との関連が注目されています。なお、食道の下部が胃とつながる境目付近にできるがんは、食道がんと胃がんの中間的な性質を持つタイプとして扱われることもあります。胃がんの原因としてよく知られるピロリ菌や胃潰瘍は、食道がんとはまた別のリスク要因として区別されている点も覚えておくとよいでしょう。同じ食道がんでも、どちらのタイプに近いかによって、主な原因や注意すべき生活習慣が異なる点は、覚えておくとよいでしょう。

自分の食道がんがどちらのタイプに近いのか、あるいはどのような経過をたどっているのかは、検査結果をもとに医師と一緒に確認していくことができます。

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2.食道がんの主な原因

ビールをコップに注ぐ

食道がんの原因として、多くの研究で繰り返し指摘されているのが飲酒と喫煙です。それぞれがどのように食道に影響するのか、詳しく見ていきましょう。

アルコールが体内で分解される過程で生じる「アセトアルデヒド」という物質には粘膜を傷つける作用があり、特にお酒を飲むとすぐに顔が赤くなる体質の方は、少量の飲酒でもこの物質をうまく分解できないため、食道への負担が大きくなりやすいといわれています。また、タバコの煙にはさまざまな発がん性物質が含まれており、喫煙は単独でも危険性を高めますが、飲酒と喫煙を両方行う場合、リスクがそれぞれ単独の場合より大きく高まることが指摘されています。

【 今日から意識したい2つの工夫】

  • お酒との付き合い方を見直す
    毎日の飲酒量を減らす、休肝日を設けるなど、無理のない範囲から始めてみましょう。顔が赤くなりやすい方は特に量に気を配ることが大切です。
  • 禁煙について医師や薬局に相談する
    自己流での禁煙が難しい場合は、禁煙外来や薬局のサポートを活用する方法もあります。

飲酒や喫煙の習慣は長年のものであるほど見直しにくいものですが、少しずつでも見直していくことが、食道への負担を減らす一歩になります。

飲酒・喫煙以外にも、日々の食事内容や体重が食道がんのリスクに関わっているとされています。

熱い飲食物を習慣的に摂る、野菜や果物の摂取が少ない食生活は、食道の粘膜に負担をかけやすいと考えられています。また、体重の増加は主に食道の下部に発生する腺がんとの関連が指摘されており、胃の内容物が食道へ逆流しやすくなることが一因とされています。

【食生活で見直しやすい2つのポイント】

  • 熱すぎる飲食物は少し冷ましてから
    やけどのような刺激を繰り返し受けることが、粘膜への負担につながると考えられています。
  • 野菜・果物をできる範囲で取り入れる
    毎食でなくても、意識して品数を増やすことから始めてみましょう。

食生活は一度に大きく変えようとすると続きにくいものですが、できることから少しずつ取り入れていく意識が、長い目で見て食道の負担を減らすことにつながります。

3.リスク要因とそのメカニズム

ビックリマークを持った医師

原因というと生活習慣を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、体質や遺伝的な要因が関わっている場合もあります。

先ほど触れたアルコール分解にかかわる体質は、遺伝的な要因の代表例です。この体質は生まれつきのものであるため、自分の意志で変えることはできません。また、血縁者に食道がんの経験がある場合、体質的な要因を共有している可能性はありますが、多くの場合は生活習慣との組み合わせで発症リスクが左右されるため、家族歴があるからといって過度に不安になる必要はありません。気になる場合は、日頃の生活習慣に気を配りながら、必要に応じて医師に相談してみるとよいでしょう。

体質は自分では選べないものですが、そのぶん生活習慣を意識することで、リスクを抑える工夫はできます。

胃酸の逆流を繰り返す「逆流性食道炎」も、食道がんの原因のひとつとして知られています。

逆流性食道炎は、胃の内容物、時には十二指腸の消化液までもが食道に逆流し、胸やけやのどの違和感などを引き起こす病気です。長期間続くと、食道の粘膜が胃に近い性質に変化する「バレット食道」という状態になることがあり、これは腺がんの発生と関連が深いことで知られています。身近な疾患ではありますが、繰り返す場合や長引く場合は、市販薬で様子を見るだけでなく消化器内科を受診し、状態を確認してもらうことが勧められます。

胸やけくらいと軽く考えがちな症状も、続く場合は食道の状態を確認しておくことで、その後の安心材料になります。

4.食道がんの初期症状

食道に違和感を覚える女性

食道がんの初期症状として比較的よく知られているのが、食べ物の飲み込みにくさです。

初期の段階ではほとんど症状が現れないことも多いのですが、がんが粘膜からある程度深く進行してくると、食べ物が喉や胸のあたりで引っかかるような感覚(つかえ感)を覚えることがあります。最初は固形物を飲み込むときに限られていた違和感が、進行とともに柔らかい食べ物や水分でも感じられるようになる場合もあります。こうした変化は、食道の内腔が狭くなり、飲み込む機能そのものが低下してきていることを示すサインのひとつと考えられており、体重減少を伴うこともあります。

飲み込みにくさは加齢や他の病気でも起こり得る症状ですが、続く場合や悪化する場合は、我慢せずに検査を受けるきっかけにしてみてください。

飲み込みにくさのほかに、胸やけや痛みといった症状が現れることもあります。

食道がんによる痛みは、胸の中央に焼けるような感覚やしみるような痛みとして現れやすく、食事の際に感じやすい傾向があります。進行すると背中や胸部の奥まで痛みが広がったり、気管が刺激されて咳が続いたりすることもあります。また、声帯を動かす神経に影響が及ぶと、声のかすれが出ることもあります。これらは逆流性食道炎など他の病気でも起こり得る症状のため、自己判断はせず医療機関での検査が必要です。

胸やけや痛みは日常でも起こりやすい症状だからこそ、いつもと違う続き方をしていないか、体からのサインに耳を傾けてみることが大切です。

5.食道がんの診断方法

CT検査

食道がんの診断において、中心的な役割を果たすのが内視鏡検査です。

内視鏡検査(一般には「胃カメラ」とも呼ばれます)では、口や鼻から挿入した細いカメラで食道の内部を直接観察でき、粘膜表面のわずかな色調の変化や凹凸まで確認できるため、早期の病変を見つけやすいのが特徴です。気になる部分があれば、その場で組織を採取する生検を行い、細胞を顕微鏡で調べて診断を確定します。症状がない段階でも異常を発見できるため、逆流性食道炎の経過観察や、健康診断・人間ドックでの検診で受ける機会も少なくありません。

検査そのものに不安を感じる方もいますが、内視鏡検査は今の食道の状態を正確に知るための、大切な手がかりになります。

内視鏡検査に加えて、がんの広がりを調べるために画像診断も欠かせません。

CTやMRIといった画像検査では、食道の周囲にあるリンパ節や、肝臓・肺・骨など離れた臓器への転移の有無を確認でき、内視鏡だけではわかりにくいがんの深さや広がりの把握にも役立ちます。内視鏡と超音波を組み合わせた検査であれば、粘膜下層や筋層といった食道の壁の中への浸潤の程度も詳細に確認できます。これらの結果は、手術が可能かどうか、どの治療法が適しているかを判断する目的で活用されます。

内視鏡と画像診断を組み合わせることで、がんの状態をより立体的に把握し、その後の治療方針を考えるための土台が整っていきます。

6.食道がんの治療法

積み木に描かれた医療の絵

食道がんの治療の中心となるのが手術療法です。がんの進行度によって選べる方法が異なります。

がんが粘膜のごく浅い部分にとどまる早期の段階では、内視鏡で病変部分だけを切除する「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」という、体への負担が比較的少ない方法が選ばれることがあります。一方、粘膜下層より深くまで達している場合は、食道そのものを切除する外科手術が検討され、切除後は胃や腸の一部で通り道を作る再建術が行われるのが一般的です。食道の周囲には気管や大動脈、心臓、太い血管が近接しており、がんができた場所が頸部か胸部か腹部かによってアプローチも変わるため、専門性の高い手術になります。どの方法が適しているかは、がんの深さや広がり、患者様の体力などを総合的に見て専門医が判断します。

手術と聞くと不安に感じるかもしれませんが、進行度に応じていくつかの選択肢があることを知っておくと、医師との話し合いにも臨みやすくなります。なお、外科手術を選択した場合は、約2週間前後の入院が必要になることもあります。

手術が難しい場合や、手術と組み合わせて行う場合には、化学療法や放射線治療が選択されます。

化学療法は薬剤で全身のがん細胞の増殖を抑える治療、放射線治療は放射線を患部に照射してダメージを与える局所的な治療です。この2つを同時に行う化学放射線療法は、手術が難しい場合の選択肢としても、手術前後に組み合わせる形としても行われ、吐き気や倦怠感、口の中の粘膜が荒れるといった副作用が出ることがあります。こうした副作用への対策を知っておくことも、治療を続けるうえで助けになります。

【 副作用とうまく付き合うための2つの工夫】

  • こまめな水分補給と口腔ケアを心がける
    口の中の乾燥や荒れを防ぐことで、食事のつらさを和らげやすくなります。
  • 無理をせず、つらい症状は早めに医療チームに伝える
    副作用への対処法は症状によって異なるため、我慢せず相談することで、負担を軽くする工夫をしてもらえます。

副作用と聞くと身構えてしまいますが、対処法を知って医療チームと連携しながら進めることで、治療にかかる時間を少しでも穏やかに過ごしやすくなります。

7.よくある質問

はてなとひらめきのマーク

治療後に気になることのひとつが、再発の可能性ではないでしょうか。

食道がんの再発のしやすさは、発見時のがんの深さや広がり、リンパ節への転移の有無といった病期によって大きく異なります。一般的に、粘膜のごく浅い部分にとどまる早期の段階で発見・治療できた場合は、進行した状態で見つかった場合に比べて再発のリスクは低い傾向にあるとされています。ただし、早期であっても経過観察を怠ってよいわけではなく、治療後は定期的な内視鏡検査や画像検査によるフォローアップを続けることが、再発の早期発見につながります。

再発への不安は誰にとっても大きいものですが、定期的な検査を続けていくこと自体が、その不安と上手に付き合っていくための支えになります。

8.まとめ

ここまで、食道がんの原因やリスク要因、初期症状の特徴、検査や治療の流れについて整理してお伝えしてきました。飲酒や喫煙、食生活、逆流性食道炎など、いくつもの要因が積み重なって発症に関わっていること、そして内視鏡検査や画像診断によって状態を丁寧に確認しながら、進行度に応じた治療法が選ばれていくことがおわかりいただけたのではないでしょうか。原因やしくみを知ることは、これから治療や経過観察に向き合っていくうえでの、確かな足がかりになります。ご自身のペースで、医療チームと一緒に歩みを進めていっていただければと思います。

快適医療ネットワーク理事長

監修 
医学博士 上羽 毅

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広い知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。