• 2024.10.28 2026.09.10
  • 肺がん

肺がんのステージ別治療法とは?病期ごとの選択肢と副作用をわかりやすく解説

肺がんと診断された方、ご家族が診断を受けた方へ。たくさんの情報の中から、今知っておきたいことを一緒に整理していきましょう。

ステージ(病期)ごとの治療方針や、手術・放射線・薬物療法の特徴、気になる副作用への対策まで、正確な情報を分かりやすくお伝えします。担当医との会話の材料にもなるよう、丁寧にまとめました。焦らず、ご自身のペースで、少しずつ読み進めていただければと思います。

1.肺がんの基礎知識

まずは、肺がんという病気そのものから確認していきましょう。

肺がんと書いた紙を持った医師

肺がんは、肺の細胞が変化してがん化する病気です。

気管支や肺胞の細胞の遺伝子に変化が積み重なることで発生します。日本人のがんによる死亡原因の中でも上位を占め、年齢を重ねるほどリスクが高まります。喫煙は代表的な要因ですが、たばこを吸わない方にも一定の割合で発生します。

せきや息切れ、胸の痛みが現れることもありますが、初期は自覚症状がほとんどない方も少なくありません。現在は検査技術の進歩で、早い段階で病変が見つかるケースも増えています。

自分の状態がどこにあたるのかを確認していくことが、見通しを立てる第一歩になります。

肺がんは、大きく2つのタイプに分けられます。

顕微鏡で調べたときの性質によって「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」に分類されます。非小細胞肺がんが多くを占め、腺がん・扁平上皮がん・大細胞がんなど、さまざまな種類に細分化されます。比較的ゆるやかに進行し、早期なら手術が中心の治療になります。

一方の小細胞肺がんは増殖が速く、診断時点ですでに全身へ転移していることも珍しくありません。そのため薬物療法や放射線治療を中心に組み立てます。

どちらのタイプかは、組織を調べる病理検査で判明します。腫瘍の原発部位や大きさも含め、自分の型を担当医に確認しておくことが大切です。

肺がんは本当に良くならないのか?
同じ肺がんと向き合い、乗り越えた方がいます。実際の記録をご覧ください。

胸水ありの肺がん末期の症例|余命2ヶ月から肺・リンパともに消失 進行の早い小細胞肺がんのステージⅣ、すべての腫瘍が完全消失。 左肺に10cmのがん、99%消失。画像でも確認できず。

2.肺がんのステージ分類

治療の話に入る前に、「ステージ」の決まり方を確認しておきましょう。

旗に描かれたステージ

肺がんのステージは、「TNM分類」という国際基準で決まります。

Tは腫瘍の大きさ、Nはリンパ節転移の有無、Mは肺以外の臓器への転移の有無を示す記号です。この3要素を組み合わせ、ステージ0からIV(ステージ4)までの病期が決まります。数字が大きいほど、がんの広がりが進んでいることを意味します。

CT検査やPET検査などを実施し、その結果に基づいて総合的に評価・判定され、治療方針の決定に直結します。

ステージが進むほど、治療の中心は手術から薬物療法へ移ります。

ステージ0はごく早期、ステージIは肺に限局しリンパ節転移がない状態です。ステージIIは腫瘍がやや大きいか、近くのリンパ節に転移がある段階です。

ステージIIIはがんが胸の中心部のリンパ節にまで広がり、手術だけでは対応が難しくなります。ステージIVは脳や骨、肝臓、胸水など遠くの臓器への影響が及ぶ段階で、薬物療法が治療の主軸になります。

自分のステージを知ることが、これからの予後や治療の全体像をつかむ手がかりになります。

3.ステージ別の治療法

ここからは、ステージごとの治療の選ばれ方を見ていきます。

治療法の絵とハート

ステージI・IIでは、手術が治療の中心になります。

腫瘍とその周囲を取り除く手術が基本で、部分切除や肺葉切除など、腫瘍の位置や大きさに応じて術式が選ばれます。体力的に手術を行うのが難しい場合は、定位放射線治療が選択肢となります。

リンパ節転移や再発予防が必要な場合は、手術後に薬物療法を併用する術後補助化学療法が検討されます。高齢の方や持病のある方は、通常より入院期間を含めて治療の組み合わせが調整されます。

早期であるほど、選べる治療の幅が広いことを知っておくと安心です。

ステージIIIでは、薬物療法と放射線治療の組み合わせが中心になります。

がんが縦隔リンパ節にまで広がっているため、手術単独での対応は難しくなります。化学放射線療法が治療の柱となり、状態によっては手術を組み合わせる集学的治療も検討されます。

近年は、化学放射線療法のあとに免疫療法を継続する例も広がっています。細かい分類(IIIA〜IIIC)に応じて手術の適応が変わるため、担当医との確認が重要です。

いくつかの治療を組み合わせる段階だからこそ、それぞれの役割を理解しておくと見通しが立ちやすくなります。

ステージIVでは、薬物療法が治療の軸になります。

すでに離れた臓器へ転移しているため、手術や放射線治療でがんを取りきることは難しくなります。遺伝子変異検査の結果に応じて、分子標的薬や免疫療法、細胞障害性抗がん剤などが選ばれます。

骨や脳への転移で症状が強い場合は、症状の改善を目的に部分的な放射線治療が加わることもあります。ご本人の希望に応じて、緩和ケアも初期段階から並行して取り入れられるのが一般的です。

薬の組み合わせの選択肢は年々増えており、ステージIVでも治療の道は一つではありません。

4.治療法の種類

続いて、個々の治療法の特徴を整理していきます。

注射器とクスリ瓶

外科療法は、がんの根治を目指す治療法です。

早期の段階で選ばれる中心的な治療で、肺の一部を切り取る部分切除、肺葉切除、肺全摘出まで、がんの広がりに応じた術式があります。近年は呼吸器外科の分野で、胸腔鏡を用いた体への負担が少ない手術も広がっています。

手術の可否は、腫瘍の位置や大きさ、心臓や肺の機能、年齢や持病を含めて総合的に判断されます。手術後は病理検査でステージが確定し、経過観察を続けながら必要に応じて薬物療法が追加されます。

取りきれるかどうかの見極めが、その後の治療方針を左右する分かれ道になります。退院後は外来で定期的な通院が続きます。

放射線療法は、放射線でがん細胞の増殖を抑える治療法です。

早期で手術が難しい場合は、定位放射線治療が単独で選ばれることがあります。がんが進行してリンパ節に広がっている段階では、薬物療法と組み合わせる化学放射線療法が中心です。局所への効果に加え、全身への影響も考慮して計画されます。

骨や脳への転移による痛みや症状をやわらげる、緩和的な放射線治療も大切な選択肢です。根治目的か症状緩和目的かで、照射範囲や回数の程度は変わります。

治療の目的を知っておくと、方針を見失わずに向き合いやすくなります。

薬物療法は、大きく3つの種類に分かれます。

がん細胞のDNAにはたらく細胞障害性抗がん剤、特定の遺伝子変異を狙う分子標的薬、免疫の力を活用する免疫療法です。がんの種類やステージ、遺伝子の状態によって組み合わせが決まります。

同じ肺がんでも、体の性質に合わせて選ばれる薬が大きく異なる点が特徴です。抗がん剤治療という言葉には、これらさまざまな治療方法が含まれます。新しい薬剤の開発も継続的に進んでいます。

自分に合った選択肢を担当医と確認しながら進めることが、安心につながります。

免疫療法は、体が本来持つ免疫の力でがんに対抗する治療法です。

がん細胞は免疫の働きにブレーキをかける仕組みを持つことがあり、免疫チェックポイント阻害薬はそのブレーキを外して免疫細胞の力を引き出します。単独でも、他の治療と組み合わせても用いられます。

効果が長く続く方がいる一方、免疫が強まりすぎることによる特有の副作用が起こることもあります。

新しい発想の治療が、選択肢をさらに広げています。

5.治療の副作用と管理

治療の副作用は、あらかじめ知っておくとあわてずに対応しやすくなります。

体調が優れない女性

手術後は、呼吸のしづらさや痛みなど、いくつかの変化が起こります。

手術後に起こりやすい変化と、その向き合い方

  • 呼吸のしづらさが続くとき
    無理のない範囲で呼吸リハビリを続けると、少しずつ体が慣れていきます。
  • 傷口の痛みが気になるとき
    痛み止めを我慢せず、医療者と相談しながらコントロールしましょう。
  • せきや痰が出やすいとき
    こまめな水分補給と体位の工夫で、肺炎などの合併症を防ぎやすくなります。

変化の多くは一時的なもので、少しずつ日常生活に戻っていく過程だと捉えておきましょう。

放射線治療では、皮膚の炎症やだるさが起こりやすくなります。

放射線治療中・治療後に気をつけたいこと】

  • 皮膚の炎症へのケア
    こすらず、刺激の少ない衣類を選ぶことが負担の軽減につながります。
  • だるさ・食欲不振への対応
    無理をせず、食べられるときに少量ずつ栄養をとりましょう。
  • せきや息苦しさの変化に注意する
    いつもと違うせきや発熱が続く場合は、早めに相談しましょう。

副作用の多くは治療終了とともに落ち着く一時的なものです。早めに気づくことが生活を守ります。

薬物療法の副作用は、薬の種類によって現れ方が異なります。

薬物療法でよくある副作用への具体的な工夫】

  • 吐き気・食欲不振への対策
    吐き気止めを事前に使うことで、症状を軽くできます。
  • 脱毛への備え
    ウィッグや帽子を事前に用意しておくと、気持ちの負担が減ります。
  • 感染症への注意
    手洗い・うがいを徹底し、人混みを避けることが助けになります。
  • 皮膚や爪の変化への対応
    保湿を習慣づけることで、乾燥や変形を和らげやすくなります。

自分が使う薬の特徴を知っておくことが、日々の備えにつながります。

6.肺がん治療の最新動向

治療の選択肢を広げつつある、最近の動きを見ていきます。

一歩を踏み出す人

肺がんの治療は、新しい薬剤の開発が今も続く分野です。

分子標的薬や免疫療法では、これまで選択肢が限られていたタイプにも、新しい薬剤の開発が進んでいます。臨床試験への参加も、選択肢の一つとして提示される場合があります。

医療の進歩は更新され続けており、以前は難しいとされたケースにも新しい手立てが増えています。標準治療の内容も、こうした研究をもとに少しずつ見直されています。

個別化医療とは、一人ひとりに合わせて治療を選ぶ考え方です。

遺伝子の特徴や体の状態に合わせて、もっとも効果が期待できる治療を選びます。ゲノム医療とも関係する分野で、遺伝子変異検査の結果によって分子標的薬を選びます。免疫にかかわる指標によっては免疫療法を選ぶ、といった流れがすでに広く取り入れられています。すべての方が対象となるわけではなく、検査結果によっては以下のような従来の治療が中心になる場合もあります。

自分に合った治療の基準を知ることが、治療方針への納得感につながります。

7.肺がん患者へのサポート

治療そのものだけでなく、生活や心の面を支えることも大切です。

手を握る

診断や治療の過程では、気持ちの負担が生まれやすくなります。

気持ちの負担と向き合うための具体的な方法】

  • 医療者に率直な気持ちを伝える
    看護師や医師に伝えることで、必要なサポートにつながります。
  • 同じ経験を持つ人とつながる
    患者会やサポートグループで、気持ちを分かち合う機会が得られます。
  • 専門家によるカウンセリングを利用する
    がん相談支援センターなどで、心理の専門家に相談できます。

治療方針に迷ったときは、別の病院でセカンドオピニオンを聞くのも一つの方法です。医師の説明を十分に受けたうえで、心の負担は一人で抱え込まなくてよいものだと知っておくと、少し楽になります。

治療中の生活の質は、日々の小さな工夫で保ちやすくなります。

日常生活の質を保つための工夫】

  • 無理のない範囲で体を動かす
    ウォーキングや軽いストレッチで、体力の低下を防ぎやすくなります。
  • 栄養バランスを意識した食事を心がける
    少量でも栄養価の高い食品を選ぶことが、体力の維持につながります。
  • 十分な休息と睡眠を確保する
    無理をせず、休む時間を意識的に確保することが回復を助けます。

小さな工夫の積み重ねが、治療と向き合う体力や気持ちを支える土台になります。

8.まとめ

肺がんのステージ分類の仕組みから、病期ごとの治療方針、そして治療法の種類や副作用への対策までを整理してお伝えしました。非小細胞肺がんと小細胞肺がんというタイプの違いや、ステージによって治療の組み合わせが大きく変わることを感じていただけたのではないでしょうか。治療の選択肢は年々広がっており、一人ひとりに合わせた治療が選べる時代になっています。今回の内容が、担当医との会話を進めるきっかけになれば幸いです。次に気になる点が出てきたときも、ご自身のペースで確認しながら治療に向き合っていただければと思います。

快適医療ネットワーク理事長

監修 
医学博士 上羽 毅

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。