• 2024.04.01 2026.09.03
  • 肺がん

肺がんの放射線治療とは?仕組み・種類・副作用をやさしく解説

「放射線治療」と聞いて、まず何を思い浮かべますか。手術のように体を大きく切ることはないと分かっていても、「痛いのでは」「ずっと通院しなければならないのでは」と、見えない不安がふくらんでいく方も少なくありません。今日は、肺がんの放射線治療について、どんな種類があり、体にどんな変化が起こりうるのか、順を追って一緒に整理していきましょう。

1.肺がんの放射線治療、まずは基本から

画像を見ながら患者に説明する医師

放射線治療とは、高いエネルギーを持つ放射線をがん細胞にあてて、その働きを抑えたり縮小させたりする治療法です。手術のようにメスを使わないため、体への負担を比較的少なく抑えられるのが特徴です。専用の装置を使い、コンピューターで放射線の分布や線量(Gyという単位で示されます)を細かく計算したうえで、CT撮影による画像をもとに照射の計画図を作成していきます。

【 肺がんの治療で使われる放射線の種類】

  • X線・ガンマ線
    体の深いところまでしっかり届く、治療の中心となる放射線です。多くの医療機関にある治療装置で照射でき、肺のように体の奥にある臓器の病変にも対応しやすいのが特徴です。
  • 陽子線・重粒子線
    狙った深さでエネルギーを集中させやすい性質を持ち、周囲の正常な組織への影響を抑えたい場合に選択肢となることがありますが、対応できる施設は限られています。

どの放射線が使われるかは、がんのある部位や大きさ、これまでの治療歴によって医師が判断します。「今回は、どのタイプの放射線を、どんな目的で使うのか」を聞いておくと、治療への見通しが立てやすくなりますよ。

放射線治療は、すべての肺癌に一律に行われるわけではありません。がんという病気の種類や進行の度合い、そして患者様ご自身の体の状態によって、選択されるかどうかが変わってきます。肺がんは大きく「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」という型に分けられ、どちらのタイプかによっても治療方針との関係が変わってきます。

たとえば、がんがまだ肺の中にとどまっている、いわゆる肺に限局している早期の段階では、体への負担が少ない方法として放射線治療が単独で選ばれることがあります。一方で、リンパ節や脳など遠隔の臓器への転移が確認されている進行した段階や、腫瘍が大きい場合には、化学療法と組み合わせることで治療効果を高める方針がとられることも少なくありません。また、高齢であることや、他の疾患を抱えていることを理由に手術が困難と判断された場合にも、放射線治療が有力な選択肢として検討されます。

がんの根治を目指す場合と、痛みや息苦しさといった症状をやわらげることを目的とする場合とでは、照射の範囲や回数の考え方そのものが異なります。日本国内の多くの医療機関で、診断結果に基づいてこうした方針が総合的に判断されており、標準的な治療の進め方として報告されています。治療全体の流れや、ご自身がどちらの目的で治療を受けているのかを理解しておくことは、これからの見通しを持つうえでとても重要な一歩になります。

担当の医師から治療方針の説明を受けるときは、「私の場合は、根治を目指しているのか、それとも症状をやわらげることが目的なのか」「希望に沿った治療は選べるのか」と、率直に尋ねてみてください。その一言が、今後の心構えを整える助けになります。

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胸水ありの肺がん末期の症例|余命2ヶ月から肺・リンパともに消失 進行の早い小細胞肺がんのステージⅣ、すべての腫瘍が完全消失。 左肺に10cmのがん、99%消失。画像でも確認できず。

2.肺がんの放射線治療、こんな種類があります

放射線治療とひとくちに言っても、その中身は一つではありません。ここからは、肺がんの状態に応じてどんな種類の治療が選ばれているのか、具体的に見ていきましょう。

ひらめき

定位放射線治療(SBRT)は、腫瘍のある一点にピンポイントで放射線を集中させる、精度の高い治療法です。周囲の正常な組織への影響を抑えながら、がんに強い効果を狙えることから、比較的早期の肺がんで選ばれることが増えています。腫瘍の形状に合わせて照射野を絞り込むため、良好な治療成績が得られたとする報告も少なくありません。

【定位放射線治療(SBRT)の主な特徴

  • 高い精度で腫瘍に集中できる
    コンピューターによる緻密な計画のもと、病巣の形に合わせて放射線を絞り込みます。
  • 通院期間が短くて済む
    SBRTは1〜2週間程度、数回の照射で完了することが多く、日常生活への影響を抑えやすい方法です。
  • 体力に不安がある方にも配慮しやすい
    副作用が比較的少なく、高齢の方にも選択肢として検討されることがあります。

「通常の放射線治療より通院期間が短くて済む方法があると聞いたのですが、私にも合いますか」と、腫瘍の大きさや位置とあわせて先生に相談してみるとよいでしょう。

がんがリンパ節まで広がっているなど、進行した段階の肺がんでは、放射線治療単独ではなく、抗がん剤治療(薬物療法)と組み合わせる「化学放射線療法」が選ばれることがあります。多くの医療機関でこの治療を行い、進行した肺がんに対応しています。

化学療法によってがん細胞が放射線の影響を受けやすい状態になるため、二つを併用することで、それぞれを単独で行うよりも高い効果を得られると期待されています。あわせて、全身に散らばっている可能性のあるがん細胞に対しても薬物療法が働きかけるため、局所だけでなく全身状態を見据えた治療計画が立てられます。

また、小細胞肺がんという、進行が比較的速いタイプの肺がんに対しては、早い段階から化学療法と放射線治療を組み合わせる方針がとられることが一般的です。小細胞肺がんは非小細胞肺がんと性質が異なるため、担当の医師から「なぜこの組み合わせが選ばれているのか」を丁寧に説明してもらうと、治療への理解が深まります。治療のスケジュールは数週間にわたることが多く、体調の変化を感じやすい時期でもあるため、無理をせず過ごすことを心がけましょう。従来の治療法と比べて、効果と負担のバランスを考慮しながら計画が立てられている点も知っておいていただきたいところです。

「薬物療法と放射線治療、それぞれどんなタイミングで進んでいくのか」を、あらかじめ確認しておくと、生活の予定も立てやすくなります。

がんの根治を目指すのではなく、痛みや息苦しさなど、つらい症状そのものをやわらげることを目的に行われる放射線治療もあります。これを緩和的放射線治療と呼びます。

【緩和的放射線治療で期待できること】

  • 痛みの軽減
    骨への転移などによる痛みに対して、放射線が症状の低減に役立つことがあります。
  • 息苦しさの改善
    気道の近くにある腫瘍を縮小させることで、呼吸のつらさが軽くなる場合があります。
  • 生活の質の向上
    今の生活をできるだけ穏やかに過ごすための治療という側面を持っています。

「がんそのものを小さくすることより、今つらい症状を楽にしたい」という思いは、決して後ろ向きなことではありません。その気持ちを、そのまま担当医に伝えてみてください。

近年、放射線治療の技術は進歩しており、より精度高く、そして体への負担を抑える方向へとさまざまな工夫が重ねられています。

【知っておきたい放射線治療の技術】

  • 画像誘導放射線治療(IGRT)
    治療のたびに画像で腫瘍の位置を確認しながら照射するため、狙いのずれを抑えやすくなります。
  • 強度変調放射線治療(IMRT)
    放射線の強さを部位ごとに細かく調整し、脊髄など周囲の臓器への影響を減らす工夫がされています。
  • 免疫療法との併用
    放射線治療のあとに免疫療法を続けることで、治療効果を高められないか、臨床試験などを通じて研究が進められている分野でもあります。

こうした技術は、肺がん以外にも乳がんや前立腺がんなど、さまざまながんの治療で使用されています。「自分が受ける治療には、どんな技術が使われているのか」を知っておくだけでも、治療室に向かう足取りが少し軽くなるかもしれません。

3.放射線治療にともなう副作用と、その付き合い方

ここまで治療の種類についてお伝えしてきましたが、実際に治療を行うとなると、体にどんな変化が生じるのかも気になるところですよね。あらかじめ知っておくことで、いざというときに慌てずに対応できます。

バインダーを持った医師

放射線治療をはじめてから数日〜数週間のうちに現れる副作用を、急性期の副作用と呼びます。多くは治療が終われば少しずつ落ち着いていきますが、つらさを我慢する必要はありません。以下のような症状が現れることがあります。

【急性期に起こりやすい症状】

  • だるさ・疲労感
    治療の反応として体がだるく感じやすくなります。無理をせず、こまめに休むことを優先してください。
  • 皮膚炎
    照射した部分の皮膚が赤くなったり、ひりつくことがあります。刺激の少ない衣類を選ぶと楽になります。
  • 食道炎
    飲み込むときに違和感やしみるような痛みを感じることがあります。
  • せきや息苦しさ
    肺の周辺に照射することで、一時的に呼吸器の症状が出やすくなる場合があります。

こうした症状は、我慢して耐えるものではなく、伝えることでやわらげる工夫ができるものです。「だるさが強くて食事もつらい」というように、感じたままの言葉で医療スタッフに伝えてみてください。症状によっては、追加の検査で原因を確認することもあります。息苦しさが急に強くなったときや、高い熱が続くときは、様子を見ずにすぐ医療機関へ連絡してください。

治療が終了してからしばらく経ってから現れる副作用を、晩期の副作用と呼びます。すぐには気づきにくいからこそ、知っておくことに意味があります。

【晩期に注意しておきたい変化】

  • 肺機能の低下
    息切れや軽い運動での疲れやすさとして現れることがあり、定期的な検査で再発の有無を確認しながら経過観察を続けていきます。
  • 心臓への影響
    治療した部位によっては、心臓の働きに影響が及ぶ可能性があり、長期的な経過観察の対象になります。
  • 周囲の組織のこわばり(合併症)
    病変があった部位周辺の組織が硬くなり、感覚の変化として気づくことがあります。

晩期の副作用は、治療から時間が経っているぶん「治療のせいかもしれない」と気づきにくいものです。息切れがだんだん強くなってきたと感じたときは、早めに病院へ相談してください。ご家族が「前より疲れやすそうだ」という様子に気づいたときも、その気づきをぜひ本人に伝えてあげてくださいね。

4.まとめ

ここまで、肺がんの放射線治療の概要としくみから、定位放射線治療や化学放射線療法といった種類ごとの特徴、そして治療中や治療後に起こりうる副作用との付き合い方まで、順を追ってご紹介してきました。

放射線治療と一口に言っても、その中身は一人ひとりの状態に合わせて選ばれるものであり、決まった正解が一つあるわけではありません。分からないことや不安に思うことがあれば、その都度担当の医療スタッフに言葉にして伝えてみてください。ご家族も、そばで支えるだけで十分な力になっています。今日知ったことが、これからの治療を少しでも見通しよく過ごすための助けになれば幸いです。

快適医療ネットワーク理事長

監修 
医学博士 上羽 毅

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。