- 2024.10.15 2026.10.06
- 肺がん
肺がんの原因は?タバコを吸わない人にも起こる理由と遺伝子の関係
肺がんと診断されると、「やっぱりタバコのせいだろうか」「一本も吸ったことがないのに、どうして」と、原因を考え込んでしまう方は少なくありません。長く吸ってきた方は過去の喫煙を悔やみ、吸わない方は思い当たる理由がなく戸惑う。どちらの立場でも、はっきりした答えが見えないことが不安につながります。
肺がんは喫煙だけでなく、アスベストなどの有害物質や、肺の細胞に起きる遺伝子の変化など、いくつもの要因が重なって起こる病気です。最近の研究では、原因となった遺伝子の変化を調べることで、その方に合った薬を選べるようになってきました。
この記事では、肺がんの主な原因を整理したうえで、喫煙・環境・遺伝との関係を順に解説します。1章のあとには、実際に肺がんと向き合ってきた方の症例も紹介しています。どの原因が関わっているかによって、検査で確かめる点や選べる薬が変わることもあります。一つずつ整理しながら、医師と一緒にこれからの治療を考えていきましょう。
1.肺がんの原因は?まず知っておきたい主な要因
まずは、肺がんの原因として分かっているものを、全体像から確認していきましょう。
肺がんの主な原因は6つ
肺がんの最大の原因は喫煙ですが、それ以外にも複数の要因が知られています。多くの場合、一つの原因だけでなく、いくつかの要因が長い時間をかけて重なり、肺の細胞が傷ついて発生します。
主な原因は次のとおりです。
- 喫煙
肺がんの原因の約7割を占めるとされる最大の要因 - 受動喫煙
周囲の人のタバコの煙を吸うことで、リスクが2〜3割程度高まる - アスベストなどの有害物質
仕事などで長期間吸い込むことでリスクが上がる - 大気汚染
排気ガスなどに含まれる細かい粒子の影響が報告されている - 肺の病気
肺結核や、煙などで肺が傷つくCOPD、間質性肺炎といった持病 - 遺伝子の変化
喫煙歴のない方の肺がんにも関係する、細胞の中の変化
それぞれの詳しい内容は、2章以降で一つずつ説明していきます。
タバコを吸わないのに肺がんになるのはなぜ?
タバコを吸わない方が肺がんになることは、決してめずらしくありません。特に女性や非喫煙者に多い「肺腺がん」は、喫煙以外の要因が関係しやすいタイプです。
非喫煙者の肺がんでは、受動喫煙や大気汚染、職場での有害物質の吸入などが原因として考えられています。また、肺の細胞の中でEGFRなどの遺伝子に変化が起き、がん細胞が増え続けるケースも明らかになってきました。この変化は親から受け継ぐものではなく、生まれた後に肺の細胞で起こるものがほとんどです。
さらに女性では、女性ホルモンの働きとの関係についても研究が進められています。原因を一つに特定できないことも多いものの、遺伝子の変化を調べることで、治療薬を選ぶための大切な情報が得られる場合があります。
原因がタバコかどうかにかかわらず、気になるのは「この先どうなるのか」ということではないでしょうか。同じ肺がんと診断された方の歩みは、ご自身のこれからを考えるヒントになります。
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2.喫煙は肺がんにどう影響する?
ここからは、最大の原因である喫煙と、身の回りの環境が肺に与える影響を詳しく見ていきます。
喫煙と受動喫煙の影響
喫煙者は、タバコを吸わない人に比べて肺がんになるリスクが男性で約4.4倍、女性で約2.8倍高いと報告されています。
タバコの煙には、約70種類の発がん性物質が含まれています。煙を吸うたびに気管支や肺の細胞が傷つき、遺伝子の変化が少しずつ積み重なることで、がんが発生しやすくなる仕組みです。リスクは吸い始めた年齢が若いほど、また1日に吸う本数が多く、喫煙期間が長いほど高くなります。
一方、本人が吸わなくても、家族や職場の喫煙者の煙を吸い込む受動喫煙によって、肺がんのリスクは2〜3割程度高まるとされています。
なお、扁平上皮がんや小細胞がんは、特に喫煙との関係が強いタイプです。ご自身のがんの種類を知ることも、原因を理解する手がかりになります。
アスベストや大気汚染などの環境要因
喫煙以外では、アスベスト(石綿)などの有害物質を長期間吸い込むことが、肺がんの原因として知られています。
アスベストは、かつて建材などに広く利用されていた繊維状の鉱物です。建設業や造船業、解体作業などで吸い込んだ場合、20年以上たってから肺がんを発症することがあります。また、自動車の排気ガスなどに含まれる細かい粒子による大気汚染も、肺がんとの関係が報告されています。
過去の仕事が関係しているかもしれないと感じたら、次の2点を確認しておきましょう。
【 過去の仕事が気になるときに確認したいこと】
- これまでの職歴を医師に伝える
アスベストを扱った時期や作業内容を伝えると、診断や治療方針を考える参考になります。 - 救済制度の対象か確認する
アスベストが原因の肺がんは、労災保険や石綿健康被害救済制度の対象となる場合があります。がん相談支援センターでも相談できます。
制度には申請の期限があるため、気になる方は早めに確認しておくことが大切です。
3.肺がんは遺伝する?
「家族にうつるのでは」「子どもに遺伝するのでは」という心配もよく聞かれます。ここでは、遺伝と遺伝子の変化の違いを整理します。
家族歴と遺伝子の関係
肺がんは、親から子へ必ず受け継がれる病気ではありません。ただし、親や兄弟姉妹に肺がんの方がいる人は、いない人に比べて肺がんのリスクが約2倍高いと報告されています。
その理由として、体質に加え、同じ家で暮らすことによる受動喫煙など、生活環境を共有している影響も考えられています。遺伝的な体質だけで肺がんになるケースは少ないとされていますが、ご家族の健康が気になる場合は、主治医に相談してみるとよいでしょう。
特定の遺伝子変異とリスク
肺がんの発生には、細胞の中の遺伝子の変化が深く関わっています。ここでいう変化は生まれた後に肺の細胞で起こるもので、家族に受け継がれるものとは異なります。
タバコの煙や有害物質で細胞が傷つくと、細胞の増え方をコントロールする遺伝子に異常が起きることがあります。すると、本来は止まるはずの増殖が止まらなくなり、腫瘍となって大きくなっていきます。
日本人の肺腺がんでは、EGFR遺伝子の変異が比較的多く見つかることが知られています。このほかALKやROS1、KRASなど、さまざまな遺伝子の変化が明らかになってきました。
遺伝子変異に合わせた新しい治療法
肺がんの原因となる遺伝子の変化が分かってきたことで、治療は大きく進歩しています。
現在の肺がん治療では、手術で採取した組織や、気管支鏡などで取り出した細胞を使って遺伝子の検査を行うのが一般的です。特定の遺伝子変異が見つかった場合は、その働きを狙ってがん細胞を攻撃する分子標的薬が、治療の対象となります。
また、体の免疫の力を利用する免疫チェックポイント阻害薬も使われるようになりました。進行の段階によっては、外科手術や放射線治療、薬物療法を組み合わせる方針がとられます。小細胞肺がんの一部では、脳に転移が出てくるのを予防するため、頭部全体に放射線を当てる方法がとられる場合もあります。
どの治療が合うかは、遺伝子検査の結果とがんの段階によって異なります。検査結果について気になることは、主治医に確認してみてください。
4.肺がんの基本知識
原因を理解したところで、肺がんという病気の全体像も簡単に押さえておきましょう。
肺がんとは何か
肺がんとは、空気の通り道である気管支や、酸素を取り込む肺胞の細胞から生じるがんの総称です。肺は呼吸で酸素を取り込み、二酸化炭素を出す機能を担うため、空気中の有害物質の影響を受けやすい部位と言えます。
日本では年間約12万人が新たに肺がんと診断されています。がんによる死亡数は男性で第1位、女性でも上位を占めており、国立がん研究センターの統計でも患者数の多い状態が続いています。
肺がんの種類と特徴
肺がんは、がん細胞の見た目から大きく4つのタイプに分けられ、それぞれ原因との関係が異なります。
| 種類 | できやすい場所 | 原因との関係・特徴 |
|---|---|---|
| 腺がん | 肺の奥のほう | 最も多いタイプ。女性や非喫煙者にも多い |
| 扁平上皮がん | 肺の入り口に近い太い気管支 | 喫煙との関係が強い |
| 大細胞がん | 肺の奥のほう | 発生は少ないが、増殖が速い |
| 小細胞がん | 肺の入り口に近い部分 | 喫煙との関係が強く、進行や転移が速い |
腺がん・扁平上皮がん・大細胞がんは「非小細胞肺がん」としてまとめられ、小細胞がんとは治療方針が異なります。
5.肺がんの原因に関するよくある質問
最後に、肺がんの原因についてよく寄せられる疑問にお答えします。
Q:肺がんの症状はどのようなものですか?
A:初期の肺がんは、ほとんど症状がないのが特徴です。
そのため、早期発見が難しい病気とされています。進行すると、次のような症状が出ることがあります。
- 長引く咳や痰、血痰
- 胸部の痛みや息切れ、呼吸のしづらさ
- 声のかすれ、体重の減少
脳や骨に転移すると、頭痛や骨の痛みが出る場合もあります。治療中に新しい症状が出てきたときは、がんの広がりや治療の影響を確かめる必要があるため、早めに主治医へ相談してください。
Q:加熱式たばこなら安全ですか?
A:安全とは言えません。
加熱式たばこの煙にも有害物質が含まれており、健康への影響を否定できないためです。長く使った場合の肺がんへの影響はまだ十分に分かっておらず、紙巻きたばこの代わりとして勧められるものではありません。
Q:診断後に禁煙しても意味はありますか?
A:はい、意味があります。
喫煙を続けると、手術後に肺炎などの合併症が起こりやすくなるほか、薬が効きにくくなったり副作用が出やすくなったりすることが報告されています。治療の効果を引き出すためにも、診断後の禁煙は大切です。禁煙が難しい場合は、禁煙補助薬を処方してもらえる禁煙外来を受診すると、ひとりで我慢するより続けやすくなります。
Q:原因が分からないと、治療に影響しますか?
A:原因がはっきりしなくても、治療を選ぶことはできます。
肺がんの治療方針は、がんの種類やステージ、遺伝子検査の結果、体の状態などをもとに決められるためです。これらの情報がそろえば、手術・放射線治療・薬物療法の中から、その方に合う方法を検討していきます。
6.まとめ
肺がんの最大の原因は喫煙です。ただし、受動喫煙やアスベスト、大気汚染、肺の細胞に起きる遺伝子の変化など、ほかにもいくつもの要因が関わっています。タバコを吸わない方が発症することも少なくありません。
喫煙歴があってもなくても、いま目の前にあるがんの性質に合わせて治療を選べる道は、以前よりも大きく広がっています。
原因を一つに特定できないことも多い病気ですが、ご自身のがんの種類や遺伝子検査の結果を知ることは、これからの治療を考える土台になります。まずは「私の肺がんはどのタイプで、遺伝子の変化はありましたか」と、主治医に聞いてみるところから始めてみてください。

快適医療ネットワーク理事長
監修
医学博士 上羽 毅
金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広い知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。









