• 2024.05.20 2026.10.14
  • 肺がん

肺がん末期とは?ステージ4との違いと治療の選択肢、余命や症状への対処法

「末期の肺がんです」と告げられ、もう治療は受けられないのか、息苦しさや痛みはどうなるのかと、頭がいっぱいになった方もいらっしゃると思います。肺がんでは「息ができなくなるのでは」という怖さを抱きやすく、ご本人もご家族も先の見えない不安を感じやすいものです。

一般に「末期」とは、がんを完全に治すことが難しくなった段階を指す言葉です。ただ、医学的に厳密な定義はなく、ステージ4とまったく同じ意味でもありません。

ここ十数年で、肺がんの治療は大きく変わりました。がんの遺伝子のタイプに合わせた薬や、免疫の力を利用する薬が加わり、つらい症状を和らげる方法も増えています。末期と言われたあとに状態が改善し、日常を取り戻した方の記録も実際に残されています。

いまの状態を正しく知ることが、ご本人とご家族が納得できる道を選ぶための第一歩になります。わからないことは一つずつ医療チームに確かめながら、これからの過ごし方を一緒に考えていきましょう。

1.肺がんの「末期」とは?ステージ4との違いと進行・余命の目安

まずは「末期」という言葉が何を指しているのかを整理しておきましょう。言葉の意味がわかると、統計の数字との向き合い方も変わってきます。

がんのステージ

結論から言うと、「ステージ4」はがんの広がりを表す医学的な分類で、「末期」はがんを治しきることが難しくなった状態を指す一般的な言葉です。

ステージ4は、がんが肺を越えて離れた場所に転移した状態を指します。脳や骨、肝臓、副腎、反対側の肺などへの転移のほか、胸膜に広がって胸水がたまった場合も含まれます。

一方の「末期」には、一律の定義がありません。多くの場合、がんを治しきる治療が難しくなり、つらさを和らげるケアが中心になった段階を指して使われます。

つまり、ステージ4でも薬でがんを抑えながら過ごしている方は大勢いて、ステージ4がそのまま末期を意味するわけではないのです。「末期なのでは」と不安になったときは、ご自身のステージを主治医に確認し、メモに残しておくと安心です。

肺がんは、血液やリンパの流れに乗って全身に広がりやすいがんです。進行すると、肺そのものの症状に加えて、転移した部位ごとの症状が現れるようになります。

多くは近くのリンパ節から始まり、胸膜や遠くの臓器へと進みます。転移が骨に及べば痛みや骨折、脳に及べば頭痛や吐き気、手足のまひなどが起こりえます。肝臓や副腎への転移は症状が出にくく、画像検査で見つかることが少なくありません。

気になる余命についても触れておきます。国立がん研究センター(2014〜2015年診断例)によると、肺がんステージ4の5年生存率は約8%と報告されています。乳がんや大腸がんのステージ4と比べても低い数字です。

ただし、これは過去に診断された多くの方の平均で、近年登場した薬の効果は十分に含まれていません。がんの種類や遺伝子変異の有無、体力、治療への反応によって、経過は一人ひとり大きく異なります。

統計の数字は、あくまで多くの方の平均です。その数字の裏には、末期と告げられたあとに体調を持ち直し、自分らしい時間を過ごしている方もいます。そうした方々は、どのような経過をたどったのでしょうか。

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胸水ありの肺がん末期の症例|余命2ヶ月から肺・リンパともに消失 進行の早い小細胞肺がんのステージⅣ、すべての腫瘍が完全消失。 左肺に10cmのがん、99%消失。画像でも確認できず。

2.末期肺がんの治療選択肢とその効果

末期と言われても、受けられる治療がすべてなくなるわけではありません。どんな選択肢があるのかを知っておくと、主治医から提案された治療の目的がぐっと見えやすくなります。

説明する医師

肺がんの治療方針は、がん細胞の種類によって大きく変わります。肺がんは大きく、非小細胞肺がんと小細胞肺がんに分けられます。

非小細胞肺がんは肺がんの多くを占め、腺がんや扁平上皮がんなどが含まれます。小細胞肺がんは数としては少ないものの、増殖が速く、早い段階から転移しやすい性質を持っています。

さらに非小細胞肺がんでは、がんの遺伝子変異の有無によって使える薬が変わります。ご自身のがんの種類と遺伝子検査の結果を把握しておくと、治療の内容が理解しやすくなります。

がんが全身に広がっている段階では手術は難しく、治療の中心は血液に乗って全身に届く薬物療法です。体力が保たれていれば、主に3つのタイプの薬を単独で、または組み合わせて使います。

まず抗がん剤は、がん細胞の増殖を抑える治療で、今も標準治療の柱です。多くは点滴で投与し、吐き気や脱毛、白血球の減少といった副作用が出ることがあります。

次に分子標的薬は、特定の遺伝子の異常を狙ってがんを攻撃する薬です。EGFRやALKなどの遺伝子変異が見つかった場合に使われ、飲み薬が中心です。皮膚の発疹や下痢など、抗がん剤とは異なる副作用に注意が必要です。

そして免疫チェックポイント阻害薬は、がんが免疫にかけているブレーキを外す免疫療法の一つです。単独のほか、抗がん剤と併用することもあり、小細胞肺がんではこの組み合わせが基本の治療方法です。

ただし、体の機能が大きく低下していると副作用が強く出るリスクが高いため、無理な抗がん剤治療を控える判断もあります。いまの治療が「がんを抑えるため」か「症状を和らげるため」か、目的を主治医と共有しておきましょう。

末期の肺がんでは、放射線治療は主に痛みや息苦しさを和らげる目的で行われます。がんを治しきるためというより、生活を楽にするための治療と考えるとわかりやすいでしょう。

たとえば骨転移による激しい痛みは、放射線を当てることでやわらぐことが多く、骨折の予防にもつながります。脳転移による頭痛や吐き気の軽減、気管支を圧迫する腫瘍を小さくして気道を広げる際にも有効です。

照射の回数が比較的少なく、短い期間で終わるケースも多いのが特徴です。痛み止めで抑えきれない痛みがあるときは、主治医に相談してみてください。

緩和ケアは、治療をあきらめた人のための医療ではありません。がんの治療と同時に受けられ、体と心の苦痛を和らげて生活の質(QOL)を保つことを目的としています。

痛みに対しては、痛みの強さや種類に応じて、医療用麻薬や炎症を抑える痛み止めなどの薬を段階的に使います。医療用麻薬は、医師の管理のもとで使えば依存の心配は少なく、量の調整もできる薬です。

肺がんに特有なのが、呼吸困難への対応です。酸素を補う酸素療法に加え、少量のモルヒネを使用することで、息苦しさの感じ方そのものを和らげることができます。胸水がたまって肺が圧迫されている場合は、細い管で水を抜く処置を行い、再びたまりにくくする治療が検討されることもあります。

つらさは「10点満点で何点くらいか」と数字で伝えると、医療スタッフが薬の量を調整しやすくなります。我慢せずに、変化があればその都度伝えてください。

肺がんは、新しい薬の研究が特に活発ながんの一つです。標準的な治療が効きにくくなったあとでも、臨床試験(治験)という形で新しい治療に参加できる可能性があります。

これまで使える薬がなかった遺伝子のタイプにも、新しい分子標的薬が次々と登場しています。条件を満たせば複数の遺伝子を一度に調べる検査を受けられ、合う薬や治験が見つかるケースもあります。

治験には体力や治療歴などの参加条件があるため、関心がある場合は早めに主治医やがん相談支援センターで情報を集めておきましょう。

3.病状の説明を受けるときに確かめたいこと

治療方針は、がんの種類や広がり、体の状態を調べた検査の結果をもとに決まります。気管支鏡で採った組織の遺伝子検査やPD-L1というたんぱく質の量、CTやPET-CT、脳のMRIなどの画像検査、血液検査の結果から、どの薬を使えるかが判断されます。

こうした説明は、一度ですべてを理解するのが難しいものです。大切なポイントを押さえて、納得できるまで確認することが次の一歩につながります。

ルーペとはてな

【説明を受けるときに確かめておきたいこと】

  • がんの種類と遺伝子検査の結果
    結果待ちの項目があれば、いつごろわかるのかも聞いておきます。
  • 治療の目的と期待できる効果
    がんを抑えるためか、症状を和らげるためかで、治療の選び方が変わります。
  • 副作用と日常生活への影響
    通院の頻度や、仕事・家事をどこまで続けられるかも確認しましょう。
  • セカンドオピニオンの希望
    ほかの病院の専門医に意見を求めるのも一つの方法です。主治医に遠慮する必要はありません。

ご家族と一緒に説明を聞き、内容をメモに残しておくと、あとから落ち着いて話し合えます。なお、セカンドオピニオンは多くの場合、保険が使えない自費の費用がかかるため、事前に病院へ確認しておきましょう。

4.末期肺がんの症状

ここでは、末期の肺がんで現れやすい症状を簡単に整理します。どんな変化が起こりうるかを知っておけば、いつもと違うと感じたときに早めに相談できます。

胸の苦しさを訴える男性

末期の肺がんで多く見られるのは、呼吸に関わる症状と、全身のだるさや体重の減少です。長引く咳や痰、血痰に加え、がんが気管支をふさいだり胸水が肺を圧迫したりすると、息苦しさや息切れが強くなります。胸膜や肋骨に広がると、胸や背中の痛みが出ることもあります。

全身では、強い倦怠感や食欲不振、体重の減少がよく見られます。筋肉や脂肪が落ちて体力が低下していく状態は「悪液質」と呼ばれます。声のかすれや、肝臓への転移による腹水が現れることもあります。新しい症状や悪化に気づいたら、いつから続いているかを記録して受診時に伝えましょう。

体のつらさに加え、不安や気分の落ち込み、不眠もよく見られます。息苦しさが不安を強め、不安がさらに息苦しさを感じやすくする悪循環が起こりやすいのも、肺がんの特徴です。

病状が進むと、体の変化や薬の影響で一時的に意識が混乱する「せん妄」が生じることもあります。心のつらさも治療やケアの対象です。眠れない・食べられないといった変化も含めて、一人で抱え込まずに医療チームへ伝えてください。

病状がさらに進むと、眠っている時間が長くなり、呼びかけへの反応がゆっくりになっていきます。食事や水分も少しずつとれなくなりますが、体が自然に必要量を減らしている状態のため、無理に食べさせる必要はありません。

呼吸の間隔が不規則になったり、のどの奥で「ゴロゴロ」と音がしたりすることもありますが、ご本人が苦しさを感じているとは限らないとされています。手足が冷たくなる、尿の量が減るといった変化も含め、現れ方には個人差があるため、気になることは看護師に確かめてください。

【そばにいるご家族ができること】

  • いつもどおり声をかける
    耳は最後まで聞こえているといわれます。反応が少なくても、話しかけてあげてください。
  • 口の中を湿らせる
    水を含ませたガーゼや保湿剤で唇や口の中を潤すと、乾きによる不快感を和らげられます。
  • 変化を感じたら医療者に連絡する
    連絡の目安や連絡先を、事前に確認しておくと慌てずに済みます。

5.末期肺がん患者の生活

治療と並行して、毎日の暮らしをどう整えるかも大切なテーマです。少しの工夫で、体の負担はかなり変わります。

医療と介護

末期の肺がんでは、息切れや体力の低下で、これまで当たり前にできていた動作が負担になりがちです。暮らし方を少し変えるだけで、楽に過ごせる時間を増やせます。

【息苦しさを抱えながら暮らしやすくする工夫】

  • 上半身を起こした姿勢で休む
    ベッドの背を上げたり、クッションを抱えて前かがみになったりすると呼吸が楽になります。
  • ひとつの動作を小分けにする
    入浴や着替えは途中で座る時間をつくると、息が上がりにくくなります。
  • 顔にそっと風を当てる
    うちわや扇風機の風を顔に当てると、息苦しさが軽く感じられることがあります。
  • 少ない量を回数多く食べる
    一度にたくさん食べると胸やおなかが張りやすいため、食べやすいものを少しずつとりましょう。

息苦しさが強い場合は、自宅で酸素を使える在宅酸素療法という方法もあります。また、喫煙を続けていると咳や痰が増えやすいため、禁煙についても主治医に相談してみてください。

ご家族にできるのは、何でも代わりにやってあげることだけではありません。ご本人の希望を知り、医療者との橋渡しをすることも大きな役割です。

診察に同席して説明を一緒に聞くことに加え、痛みの時間帯や食事の量などの記録も、薬を調整する際の貴重な情報になります。

また、「どこで、どのように過ごしたいか」を元気なうちから話し合っておくことも大切です。もしものときに望む医療やケアを、ご本人・ご家族・医療者で共有しておく取り組みは「人生会議」とも呼ばれます。

支える側も心と体に負担を抱えやすいものです。ご家族自身が休む時間をつくり、周りの手を借りることも、長く寄り添うために欠かせません。

6.患者さんとご家族を支える仕組み

末期の肺がんと向き合ううえで、頼れる人や場所は思っている以上にたくさんあります。どこに何を相談できるかを知っておくと、いざというときに迷わず動けます。

医療ソーシャルワーカーと患者

末期の肺がんのケアは、医師だけでなく、看護師や薬剤師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなど多くのスタッフがチームで支えています。困りごとに応じて、それぞれの専門家に相談できます。

【 つらさを医療チームにうまく伝えるコツ】

  • 一番困っていることから話す
    診察の時間は限られるため、最優先の悩みを最初に伝えると対応が早まります。
  • 「いつ・どんなときに」を添える
    夜になると咳が強い、歩くと息切れするなど、場面を具体的に伝えましょう。
  • 薬の効き具合を報告する
    痛み止めがどのくらいの時間効いているかがわかると、量や種類の見直しに役立ちます。

医師に言いにくいことは、看護師から伝えてもらう方法もあります。

病院の外にも、患者さんやご家族が利用できる相談窓口や支援グループがあります。治療のことから暮らしのことまで、幅広い悩みを受け止めてもらえます。

【気軽に頼れる相談先】

  • がん相談支援センターに問い合わせる
    がん診療の拠点となる病院に置かれ、通院先に関係なく無料で相談できます。
  • 医療ソーシャルワーカーに相談する
    療養の場所選びや退院後の準備など、生活面の相談に乗ってもらえます。
  • 患者会や患者サロンに参加する
    同じ病気と向き合う人の体験談から、医療者とは違う視点のヒントが得られます。

相談先を一つ決めておくと、困ったときに慌てずに済みます。

緩和ケアは、体の状態やご本人の希望に合わせて、さまざまな場所で受けられます。途中で場所を変えることもできます。

通院中なら緩和ケア外来で、入院中なら一般病棟の緩和ケアチームが主治医と連携してサポートしてくれます。

終末期を穏やかに過ごすことを中心にしたいときは、緩和ケア病棟(ホスピス)という選択もあります。ここではがんを治す治療は行わず、つらさを和らげるケアに専念します。

住み慣れた自宅を希望する場合は、訪問診療や訪問看護による在宅での緩和ケアが受けられます。夜間や休日の連絡体制も含め、早めに医療ソーシャルワーカーと準備を進めておきましょう。

7.まとめ

「末期」という言葉を聞いた日から、目の前が暗くなるような思いで過ごしてきた方もいらっしゃると思います。それでもここまで読んでくださったのは、これからの過ごし方を真剣に考えていらっしゃるからではないでしょうか。

この記事で解説してきたように、肺がんの治療はこの十数年で大きく進み、末期と言われたあとも、薬でがんを抑えながら自分らしい毎日を続けている方がいます。息苦しさや痛みにも和らげる方法があり、つらさを我慢し続ける必要はありません。生存率の数字は過去の多くの方の平均であって、あなたのこれからを決めるものではないのです。

どうか、ひとりで背負い込まないでください。主治医や看護師、がん相談支援センター、そしてご家族。あなたの不安や迷いを受け止めてくれる人は、すぐそばにいます。

どこで、誰と、どのように過ごしたいか。その答えは、今日すぐに出なくてもかまいません。気になったことを一つ、次の診察で聞いてみる。大切な人に、今の気持ちを少しだけ話してみる。その小さな一歩が、明日への希望につながっていくはずです。

快適医療ネットワーク理事長

監修 
医学博士 上羽 毅

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広い知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。