• 2024.07.16 2026.09.16
  • 肺がん

小細胞肺がんとは?症状・治療の流れと生存率のポイント

「肺がん」という診断を受けられた方の中でも、「小細胞肺がん」というタイプだと聞くと、聞き慣れない言葉に戸惑いを覚える方も少なくないと思います。

小細胞肺がんは、進行が速いがんと言われており、これからどんな治療が待っているのか、見通しが立たずに不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。一方、進行が速いと言われる小細胞肺がんですが、比較的抗がん剤や放射線治療の効果が現れやすいという性質を持ち合わせているのが特徴です。治療の組み合わせ方に関する知見も、年々積み重ねられてきました。

そこでこの記事では、小細胞肺がんの基本的な特徴から非小細胞肺がんとの違い、症状や診断の流れを整理していきます。あわせて、限局型・進展型それぞれの治療アプローチと生存率に関わる要因についても、順を追ってご紹介します。

今抱えている不安を一つひとつ言葉にして、担当の医師と共有していくことが、これからの治療を前向きに進めていくための大切な一歩になります。

1.小細胞肺がんの基本情報

臓器の肺

小細胞肺がんは、肺がんの中でも増殖のスピードが速く、早い段階からリンパ節や他の臓器へ転移しやすいという特徴を持つタイプです。まずは、小細胞肺がんがどような性質を持つがんなのかを基本から押さえていきましょう。

肺がんは、がん細胞を顕微鏡で観察したときの見え方によって、いくつかの種類に分けられます。肺がん全体のうち小細胞肺がんが占める割合は、約1〜2割程度で、非小細胞肺がんほど多いタイプではありません。細胞が小さく密集して増える性質を持ち、短い期間で大きくなったり、離れた臓器へ広がったりすることが知られています。

また、タバコとの関連が強いリスク要因として知られている点も、小細胞肺がんの特徴のひとつです。喫煙の習慣がある方に多く発生する一方で、喫煙歴がない方に発症することもあります。発症の原因は一つに絞れるものではなく、遺伝的な要因や環境要因が複雑に関わっていると考えられています。

進行のスピードが速いという性質は、裏を返せば良い面もあります。抗がん剤を使用した薬物療法や放射線治療といった全身への働きかけが、効きやすいという側面です。がん細胞の増殖を抑制する効果が、比較的早く現れやすいのです。診断されたばかりの段階では不安が大きいかもしれません。ですが、小細胞肺がんには小細胞肺がんに合った治療の進め方があることを、まずは知っておいていただきたいと思います。

病気の性質を正しく理解しておくことは、この先の治療方針を担当医と一緒に考えていくうえで、大きな支えになってくれるはずです。日本国内でも、専門の学会を中心にこの病気についての研究が重ねられています。

肺がんの治療方針は、小細胞肺がんか非小細胞肺がんかによって大きく異なります。まずは両者がどのように区別されているのかを整理しておきましょう。

肺がんは大きく、小細胞肺がんと非小細胞肺がんの2種類に分類されます。非小細胞肺がんには、女性や非喫煙者にも多い腺がんや、喫煙との関連が強い扁平上皮がんなど複数の種類が含まれます。これらをあわせると、肺がん全体の多くを占めています。一方の小細胞肺がんは、細胞の増殖速度や広がり方の性質が非小細胞肺がんとは明確に異なるため、別のグループとして扱われています。

この分類の違いが重要なのは、治療方法の組み立て方がまったく異なってくるためです。非小細胞肺がんでは、病期に応じて手術(外科治療)や放射線治療、薬物療法を単独あるいは組み合わせて選択することが多くなります。これに対して小細胞肺がんでは、ごく早期の一部を除いて手術の対象となることが少なく、薬物療法を中心とした全身への治療が主軸になります。

どちらのタイプに分類されるかは、気管支鏡検査などで採取した組織を顕微鏡で調べる病理検査によって確定します。ほぼすべての施設で、この検査結果をもとに治療方針が決定されます。担当医から組織型についての説明を受けたときは、それが今後の治療方針にどうつながっていくのかを、ご家族とあわせて確認しておくと安心です。

小細胞肺がんは抗がん剤や放射線治療の効果が現れやすい一方で、治療後に再びがんが現れやすいという特徴もあります。組織型の違いを知っておくことで、これから受ける治療がどのような考え方に基づいているのか、納得しながら向き合えるようになります。

肺がんは本当に良くならないのか?
同じ肺がんと向き合い、乗り越えた方がいます。実際の記録をご覧ください。

胸水ありの肺がん末期の症例|余命2ヶ月から肺・リンパともに消失 進行の早い小細胞肺がんのステージⅣ、すべての腫瘍が完全消失。 左肺に10cmのがん、99%消失。画像でも確認できず。

2.小細胞肺がんの症状と診断

胸が苦しいと医師に訴える男性

小細胞肺がんの初期には、はっきりとした症状が現れにくいことも少なくありません。まずはどのような症状に注意しておきたいのか、押さえておきましょう。

肺がん全般に共通する症状として、以下のような咳や痰、血の混じった痰、胸の痛み、体を動かしたときの息切れや息苦しさなどが挙げられます。ただ、これらはいずれも肺炎や気管支炎など、ほかの呼吸器の病気でもよくみられる症状です。そのため、症状だけで小細胞肺がんと判断することは難しいといえます。

小細胞肺がんは進行のスピードが速いため、自覚症状が現れてから比較的短い期間で進行していることもあります。咳や痰といった呼吸器の症状だけでなく、体重の減少や食欲不振、原因のはっきりしないだるさといった全身症状が先に現れることもあります。原因のはっきりしない咳や痰が2週間以上続く場合や、血の混じった痰が出る場合は注意が必要です。原因不明の発熱が5日以上続く場合も含め、早めに医療機関を受診することが勧められています。

すでに転移が起きている場合には、頭痛やふらつき、骨の痛みなど、肺以外の症状から気づかれることもあります。これといった症状がないまま、健康診断や別の病気の検査で偶然発見されるケースも少なくありません。気になる症状が続くときは、そのままにせずに担当医へ相談してみてください。

症状の特徴を知っておくことは、体の変化に早く気づき、次の一歩を踏み出すための助けになります。

小細胞肺がんが疑われた場合、いくつかの検査を組み合わせて診断を確定していきます。主な検査の流れを、表にまとめてご紹介します。

検査名主な目的・内容
胸部X線検査肺に異常な影がないかを確認します
胸部CT検査病変の大きさや位置、リンパ節など周囲への広がりを確認します
気管支鏡検査細い内視鏡を使って組織を採取します(最も多く行われる方法)
他に、経皮的針生検・胸腔鏡検査が行われることもあります
造影CT検査・脳MRI検査・PET検査・骨シンチグラフィがんが他の臓器へ広がっていないかを確認します
腫瘍マーカー(ProGRPやNSEなど)診断の補助や治療効果の確認に役立てます

治療方針を決める際には、検査結果に加えて、日常生活の中でどの程度体を動かせるかという体力の面を確認したり、手術が選択肢になる場合には、あわせて肺の機能を調べる検査が行われることもあります。こうした体力や年齢、持病の有無といった情報とあわせて、無理のない治療を選ぶための判断材料としていきます。検査や治療について分からないことがあれば、担当医だけでなく、看護師などの医療スタッフに相談してみましょう。

検査の目的や流れを事前に知っておくと、当日の説明もより理解しやすくなり、心の準備もしやすくなります。

3.小細胞肺がんの治療法

治療法の絵とハート

小細胞肺がんの治療方針は、がんのステージ(病期)が片方の肺とその周辺にとどまっているかどうかによって大きく変わります。まずは限局型と呼ばれる段階の標準治療について見ていきましょう。

限局型とは、がんが片側の肺にとどまり、反対側の縦隔や鎖骨の上のリンパ節までの範囲に収まっている状態を指します。悪性の胸水や、心臓の周りに水がたまる所見がみられないことも条件のひとつです。ごく早期で手術の適応となり、がんを取りきれると判断された場合には、がんのある肺葉と周囲のリンパ節を切除する手術を行い、そのあとに、抗がん剤治療(薬物療法)を行うこともあります。

手術の対象とならない限局型の多くでは、抗がん剤治療(化学療法)と放射線治療を同時に行う化学放射線療法が中心となります。通常分割照射法という1日1回照射する方法のほか、1日2回に分けて照射することでより高い効果を狙う方法が選ばれることもあります。放射線治療と薬物療法を組み合わせることで、単独で行うよりも高い効果が期待できるとされています。その分、治療期間中に副作用が起こりやすくなる面もあります。体力の低下がみられる場合には、薬物療法を先に行い、そのあとに放射線治療を行う方法がとられることもあります。

治療によってがんが画像検査で見えなくなった場合には、脳全体に放射線を照射する予防的全脳照射が検討されることもあります。これは、脳への再発を防ぐことを目的とした治療です。小細胞肺がんは脳へ転移して再発することがあるため、こうした先を見据えた治療が組み込まれています。

限局型と分かった場合でも、体の状態や治療への向き合い方によって選べる方法は一つではありません。外来通院で治療を続けられるケースもあります。担当医やご家族とよく話し合いながら、自分に合った進め方を見つけていきましょう。

がんが限局型の範囲を超えて、遠隔の臓器にまで広がっている状態は進展型と呼ばれ、治療の中心となる考え方も変わってきます。原発巣(がんが最初にできた場所)以外にも広がりがみられるため、局所への治療よりも全身療法が優先されます。ここではその治療戦略を整理します。

進展型では、がんがすでに全身に広がっている可能性を踏まえ、以下のように抗がん剤による薬物療法(化学療法)が治療の中心となり、局所への放射線治療よりも、体全体に働きかける全身療法が優先される点が、限局型との大きな違いです。

体の状態が比較的よい場合には、プラチナ製剤などの抗がん剤に、免疫チェックポイント阻害薬という薬を併用する免疫療法を組み合わせることもあります。免疫チェックポイント阻害薬は、分子標的薬の一種で、がん細胞が免疫の働きにブレーキをかけるのを防ぎ、体が本来持っている免疫の力を引き出す薬です。初回の治療でこの組み合わせを用いることで、抗がん剤だけの治療よりも長く効果を保てる場合があることが分かってきています。一方で、疲れやすさや発熱、皮膚のかゆみといった、抗がん剤とは異なる副作用が現れることもあり、体調の変化に気づいたら、早めに医療者へ伝えることが大切です。

一度治療の効果が現れたあとに、がんが再び進行してしまうこともあります。その場合は、別の種類の抗がん剤や、二重特異性T細胞誘導抗体と呼ばれる新たな薬が検討されます。また、骨や脳など特定の臓器に転移して痛みなどの症状が出ている場合は、その部位に直接、放射線治療を行ったり、痛み止めを使うなど、症状への対応方法はさまざまです。

進展型と診断されても、治療を続けながら自分らしい生活を維持している方は少なくありません。今できる治療の選択肢を、担当医とよく考えながら、ときにはセカンドオピニオンとして他の医師の意見も聞きつつ整理していきましょう。

4.小細胞肺がんの予後と生存率

クローバーと空

生存率という言葉を聞くと、不安な気持ちが先に立つかもしれません。ですが、生存率は病期や体の状態によって大きく異なる、あくまで一つの目安として理解しておくことが大切です。

小細胞肺がんは、症状がはっきりしないまま進行してから見つかることが多いがんです。国内の医療機関のデータでも、Ⅲ期・Ⅳ期まで進行した状態で診断される方が多くを占めています。そのため、病期ごとの生存率をまとめた全体の5年生存率は、およそ1割程度にとどまります。ただし、病期別にみると、その数字には大きな幅があります。Ⅰ期で診断された場合は40%台、Ⅱ期では30%近く、Ⅲ期では20%弱、Ⅳ期まで進行した状態では2%程度と、病期によって大きな差があります。この差は、がんが片方の肺にとどまっているか、全身に広がっているかという違いを色濃く反映したものです。

年齢や体力、全身状態も生存率に関わる要因のひとつです。体力が保たれ、日常生活を大きな制限なく送れている方ほど、より積極的な治療を受けられる可能性が高く、治療の効果も引き出しやすくなる傾向があります。同じ病期であっても、体の状態の評価によって選べる治療の幅は変わってきます。

また、治療の効果を引き出すには、決められた治療をできるだけ継続できるかどうかも関わってきます。副作用が強く出た場合でも、早めに担当医へ伝えて適切に対処することで、症状の改善につながり、治療を続けやすくなる場合があります。たとえば吐き気や嘔吐、体への負担が大きいと感じたときは、我慢せずに相談することが大切です。

これらの数字は、あくまで過去に治療を受けた方々のデータをもとにした統計であり、治療法の進歩とともに状況は変わっていきます。目の前の数字にとらわれすぎず、ご自身の状態について担当医から具体的な説明を受けることが、何よりも大切です。

生存率という数字の背景にある意味を理解しておくことで、これからの治療に向き合う気持ちも少し整理しやすくなるでしょう。

小細胞肺がんの治療は、この数年でも新しい薬や治療の組み合わせについての研究が非常に活発に進められている分野です。ここでは、治療の広がりについて触れておきます。

かつて小細胞肺がんの薬物療法は、抗がん剤による治療が中心でした。近年は、抗がん剤に免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせる治療を進展型で行っている医療機関が増え、治療の選択肢が広がってきています。免疫の力を利用した治療は、体がもともと備えている防御の仕組みを引き出すという点で、これまでの抗がん剤とは異なるアプローチです。

また、抗がん剤を含む治療のあとにがんが悪化した場合の選択肢も広がっています。がん細胞と免疫細胞を近づける働きを持つ、二重特異性T細胞誘導抗体という新しいタイプの薬も使われるようになってきました。こうした薬の開発は、治療の選択肢が限られていた小細胞肺がんの領域における前進といえます。

薬そのものの進歩だけでなく、吐き気や食欲不振といった副作用を和らげる支持療法も、以前と比べて充実してきています。副作用と上手に付き合いながら治療を続けやすくなってきていることも、知っておいていただきたい変化のひとつです。治療にかかる時間や通院の頻度、健康保険の範囲などについて分からないことがあれば、診療の中で遠慮せず質問してみてください。正しい知識を持つことが、治療への納得感につながります。

研究段階にある治療法や新しい薬については、臨床試験という形で試みられていることもあります。例えば、通っている病院で臨床試験が行われているかどうかも、確認できる情報のひとつです。ご自身が対象になるかどうかは、担当医やがん相談支援センターに相談してみるとよいでしょう。

治療の進歩は少しずつではありますが、確実に積み重ねられています。今後の治療の広がりにも、目を向けていただければと思います。

5.まとめ

ここまで、小細胞肺がんの特徴や非小細胞肺がんとの違い、症状と診断の流れを整理してきました。あわせて、限局型・進展型それぞれの治療の考え方と、生存率に関わる要因についてもご紹介しました。増殖の速さという小細胞肺がんならではの性質は、裏を返せば薬物療法や放射線治療が効きやすいという側面でもあります。

病期によって治療の進め方も、見えてくる見通しも異なりますが、どのような状態であっても、担当医と一緒に考えていける選択肢は必ずあります。今日知った情報を心の片隅に置きながら、ご自身のペースで、これからの一歩を踏み出していってください。

快適医療ネットワーク理事長

監修 
医学博士 上羽 毅

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。