• 2025.10.06 2026.09.16
  • 大腸がん

大腸がんが再発したときの抗がん剤治療。選択肢と副作用との付き合い方

「再発」という言葉を医師から告げられた瞬間、頭が真っ白になるほどの衝撃を受ける方は少なくありません。再発時には抗がん剤治療が治療の中心になることも多く、これから始まる治療への不安で胸がいっぱいになることもあります。だからこそ、薬の種類や副作用について、具体的に知りたいと感じる方も多いのではないでしょうか。

近年は化学療法や分子標的薬、免疫療法など、治療の選択肢が広がってきました。患者様お一人おひとりの状態に合わせた組み合わせも検討できるようになっています。

この記事では、大腸がんが再発した際に、どのような目的で抗がん剤治療が行われるのか、薬の種類や副作用への対策とあわせて解説していきます。また、医療チームとの付き合い方についてもお伝えします。今の不安を少しずつ整理しながら、これからの治療に向き合うための材料にしていただければ幸いです。

1.大腸がんの再発と抗がん剤治療の基本

説明する医師

結論から言うと、大腸がんの再発とは、手術で取り除いたはずのがんが、体のどこかで再び見つかる状態のことです。これは、画像検査では確認できないほど小さながん細胞が、目に見えない形で体に残っていることがあるためです。そのがん細胞が血液やリンパの流れに乗って別の部位へ移動することがあり、時間が経って成長すると、再発として見つかります。

特に再発のリスクが高いとされる部位として、肝臓や肺への転移が知られています。肝臓や肺にできた転移巣に対しては、切除が検討されることもあります。そのほか、腹膜や、手術でつないだ腸の周辺、リンパ節などにも再発が起こりやすいとされています。直腸がんの場合は、肛門に近い部分での局所再発も念頭に置く必要があります。

なお、手術後には再発を防ぐ目的で「術後補助化学療法」を受けていた方も少なくありません。それでも再発してしまった場合は、あらためて薬の組み合わせを検討し直すことになります。

再発と聞くと、「治療が振り出しに戻ってしまうのでは」と感じるかもしれません。ですが、再発の部位や広がり方によって、切除が可能なケースもあります。一方で、切除が難しい、いわゆる切除不能の状態と判断され、抗がん剤治療を中心に進めるケースもあります。まずは検査で現在の状態を正確に把握することが、今後の治療方針を考えるうえでの土台になります。

再発時に行われる抗がん剤治療には、大きく分けて三つの目的があります。

① がんを小さくして手術で切除できる状態を目指すこと

② 切除が難しい場合にがん細胞の増殖を抑え、進行をできるだけ遅らせること

③ 痛みなどの症状を和らげ、生活の質を保つこと

抗がん剤治療の目的は、がんを治すことだけとは限りません。がんとうまく付き合いながら、生存期間の延長を目指す場合も多くあります。抗がん剤治療は、薬物療法のひとつに位置づけられ、がん細胞の増殖の仕組みに働きかける薬で、種類によって効き方が異なります。

近年は、がん細胞だけを狙い撃ちする分子標的薬や、免疫の力を利用してがん細胞を攻撃する薬剤も登場しています。こうした薬剤との組み合わせも進み、治療効果を高める工夫が重ねられています。

どの目的を優先するかは、再発の場所や広がり、患者様の体力や希望によって医師と相談しながら、どのように治療を行うかを決めていくことになります。効果を実感できるまでには一定の期間がかかるため、定期的な検査で経過を確認しながら、今後の治療方針を図っていくことになります。

大腸がんは本当に良くならないのか?
同じ大腸がんと向き合い、乗り越えた方がいます。実際の記録をご覧ください。

腫瘍マーカーが高値の大腸がん症例|肺は縮小し、肝転移は完全消失 大腸がん末期で腸閉塞を併発した症例|余命を超え、転移がすべて消失 ステージⅣの大腸癌、肝転移は大幅に縮小し、点在していた小さい腫瘍は消失。

2.大腸がん再発時の抗がん剤治療の選択肢

ここからは、実際にどのような薬が使われているのか、少し具体的に見ていきましょう。薬の名前や仕組みを知っておくと、医師からの説明も理解しやすくなり、治療への不安が整理されていきます。

積み木に描かれた医療の絵

大腸がんの化学療法では、フルオロウラシル(5-FU)やカペシタビンといった薬を土台にします。カペシタビンは内服薬として使われることが多く、通院しながら治療を続けやすいという特徴があります。そこにオキサリプラチンなどを組み合わせる治療法が、国内の大腸癌治療ガイドラインでも広く推奨されています。

これらの薬剤は、がん細胞が分裂・増殖する仕組みに働きかけ、がんの進行を抑える効果が期待できます。さらに近年は、がん細胞の遺伝子診断の結果によって、効果が期待できる分子標的薬も使われています。免疫の働きを妨げる仕組みを阻害し、免疫細胞ががんを攻撃しやすくする免疫チェックポイント阻害薬も登場しました。これらは、患者様の状態に応じて併用されるようになっています。

どの薬剤を組み合わせるかは、がんの遺伝子分類や再発した部位、これまでの治療歴、そして患者様の体力などを総合的に見て判断されます。

実際の治療では、点滴による投与を約2〜3週間に一度のペースで繰り返し、数か月単位の期間をかけて効果を確認していきます。薬の組み合わせは一種類に固定されるわけではなく、体調や副作用の出方を見ながら変更されることも珍しくありません。

標準治療として確立された組み合わせが複数あることは、患者様にとって選択肢の幅が広がっているとも言えるでしょう。ガイドラインは定期的に改訂されており、最新版の内容を医師に確認することも大切です。

標準的な治療を一通り行っても、効果が不十分な場合や体力的に通常の量が難しい場合があります。そうした場合には、新しく開発された薬剤や、臨床試験として行われている治療が選択肢に挙がることがあります。

臨床試験とは、まだ広く承認される前の新しい薬や治療法の効果・安全性を確認するための研究です。一定の基準を満たし、対象となる患者様に協力していただきながら進められます。日本国内外の大学病院やがん研究会などを中心に、新しい分子標的薬や免疫療法の組み合わせについて、日々の診療や研究が積み重ねられています。

ただし、臨床試験を実施している施設は限られており、参加できる患者様の数も多くはありません。それでも、標準治療の枠を超えた選択肢として検討する価値はあります。参加には条件があり、必ずしも希望すればすぐに受けられるわけではありません。

担当の医師やがん相談支援センターを紹介してもらい、現在受けられる臨床試験がないか一度確認してみるのもひとつの方法です。新しい治療法についての情報は日々更新されているため、気になる場合は主治医に率直に相談してみてください。

抗がん剤治療の内容には、さまざまな要因が関わってきます。患者様お一人おひとりの状況によって、選ばれる組み合わせは大きく異なります。

まず考慮されるのが、再発したがんの進行度(ステージ)や広がり方、そして外科的な切除が可能かどうかです。次に重要になるのが、がん細胞に見られる遺伝子の特徴や薬剤の適応で、これによって効果が期待できる分子標的薬の種類が変わってきます。

年齢や体力、腎臓や肝臓に障害がないかといった全身の状態も、使用できる薬の量や組み合わせを判断するうえで欠かせない情報です。さらに、これまでにどのような治療を受けてきたか、副作用への耐性や過去の治療への反応がどうだったかも参考にされます。

そして忘れてはならないのが、患者様自身が治療にどこまで積極的に臨みたいか、生活の質をどの程度優先したいかという希望です。医師はこれらの要因を総合的に見ながら、患者様と話し合って治療方針の決定を進めていきます。

3.抗がん剤治療の副作用とその管理

抗がん剤治療と聞くと、副作用のつらさを心配される方も少なくありません。ここでは、代表的な副作用とその対策、そして日常生活を少しでも快適に過ごすための工夫についてお伝えします。

吐き気がある女性

抗がん剤治療でよく見られる副作用には、吐き気や嘔吐、食欲不振、下痢、手足のしびれ、口内炎、白血球の減少などがあります。薬剤ごとに現れやすい症状は異なりますが、あらかじめ対策を知っておくことで、症状が出たときにも落ち着いて対応しやすくなります。

また、感染症のリスクが高くなる時期もあります。そのため、体調の変化には普段以上に注意を向けておくと安心です。副作用の早期発見のためにも、体調の変化に気づいたら我慢せず伝えることが大切です。

【副作用への向き合い方】

  • 吐き気・食欲不振には食事の工夫を 
    消化の良いものを少量ずつ、においの強い食事を避けるなど、体調に合わせて食べ方を調整しましょう。吐き気止めの薬を併用することもあります。
  • 手足のしびれや皮膚の変化には冷えの予防を 
    オキサリプラチンなどで起こりやすいしびれは、冷たい飲み物や冷気を避けることで軽くなる場合があります。皮膚の乾燥が気になるときは保湿を心がけましょう。
  • 口内炎には口腔ケアを徹底する 
    うがいや保湿を習慣にし、刺激の強い食べ物を控えることで、症状の悪化を防ぎやすくなります。
  • 白血球の減少には感染対策を 
    治療期間中は手洗い・うがいを徹底し、体調に異変を感じたらすぐに医療機関へ連絡しましょう。

副作用は薬の効果と表裏一体の面もあります。ですが、症状をコントロールしながら治療を続けるための工夫はいくつもあります。

ただし、症状の程度には個人差があり、一部の患者様には強く出ることもあります。強い副作用が発生した場合は、我慢せずに担当の医師や看護師に伝えることが大切です。

抗がん剤治療を続けながら生活の質を保つには、体力の維持と心のケアの両方が欠かせません。日常生活のなかで少し意識を変えるだけでも、体調の波と付き合いやすくなります。

【治療中の生活を整えるヒント】

  • 軽い運動で体力を保つ 
    散歩やストレッチなど、無理のない範囲の運動を続けることで、だるさの軽減につながることがあります。
  • 栄養バランスを意識した食事 
    消化に負担をかけにくい食品を選びながら、たんぱく質やエネルギーを確保することを心がけましょう。
  • 一人で抱え込まない環境づくり 
    運動や食事以外にも、家族や友人との会話、必要に応じて専門家によるカウンセリングを取り入れることが、気持ちを整理する助けになります。

こうした小さな工夫の積み重ねが、体調の改善や治療を長く続けていくための土台になります。体力や気分の波に合わせて、できる範囲から少しずつ取り入れていくのが良いです。

4.再発後の治療計画と患者の役割

治療方針や副作用への対策と同じくらい大切なのが、医療チームとの関わり方や、患者様ご自身にできる備えです。

笑顔で患者と話す医師

治療方針を理解し、自分の状態を医療チームと共有しておくことは、納得のいく治療を続けるための土台になります。分からないことをそのままにせず、その都度確認する姿勢が大切です。

【 医療チームとの関わり方のコツ】

  • 治療方針の理由を確認する 
    なぜその薬を選ぶのか、目的や見込まれる効果を聞いておくと、治療への納得感が高まります。効果が認められた場合の見通しも聞いておくと安心です。
  • 疑問や不安はメモして伝える 
    診察の場では緊張して聞き忘れることもあるため、事前に質問を書き出しておくと安心です。
  • 定期的なフォローアップを大切にする 
    検査結果や体調の変化があった際にはこまめに共有することで、治療方針の見直しにも早く対応できます。

医療チームとの信頼関係を少しずつ築いていくことが、長期にわたる治療を支える力になります。担当医だけでなく、看護師や薬剤師など、それぞれの専門家に相談できることも心強い支えです。

治療は医療チームに任せきりにするものではなく、患者様ご自身が主体的に関わることで、より良い結果につながりやすくなります。

とはいえ、体力的・精神的に判断が困難な場合は、無理をせず家族や医療チームと相談しながら決めていきましょう。

【治療と向き合ううえでできること】

  • 生活習慣を見直す 
    十分な睡眠とバランスの良い食事を意識し、体力を維持することが治療を続ける土台になります。
  • 同じ経験をした人とつながる 
    患者会やサポートグループに参加することで、情報交換や気持ちの共有ができ、心の支えになります。
  • 信頼できる情報源から学ぶ 
    国内の学会やがん相談支援センター、信頼できる書籍など、根拠のある情報に触れることで、治療への理解が深まります。

小さな行動の積み重ねが、これからの治療を前向きに歩んでいく力になります。焦らず、ご自身のペースで取り組んでいくことが何より大切です。

5.まとめ

ここまで、大腸がんが再発した際に検討される抗がん剤治療の目的や薬の種類、気になる副作用への対策について見てきました。あわせて、医療チームとの関わり方にも触れました。

再発という言葉には大きな不安が伴いますが、治療の選択肢は一つではなく、患者様の状態や希望に合わせて組み立てていけるものです。分からないことは遠慮せず医療チームに尋ねながら、ご自身のペースで一歩ずつ治療と向き合っていっていただければと思います。

快適医療ネットワーク理事長

監修 
医学博士 上羽 毅

金沢医科大学卒業後、京都府立医科大学で研究医として中枢神経薬理学と消化器内科学を研究。特に消化器内科学では消化器系癌の早期発見に最も重要な内視鏡を用いた研究(臨床)を専攻。その後、済生会京都府病院の内科医長を経て、1995年に医院を開業。
統合医療に関する幅広し知識と経験を活かして、がんと闘う皆様のお手伝いが出来ればと、当法人で「がん患者様の電話相談」を行っております。